浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

レオ・ナーデルマン ロールピアノの如き不思議なタッチ

2006年08月31日 | 洋琴弾き
レオ・ナーデルマンは、1940年の第2回ジュネーブ国際音楽コンクール・ピアノ部門で第2位となったスイスのピアノ弾きである。しかし、このコンクールの入賞者には、あまり有名な人は居ない。

この時代は、飛行機、ラヂヲ放送、レコヲド録音など、こと音楽の世界に大きく影響を及ぼす技術革新が一気に花開いた時期である。コンクール全盛時代の幕開けである。やがて、コンクールは政治的に利用されるやうにもなる。チャイコフスキーコンクールでの緊張緩和のカンフル剤として利用された「ぼんくらイバーン」の話は有名である。

レオ・ナーデルマンはそういったコンクール全盛時代に突入しようとする時代に活動を開始している。コンクールを登竜門とせずに、ステージに立つことは現在では考えられないが、昔は違った。この違いは演奏者や聴衆の音楽に対する姿勢まで変えてしまったのではないか。ナーデルマンのショパンは、そんなことを感じさせる演奏である。

僕が最も好きなマズルカの13番を弾いている。とてもいい演奏だと思って聴いていたが、中間部ではロールピアノのやうなタッチが飛び出して幻滅してしまう。この傾向が、最も顕著に現れているのがポロネーズ第4番だ。

完璧な技術や均一なタッチなど、メカニックな領域への関心が高まれば高まるほど音楽としての意味を失っていく。ヴィルトゥオーゾの時代の技術は、あくまでもお客を興奮させ喜ばすためのものであって、点数を稼ぐためのものではない(と、僕は錯覚している)。

新時代のピアノ弾き、異端児ナーデルマンの1956年の演奏である。

盤は、英國Appian P&R社のCD APR7025。



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