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雑感録

福岡なるほどフシギ発見~おまけ8~弘法大使最初のお寺は仏のワンダーランド

 
東長寺
806年(平安時代)

今日28日は東長寺の不動護摩供の日(何をする日なのかは知らん)で六角堂(後述)が開帳されるので行ったみようと思っていたのだが、朝から大津波警報のニュース。
ひょっとしたらお寺では津波退散の加持祈祷でもやってるんじゃないかと思ったが、そんな気配もなかったので、私が個人で大仏さま(後述)に祈願してまいりました(おかげで大した被害もなかったようで)。

鴻臚館から旅立った遣唐使の中には弘法大師(こうぼうだいし)こと空海もいた。
空海は留学期間20年の予定で804年に第16次遣唐使の一員として出発。
唐で仏教の勉強をするが、なにせ偉人なので20年分の勉強をあっと間に修めてしまったのか、それともホームシックにでもかかって途中で投げ出しちゃったのか、わずか2年で帰国。
そのとき博多で船宿を一軒買い取って、唐から持って帰った仏像を並べたりしたのが空海が初めて建てた寺、東長寺の起源ということらしい。

古門戸(こもんど)町の昭和通り沿いの交差点にある、このあたりの旧町名「行町(ぎょうのちょう)」の石碑。空海が最初に東長寺を開いた場所で、ここで勤行したことから、その名がつけられたのだとか。

フライングして帰ってきたペナルティなのかどうなのかは知らないが、空海はすぐには都に戻れず、東長寺で真言密教の教えを伝え、しばらく大宰府の観世音寺に滞在してから都に戻り、後に高野山に金剛峰寺を開いたのは教科書に書いてあった通り。
また、弘法大師にまつわる伝説は全国各地にあり、熊本の杖立温泉や佐賀の熊の川温泉など弘法大師が開いたとされる温泉も数多いが、どこまで本当なのかは神の味噌汁、もとい、仏のみぞ知るというところか。

ところで東長寺。
その後何度か移転し、戦国時代の相次ぐ戦火で荒廃、糸島の方に疎開していたのを、福岡藩二代藩主・黒田忠之によって、現在の場所で再興されたのだとか。
そういう訳で、初期のもので残っているのは重文の千手観音像、空海自身の作といわれる弘法大師像、不動明王像、あとは空海の真筆とされている「東長密寺」の寺号額(宝物庫に収蔵されていて非公開)ぐらいだろうか。
宝物庫には織田信長が本能寺の居間に飾っていた「弘法大師筆千宇文」なんてのもあるらしい(本能寺の変の際、博多の豪商・島井宗室が入手、寄贈したそうな)。

ビルに囲まれた東長寺。左が本堂。右手が六角堂。奥が大仏殿。

本堂に祀られている本尊の不動明王像、千手観音像、弘法大師像。千手観音像と弘法大師像は普段は厨子(仏像などを収めているケース)の扉が閉じられていて、3月21日の正御影供(何をする日なのかは知らん)のときにご開帳となるらしい。


毎月28日に開帳される六角堂。1842年(江戸時代後期)に造られたもので、もともと櫛田神社隣の神護寺(櫛田神社を管理するための東長寺の出張所?)に建てられたものが明治期に移されたのだとか。扉は開いているが、内部に入れないようポールが渡してある。ここには何度か来たが、今までこんなのしてあったっけ? 右は内部の回転式厨子のうち正面側にある弘法大師像。

御堂には巨大な数珠(?)が滑車で吊るされていて、ガラガラと回すことが出来る。

ぜひお参りしておきたいのが、“木造坐像(座ったポーズ)としては”の前置き付きで日本一とされる福岡大仏
1988年から4年かけて造られた、高さ10.8m(煩悩の数に因んだ数字らしいけど、メートル法だよ)、重さ30tの檜造の釈迦如来だ。
さらに、大仏さんのお尻の下には「地獄極楽巡り」というアトラクション(?)があり、その名の通り、地獄と極楽を(仏さまには失礼ながら)お化け屋敷感覚で体感できるので、ぜひお試しを。
これらは現在の住職が、博多駅前のオフィス街にあるこの寺を都会に暮らす人の癒しの場に、との考えで設けたものだとか。
また、現在、2011年春公開の予定で木造の五重塔を建設中。
別に古いものだけが有り難い訳ではないので、時代が変わっても宗教が庶民の生活に結びつくべきものなら、お寺が新しいものに取り組むのも全然アリなんではなかろうか。
これまた1000年も建てば、歴史的建造物として史跡にでも指定されているかもしれないのだし。

これが福岡大仏。奈良や鎌倉の大仏は見たことないが、これはこれでなかなかの迫力だ。
※館内撮影不可のためこの写真のみ提供:福岡市(フォトギャラリー「まるごと福岡・博多」より)

“純木造としては”の前置き付きで県内初となる予定の五重塔。2011年春に完成しました!


東長寺のもうひとつのシンボルとも言える桜の古木。枝が張りすぎて支えが必要なほど。('10年3月27日撮影


見どころが多いのに特に拝観料もとっていないのだが、パンフレットで10円徴収というのはちょっと笑える。


東長寺は神仏習合時代に櫛田神社を管理していたこともあって、博多祇園山笠の際には清道が設けられるのは、博多っ子ならご存知の通り。
また、秋には「博多情緒めぐり」や「灯明ウォッチング」「御供所ライトアップウォーク」「ビバ!はかた」など地域イベントの会場の一つとなるので、そういった機会にでも訪ねてみては如何?

追記
今年度の「博多っ子講座」で住職の話を聞く機会があった。
このご住職、とても面白い方で、たぶん講演もたびたびやられてるのだろう、話もうまいし掴みも十分。
そのご住職によると、空海は讃岐の豪族の子で、小さい頃から英才教育を受けた秀才。
18歳で「大学寮」という官吏養成学校(「寮」といってもそういう名前の学校で、今で言う寮とは違うらしい)に入りますが、そこは本来貴族向けの学校で、空海はモグリで入ったのではないかとのこと(笑)。
さらに、入ったはいいけど、そういう身分による差別社会に嫌気がさしたか何かで、中途退学してしまうのだとか。
そういう訳で、空海は日本におけるモグリ入学と大学中退の第1号なのだとか(笑)。

遣唐使でもまだ無名で私費留学だったにも関わらず4船立ての第1船に乗っていたそうで(同じ16回遣唐使ですでに地位を確立していた最澄ですら第4船だったらしい)、モグリ入学の件といい、この件といい、よほど強力なコネがあったのでしょうか。
空海がわずか2年で帰国した理由としては、
・唐で師事した高僧がちょうどその頃に亡くなり、遺言として「もうあんたに教えることはなんもなかけん、はよ日本に帰って苦しんでいる人を助けり」と言われた。
・私費留学で、資金が底をついた。
・ちょうど日本に帰る遣唐使船がいて、これに乗らないと次いつ帰れるか分からないと思った。
という説を挙げておられましたが、日本初の大学中退の件もありますし、意外と飽きっぽい性格だったのかもしれません。

福岡大仏を造った理由については、あるときタクシーに乗って「祇園の東長寺まで」と言ったところ、運転手は祇園までは来たけど東長寺が分からない。
ご住職が指示すると、「お客さん、ここやったら祇園のパチンコ屋の前て言うた方が運転手誰でも分かりますよ」。
「由緒ある寺なのにパチンコ屋ほども知られとらんのか~っっっ!」と、名物造りを思い立ったのだとか(笑)。
半分冗談だとは思いますが、意外と本気かもしれません。
福岡大仏ができた年は、それまで年間数千人レベルだった参拝者が一挙に25万人に。
今でも月平均1万2千人ぐらいが訪れているのだとか。

さらに五重塔建設については、あるとき電話でお寺への行き方を尋ねられて説明すると「ああ、もち吉の隣ですね」。
「由緒ある寺なのにせんべい屋より知られとらんのか~っっっっ! もち吉の隣やない。もち吉が東長寺の隣に出来たんじゃ~っっっっっ」とランドマークの建設を思い立ったのだとか(笑)。
ここに至ってはもうネタの域だとは思いますが、お寺の住職にしておくのは惜しい人材です(笑)。

この日は住職の計らいで、特別に建設中の五重塔の見学もさせてもらいました。
※あくまで“特別”で、通常、一般の見学はしてません(と強調しといてほしいと建設会社の人)。
この塔は高知や奈良産の檜の赤身だけを使った純木造建築で、高知の宮大工さんたちが造っているのだとか。
こういう未来永劫残していく建物は、だいたい80年くらいのサイクルで補修をして、3サイクル(200~300年)程度で大改修を行なうために、始めからばらすことを考えて造るのだとか。

周囲のビルの配置を考えた風の流れや地震の際の基礎部分の液化をシミュレーションするなど、伝統を踏まえつつ最新の技術を取り入れてるんですね。
いや~、すごいすごい。

この五重塔には仏像ではなく平山郁夫のお弟子さんか誰かの仏画を収めるそうですが、塔が完成してもそうそう頻繁に開帳されるものでもないので、完成前の来年1月28日~2月6日(だったと思う)、九州国立博物館の『東長寺展』(トピック展?)で一般公開されるそうです。
特別展で『ゴッホ展』を開催している時期なので、
「宣伝せんでもたくさん来てくれるはず」とご住職は高笑いされておりました(笑)。

※さらに追記
『東長寺展』行ってきました。
詳しくはこちら


東長寺
大きな地図で見る
福岡市博多区御供所町2-4
駐車場:参拝者用あり


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