いきけんこう!

生き健康、意気兼行、粋健康、意気軒昂
などを当て字にしたいボケ封じ観音様と
元気印シニアとの対話。

千葉市動物公園 その15:地下壕造りに練達したリス・プレーリードッグ

2009-04-08 08:26:34 | 散策
プレーリードッグは、捕食者達から種を守るために生活の場を地下に求め、今の生活スタイルを確立し生き抜いてきましたが、そこへ人間が入植してから害獣とされて駆除が始まりました。
プレーリードッグの立場で考えると、これは、人間こそ害獣になります。
しかし、彼らは一言も文句を言う訳でもなく、ひたすら耐え抜いて種族を守ってきましたし、これからも、彼らの生存と種族保存とを賭けた天敵との戦いが続けられるのです。

プレーリードッグが生活している北アメリカの草原に入植した酪農家は、牛の牧畜を始めます。
ところが、牧場となった草原の地下にはプレーリードッグ達が生活している巣部屋があり、それを繋ぐトンネルが網目のように張り巡らされたタウンがあり、牛がその上に乗ると巣穴に脚を突っ込み骨折します。ここから、酪農家は、彼らに戦端を開いたのです。

プレーリードッグは春に1回繁殖します。
酪農家は生まれた仔が大きくなる前、巣穴に大型のバキュームホースを突っ込んで吸引して駆除を行います。
巣穴にポンプで水を注入して巣ごと溺死させる駆除が行われていましたが、水攻めは残酷と言う理由で禁止され、近年は大型の吸引機によるバキューム方式で行われているようです。

無心に朝食を摂っているオグロ・プレーリードッグ(写真)には、愛嬌を感じます。
そこに目をつけた酪農家は、駆除した彼らの仔を商品とした商売に乗り出します。
平成12(2000)年頃は、アメリカから年間約5万頭のプレーリードッグが日本に輸入されており、彼らは、日本の動物商にとって重要な人気商材で、年商8千万円から1億円の動物商もいました。

ところが、日本にはプレーリードッグの検疫制度が無いのに、ペストや野兎病などの伝染病を媒介する恐れがあるとの理由で、平成15(2003)年、プレーリードッグの輸入は全面禁止になります(白輪剛史著:動物の値段)。

さて、プレーリードッグの仲間は5種います。
オグロ・プレーリードッグ、オジロ・プレーリードッグ、メキシコ・プレーリードッグ、ユタ・プレーリードッグ、ガニソン・プレーリードッグです。

千葉市動物公園で飼育されているのは、オス3、メス4の7頭、生息範囲が広く個体数が多いオグロ・プレーリードッグ。日本でプレーリードッグと呼ぶのは、このオグロ・プレーリードッグを指しています。

シマリスやエゾリスなどがリス科に属していることは、名前から直ぐリスと分かります。
ドッグは犬を意味していますから、プレーリードッグと聴くと犬の仲間を思い起こします。
ところが、外敵が近づいた時、仲間に知らせる彼等の「キャン、キャン」と言う警報が犬の鳴き声に似ているので「ドッグ」と名付けられ、プレーリー(草原)を生活基盤とするリスと合体させてプレーリードッグ、ニホンザルは日本に生息する猿と同じ伝で、単純明快な命名法です。
ともあれ、プレーリードッグは、捕食者から防衛する効果的な警戒システムを形成しており、互いに協力しての食物を探し、あるいは協同して抵抗するような行動で社会的な利益を得ています。

そんな彼らは、草原の地下に複雑な構造の巣穴を掘って、大きな集団で生活しています。
巣穴は直径10~15cm、深さ1~5m、長さ4~34mのトンネルと、隠れ場や寝室、育児、トイレなどに分かれている直径30~40cmの巣部屋からなっています。巣穴を洪水から守るために、噴火口形の盛り土にして巣穴を囲みます。土を高く盛り上げるのは、外敵を見張り易くするための知恵と工夫です。

プレーリードッグの大人が仔に接する態度は、オス、メス共に友好的で、よく面倒を見ます。
彼らは、さらに高度に組織化された社会を持っており、8頭前後の家族(コロニー)同士が集まったコテリーには、10~20頭前後の個体が群れを作って共同生活し、このコテリーがいくつか集まってタウンを形成します。
また、縄張りを持って互いに連絡しあうコロニーは、プレーリードッグに隠れ場と安心して子育ての出来る場を提供します。

かっては、最大65ha(1辺が100mの正方形の面積が1ha:ヘクタール)にも達するタウンが存在し、そこには4億の個体数を擁していたようです。
冒頭に書いたように、彼らの大規模タウンは、天敵による駆除などの影響で壊滅状態にあるようですし、4億の個体数を擁するようなタウンは存在しないようです。

ところで、プレーリードッグは、二種類のコテリーで共同生活をしています。
繁殖するコテリーには、大人のメス4頭につき1頭のオスがおり、オス、メス共に産まれた年の夏は仔に友好的で、仔たちは大人について回り、一緒になって遊びます。
他方、繁殖しないコテリーは数等のオス、メスから成っています。そこでは、1頭のオスが他のオスを支配していますが、メスの間にはっきりとした優劣はありません。

また、コテリーの境界を維持するために、隣り合うコテリーのプレーリードッグに優位のオスが追跡と鳴き声で挑戦することがあります。このようなプレーリードッグの社会は、リス類では例外的とのこと。

大人のプレーリードッグは、コテリーが混み合ってくると古い巣穴を仔たちに提供して外へ出て行きタウンの境界を広げます。生存競争に豊かな経験がある個体が去って新しい土地に入植し、慣れ親しんだ環境を未経験の仔たちに残すことは、大人の個体にとって生存価値がある行動なのです。
ここらあたりを例えて言うと、個人情報保護法を盾にして身勝手な振る舞いを押し通すなどの行動を平気で行う彼らの天敵とは、協同社会を守るための常識に根本的な違いがありますね。

プレーリードッグ類は、巣穴のすぐ周りで食物をとり、丈の高い植物をすべて噛み切って視界を良くします。彼らは、草ならば広葉・細葉を問わず食べ、伸びた葉を噛みとって丈を低く保っています。これによって、植生は変化をこうむり、成長の早い植物の発達が促されます。
プレーリードッグを含む大多数のリス類は、水分のすべてを食べた植物質から得ていますが、飲み水のある場所の近くに留まって生活しなければならないキタリスがいるのです。

プレーリードッグに関する情報を「動物大百科」や「世界大百科事典」などで集めて、思いつくままに書いてきましたが、リス類では例外的なプレーリードッグであっても彼らに適合した協同社会を形成して生活しており、キタリスのような偏屈リスも自らの生活基盤を整備して生き抜いています。
反面、プレーリードッグの天敵は、経済情勢が悪い、やれ働く場が無いなど、などの理由を掲げて大樹の力に依存しようとています。

千葉市動物公園でオグロ・プレーリードッグの採食姿を観察していると、彼の仲間達が置かれている厳しい生活環境は、嘘八百話のようですよ。

「早合点してはいけません。自分の置かれている立場をキチンと把握して、そこから自らの生き方を選択しなさい。物事は考え方ひとつだと、彼は言っているのです」

どこにいるのだろう、ボケ封じ観音さまの声が聞こえてくる。



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