シーズン2の半ば(運命とともに" target="_blank">第5回)まで見終えた。ドラマの時間は1918年である。第一次世界大戦の末期である。
ところで,2016年3月22日に,内閣は,昨年夏から秋にかけて大騒ぎとなった自衛隊法などの改正案を2016年3月29日から施行するとを閣議決定したらしい。
安保関連法:「29日施行」を閣議決定 https://t.co/DwXZltOfoH
— 毎日新聞ニュース速報 (@mainichijpnews) 2016年3月22日
「平和安全法制」と呼ぼうが,「安保法制」と呼ぼうが,または,「戦争法案」(成立したことになっているから「法律」であるが)と呼ぼうが,第189回国会閣七二号議案と閣七三号議案は,日本が戦争できることになる法律のセットである。
しかも,戦争可能にする法律としては,素人が読んでも欠陥が多い。条文が多いため,一つひとつ書いていったらきりがない。一番の欠陥は,「存立危機事態」の政府の認定に「他国の要請」を必要としないことである。このことは,国会特別委員会においても質問されたが,条文の修正がされなかった。
さて,ダウントン・アビーに戻る。1914年〜1918年の英国は, 第一次世界大戦の真っ最中である。
第一次世界大戦は,ドイツ・オーストリア・オスマントルコ帝国の同盟国とフランス・ロシア・英国の連合国を中心とした戦争である。
日本の世界史では,第一次世界大戦の端緒はセルビアにおけるオーストリア皇太子暗殺に始まると教わる。そうであれば,英国が戦争に出る理由はなく,バルカン半島を巡るオーストリアとロシアのみの戦争で終わっても良かった。
しかし,実際には,ドイツがロシアに宣戦布告し,ドイツ+オーストリア同盟国がなる。一方,フランスも一見無関係であるが,フランスとロシアは,当時「通商条約」を締結しており,この条約を理由に参戦する。
さらに,英国は,大陸の戦争に中立を守っていても良さそうであるが,「英国とフランスの通商条約」を理由に,「ドイツに宣戦布告」する。つまり,英国が,自分から戦争を仕掛けたのである。実際には英国は,ドイツはベルギーの港湾を占拠し,そこから,英国に進出する前に,大陸内に抑え込むことを狙ったようであるが,兎に角,英国は,自ら進んで戦争に関わっていったことになる。
「存立危機事態」は国連憲章の「集団的自衛権」に基づく。この言葉は,第二次世界大戦以降に,国連憲章制定の過程において造られた言葉である。第一次世界大戦の頃にはない。当時は,軍事同盟であろうが,「通商条約」であろうが,自分の利益になるための大義名分であれば,参戦する理由になったのである。
つまり,英国の第一次世界大戦への参戦を現代の国際法用語で表すのであれば「集団的自衛権行使」ということになる。
ダウントン・アビーを見ている方であれば,英国が,戦争により多くの苦しみを味わったことを感じていると思う。
日本国憲法の「平和主義」とは,歴史的に見て極めて「新しい概念」である。そして,おそらく,それには,第一次世界大戦や第二次世界大戦のおける欧米の覇権国家の反省が込められている。
ダウントン・アビーは遠い英国の過去の戦争を描いているが,実は,今の日本につながっている歴史の中のことである。
「平和安全法制」の中の「存立危機事態」の認定に,「他国の要請」が必要がないということは,「限定的」などという枕詞があったとしても他国で戦争をするということに他ならない。実際に,存立危機事態になると海上自衛隊は,外国領海又はその周辺の公海における軍用品海上輸送規制を行うことになっている(掃海活動だけではないのである!)。
日本人の長所は「忘れっぽい」とか「水に流す」というところであるが,軍事活動は,お金に関わる。つまり税金に関わる。去年の夏から秋のことは,そうは,簡単に忘れるわけにはいかない。
なお,第一次世界大戦については,以下の二冊の本が参考になる。
第一次世界大戦 忘れられた戦争 (講談社学術文庫) | |
山上正太郎 著 | |
講談社(文庫版 2010/1) |
新・100年予測――ヨーロッパ炎上 | |
ジョージ・フリードマン | |
早川書房(2015/7) |