「永遠の武士道」研究所所長 多久善郎ブログ

著書『先哲に学ぶ行動哲学』『永遠の武士道』『維新のこころ』並びに武士道、陽明学、明治維新史、人物論及び最近の論策を紹介。

長野での実感及び福岡九条の会との対決

2008-06-16 14:26:01 | 【連載】 日本の誇り復活 その戦ひと精神
【連載】「日本の誇り」復活―その戦ひと精神(三十三)

長野での実感及び福岡九条の会との対決
現実を直視せぬ「理想」は空想に過ぎず
 
 四月二十六日、長野市の沿道は組織的に動員された中国人留学生約5千名が掲げ持つ赤旗(五星紅旗)で早朝から埋め尽くされてゐた。チベット支援の為に長野入りしてゐた私達九名は、「せいかリレー」出発地前の沿道に、朝六時半に集り漸く確保した幅5メートル程の空間に陣取りチベット旗を掲げた。

その直後、回りの中国人達が騒ぎ出し、どつと押し寄せて来た。警察が間に割つて入り、吾々に他所に移動する様説得を始めた。私達は、ここは日本である事、日本人には思想信条表現の自由及び移動の自由が保証されてゐる事。吾々は違法行為を絶対に行は無い事。今混乱を生じさせやうとしてゐるのは中国人達であり、日本の警察は彼らの暴力行為を取り締まる義務がある事を指揮者に繰り返し訴へ続けた。

吾々の断固たる決意に警察側も根負けして吾々の回りに柵を巡らし警察官を配置して吾々を守る体制をとつてくれた。中国人の赤旗で埋め尽くされる中、吾々は「チベット解放区」を確保した。

午前中一杯4箇所でのアピール行動を終えて私は、当日夕方の宮崎での講演に赴くべく長野駅に向かつた。その道には赤旗を掲げ持つ中国人留学生の列が延々と続いてゐた。動員された3千名の警官を遙かに上回る約5千名の中国人が手に手に旗竿を持つて歩いてゐる。彼らは中国政府の命令で中国大使館が手配して、チベットを支援する日本人の思想表現の自由を抹殺すべく集まつて来たのである。長野市は一夜にして中国人に占拠されたのだ。彼らが持つてゐるものが武器だとしたら、と考えゾッとした。中国政府は日本の地方都市の沿道を占拠して日本人を締め出す意志と実力とを証明して見せたのだ。

 五月十八日、私は、日本青年会議所福岡ブロック協議会主催の憲法タウンミーティングに招かれて登壇した。相手は福岡九条の会から、弁護士で九州大学法科大学院教授でもある村井正昭氏が登壇した。先づ双方から20分づつ問題提起を行ひ、その後「憲法の意義」「前文」「自衛と九条」「国際貢献と九条」「国民の義務と権利」の各点について双方から3分程度意見を述べ合ふものであつた。

村井氏は、憲法とは「国民の権利を守る為に国が何をしてはならないのか」を定めたものと定義して、日本国憲法改正の必要が無い事について語つた。環境権などの新しい権利は憲法を改正せずとも可能な事、国際貢献は軍隊で無い方が対象国から歓迎される事、軍隊を持つと暴走する事等語つた。又、現憲法が米国によつて押し付けられた事は否定出来ないとしつつも、昭和天皇を東京裁判に起訴しないと決めた米国が、天皇制否定の豪州やソ連検事団到着前に作らせる必要があつた事。天皇制の維持で、アジア諸国から軍国主義復活批判の声が上るので、軍隊不保持を表明して安心させたのだ、と。更には、2年後にマッカーサーに吉田首相が憲法改正を断つた事などを挙げて国民が憲法改正を必要としなかつたと語つた。

 私の方は、先づ「憲法論議を憲法学者・弁護士・司法関係者に任せてはならない」事を強調した。彼らは現憲法を前提として仕事をし、発想してゐる訳であり、「国家権力を縛るのが憲法だ」といふ偏つた考へに自縄自縛されてゐる事を述べた。次に、幕末の志士吉田松陰が下田踏海失敗後に記した言葉「(鎖国の)禁は徳川一世の事、今時の事は将に三千年の皇国に関係せんとす。何ぞ之れを顧みるに暇あらんや。」を紹介して、憲法の自縛から解き放たれる精神の自由が必要であり、日本の未来に責任を持たんと志す青年の知性と常識が、今問はれてゐるのだと訴へた。その上で、吾々が日本の将来像を考え描いて行くのが新憲法制定であり、そこに日本のアイデンティティー及び理想を表現する必要性について語つた。村井氏の論には幾らでも反論出来たが時間が無かつたので、彼らの拠つて立つ憲法観自体の過ちを指摘した。

その後の各論では、「軍隊を持てば暴走する」と言ふ村井氏に対し、私は、明治以来の立憲主義の伝統と法治主義の努力、戦後の法治国家の実態にもつと自信を持つべきであり、政府によるシビリアンコントロール、予算や海外派兵の国会承認等で軍隊の暴走など有り得ない事を主張した。九条改正反対派は近現代史を検証して居ない為に軍隊保持=軍の暴走といふ強迫観念を抱いてゐる。憲法改正と歴史教育是正は車の両輪なのだ。

私は、憲法前文の「安全と生存」他者依存思想が「戦ひません」「見捨てます」「逃げます」の卑怯なる精神を生み出してゐる事を訴え、近隣諸国が平和愛好国なのかと問ひを投げた。村井氏は「平和を愛する諸国民」を信頼するのであつて「国家」では無いなどと詭弁を弄して逃げた。

自衛隊の国際貢献について村井氏は、伊勢崎賢治著『自衛隊の国際貢献は憲法九条で』を紹介して、九条があるから紛争国に信頼されてゐるのだと語つた。私は、イラクに派遣された第8次復興支援群の立花群長が強調された話、イラクの人々が自衛隊を歓迎したのは、日露戦争以来の日本国への信頼と地元民の文化を尊重し礼儀正しく振舞ふ若い隊員達の実践の結果である事を紹介した。そして、国家では軍隊のみが「自己完結型組織」であり、治安の悪い過酷な環境の下で国際貢献出来るのは軍隊以外には実際上有り得ない事を強調し、更にシーレーン防衛問題にも言及した。
 
最後に村井氏は、現状で北朝鮮が攻めて来れば自衛隊に戦つてもらふしかないとしながらも、百年以上かかるかもしれないが、将来自衛隊を無くすべきであり、その「理想」に向けて頑張りたいと述べた。

私は、長野に赴いた体験を下に中国のチベットに対する現在進行形の人権蹂躙行為を述べ、日本を第二のチベットにしてはならない事、北朝鮮拉致問題、根室や対馬を訪問して調査した実体験を紹介し、戦後日本は決して平和ではなく、自国の生存を他国に委ねた結果、国境地域で次々と悲劇が生まれ、日本人の生命と安全が脅かされ続けてゐる事を訴えた。

現実を直視せぬ理想は空想に過ぎない。JCの青年達にはどう響いただらうか。
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