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アルゼンチンの主食はアサード

2012-06-08 15:15:08 | 南米で暮らす<歴史・文化・自然>

アルゼンチンの人々に「主食は?」と尋ねたら,ほとんどの人が「牛肉」と答えるだろう。それほどまでに牛肉はアルゼンチンの食卓に欠かせない。

料理法は,炭火で焼いたり,ジャガイモやニンジンと煮込んだり,油で揚げたりと多様であるが,アルゼンチンで最も一般的なのは「アサード」である。アサード(asado)とはスペイン語で「焼いた(過去分詞)」から転じ,肉の炭火焼き全般を言う。

 

アサード

本来アサードはガウチョ(牧童)の食文化を継承するもので,肉の塊を炭火で時間をかけてじっくり焼き上げる。パンパ平原で牛を追うガウチョたちの食事は,屠殺した牛のアサードだった。彼らは,たき火を囲んで肉を焼きながら,南十字星の下マテ茶を回し飲みしマルテイン・フィエロの冒険譚を奏でたという。

 

ところでアサードは,一人で食べるより,家族全員や友人知人を招いて大勢で食べるのが一般的である。どこの家の庭にもパリージャと呼ばれる焼肉用の設備があり,肉の調達から炭を熾し,肉を焼くのは男性の仕事となっている(ガウチョの伝統を意識しているのかも知れない)。味付けは,肉の味を尊重して塩と胡椒でシンプルに。その間,奥さんは台所でサラダとデザートを準備する。

 

肉が焼きあがる前から客人が集まりだし,セルベッサ(ビール)やビノ(ワイン)を片手に会話を楽しむ。初めに,チョリソ(腸詰)やモルシージャ(血が主体の腸詰)を摘みに宴が始まり,メインの牛肉に入るのが一般的である。牛肉の部位も,サーロイン(ビフェ・デ・チョリソ)からヒレ肉(ロモ),肋骨つき(コステイージャ),内臓まで多様である。客が大勢の場合は専門のアサドール(焼く人)を頼むこともあるが,通常はホストが肉の焼き具合から,切り取って客にサービスまで行う。

 

招待を受けた家族は返礼としてアサードを行うのが慣習で,社交の場となっている。

 

焼肉には経験が必要だ。

肉屋へ行って,この部位を○キロ,ヒレを1本(ヒレ肉は通常1本そのまま売る),ソーセージを○キロと注文するが,最初は戸惑う。肉の良し悪しが分かるはずもなく,肉屋の親父さんを頼ることになる。

 

「どの位の肉を準備したらいい?」,「一人700gは必要だね」

「どれが柔らかい?」,「ロミートだね」

「どれが美味しい?」,「コステイージャを持って行きな」

 

日本でもバーベキューをし,ルンペンストーブの着火も経験しているので,炭火くらいは熾せるが,

「ああ,だめだめ,まだ肉を載せないで。炭が完全に熾きていないと一酸化炭素が肉についてしまうよ」,と言うようなことにもなる。

 

アルゼンチン程でないにしても,ウルグアイ,パラグアイ,ブラジルでもアサードはよく食べる。パラグアイの場合はマンジョカが添えられ,ブラジルは串刺し風の焼肉(シュラスコ)が特徴である。肉質は,主食は牛肉と言うだけあってアルゼンチンが一歩リードしている。パラグアイの牛肉は一昔前まで「靴の革」のようだと評され,歯を傷めたものだが,最近は改良され柔らかい。

 

ちなみに,牛の頭数は世界全体で13.6億頭(2002, FAOSTAT)とされる。世界の人口が62億人であるから,およそ5人で1頭の牛を飼っている勘定になる。アメリカは3人に1頭と平均以上だが,日本に至っては30人に1頭と少ない。

牛の数が多いのはラテンアメリカ諸国で世界の27%を占める。中でも,アルゼンチンは人間より牛の数が約1.3倍多い(人口4千万人弱に対し5千万頭強)。ブラジルも1.1倍,ウルグアイ及びパラグアイも同様の牧畜国である。牛肉が主食だと言うのもうなずける


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