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富良野・美瑛「夏の丘」7 美瑛の丘②ランドカフェ

(2008年8月11日 11時16分 美瑛町三田 Land Cafe)

美瑛の丘は、前田真三やCMなどで有名になり、今でこそ観光客で賑わう場所になったが、その本質は畑作地であることに変わりはない。
傾斜がきつい丘は開拓、開墾も大変で、大型農機も入りにくく、また転倒などの事故も起こることもあり、決して恵まれた土地ではない。

棚田が日本の風景として再評価され、ファンを集めていることも、この丘の農耕風景が人気になったことも、悪条件の中で畑や田んぼを作り、毎年作り守り育て続けてきた人々の行いがあったからこそ生まれた現象で、けっして生の自然の風景ではないのだ。

北海道には「夢」を求めて、都会から移住・就農しようという人たちがやってくる。
しかし農業は、小説家がちょっと土いじりをして「これが生命のパワーよ」などと言っているものとは少し違う。
結局どの仕事でもそうなのだが、「夢を追う」過程で試されるのは運とか能力以上にその「夢」そのものなのだ。夢を見ている自分に心地よく酔いたいだけなのか、本当に何かがしたかったのかが。

さて、美瑛の丘、その丘巡りの観光バスコースからわずかに外れたところにランドカフェという店がある。
美しい丘の中腹の斜面に立つ、赤い壁の木造の家。
このカフェと住居を兼ねた建物は、オーナーのコスターヒロセ・ステファンさんがセルフビルドで建てた家だ。



ステファンさんはドイツ出身、来日して中富良野町で農業に携わり、その後独立してこの美瑛の丘で無農薬・無化学肥料の野菜栽培を始めた。
このカフェはその野菜をドイツの家庭料理で食べられる、そんなカフェだ。
野菜作りはステファンさんが、料理は妻の香代子さんが主に担当している。

店内は木の床、木の腰壁、白い壁、とても落ち着き、いごこちのよい空間だ。
写真撮影を快く許してくださったので、店内ではあるが写真を撮らせていただいた。



肉料理もあるのだが、注文したのは季節の野菜のスープのランチ。
ズッキーニがいっぱい入ったスープはいろんな野菜のうまみが溶け合って豊潤な味わい。
素朴な味のパンもとてもおいしい。
赤井川村で買った野菜もそうなのだが、太陽の光と雨と、土の力で育てた無農薬野菜は、味にとんがったところがなく、「おいし~!これ!!」とか、「まいうー」とかいう感じではないのだが、やさしく染みとおるような、あたたかな味がする。
たぶん、何とか星とか、TVとかには向かない味なのだろうが、とても幸せな味がするのだ。



金欠な僕はランチのみの食事で終わるつもりだったが(1000円を切っている)、その日の朝に摘んだベリーで作るタルトと珈琲がどうしても食べたくなってしまい、追加注文してしまった。
このケーキと珈琲がまた、旨かった。

朝3時から走り出し、朝飯にコンビニのお握りと缶飲料だった僕は、もう8時間もツーリングしていることになる。その体にさっき入った野菜スープがあたたかく染み通り、そしてケーキの甘さ、ベリーの爽やかさ、珈琲のほろ苦さが非常に元気を与えてくれた。

ああ、とてもハッピーだ。



お腹も心も満タンになった頃、そろそろ店内が混み始めた。
11時40分を回り、昼食に寄る人たちが増える時間帯だ。
おいしい食事に感謝して外に出る。

店の前は道路で店の裏手は急な斜面が丘の上まで続き、そこがステファンさんの畑だ。
畑や林の中を、2kmほどの遊歩道が縫う。ステファンさんが二年がかりで作ったものだそうだ。



見上げた丘の上に、落葉松の木々。
「マイルドセブンの丘」と名づけられた風景だ。
1978年、マイルドセブンのパッケージにこの丘の風景が使われたことによる。
写真は逆光で色褪せてしまっているが、鮮やかな美しい風景だった。   (つづく)


*ランドカフェのホームページはこちら
美瑛にはこんな素敵なカフェがまだまだある。
少しずつ、1回に1軒ずつ、訪ねていく、そんなツーリングもよさそうだ。
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