goo

和歌山利宏『タイヤの科学とライディングの極意』

昨日、図書館から借りてきた本は、
『タイヤの科学とライディングの極意』(グランプリ出版)著者は和歌山利宏氏。
実はこの本、新刊時に買って、読んでいた。知り合いに貸したまま本は行方不明になり、私も引っ越してしまったのだ。
もう何回も読んだ本だが、借り出して改めて読んでみると、忘れていたことも多い。

氏は以前『ライディングの科学』(同上)という本も書いており、バイクのライディングを理論的に解析して述べることで定評がある。

ライテクには流派がある。

例えば、背中は猫背に丸めるのがいいのか、背筋を伸ばし、背骨のS字を保持した方がいいのか。

コーナーへのきっかけで逆操舵(逆ハンをあてる)をすべきか、ハンドル入力は厳禁か。

倒しこみでイン側ステップは踏み込むか、踏まないか。

80年代に外足荷重か内足荷重かと言われたようなライテクの違いが、今でも時に僕らを混乱させる。

正解は、どれも正しい。ただし、何のために、どのタイミングで、どれくらいの力をどの方向に、どれだけかけるかを、状況に応じて適切にすれば、である。

実はそれぞれのライテク本にはそれが書いてある。しかし、僕らはその本質ではなく、「操作法」を読み取ってしまい、状況に合おうが合うまいがその操作法を使おうとしてしまう。

ややこしいのは現役レーサーのサーキット攻略法に僕らが強く影響を受けてしまう点だ。
レースはツーリングではない。限界を極めている相手の更に上を行かなければレースには勝てない。おまけに追い抜きやブロックラインは、最も無理のない最速ラインでなく、ここ一発の無理をしての走りとなる。
ハンドル入力もするし、ステップも踏みつけまくる。
最近では、ブレーキングで荷重の抜けたリヤを車体ごと外に流して、リーン時の向き変えをダートトラックのようにしてしまう。
これはスリップダウン、ハイサイド両方の危険があり、両輪スライドと荷重コントロールをぎりぎりの一線上でできる自信と実感があって初めてできる技だ。

あこがれのライダーの憧れのテクニックが解説されていれば、真似てみたくなるのが人情だ。

そうして僕らは、ライディングテクニックの「型」から入ってしまうのだ。

だが本質は、今、自分が乗っているバイクがどういう状況にあって、それをどうしたいか、そのためにどうするかだ。

本書、『タイヤの科学とライディングの極意』は、バイクが力学的にどうやって曲がっているかをバイクと路面の唯一のやり取りのポイント、前後のタイヤを軸に解明し、いろいろ流布するライテクの風評の何が正しく、何が間違いか、それが何故かを原理的に解説している。

数多くの図解、グラフ、専門用語も多く出てくる本書は、気軽に読んで「明日から速くなる」類の本ではない。
むしろ教科書のようだ。じっくり読んで、書いてあることを理解していく。

速くなる操作方法を教えるのではなく、バイクの操作とは何かを教える。
明日、速くならなくても、今後何年にもわたって危険を回避したり、安全に速く走れたりするための原理がわかる、そんな本なのである。

私は和歌山氏の論に全面的に納得、賛同しているわけではないが、彼の論説は情熱と理知的な考察に満ちている。ホットなハートにクールなヘッド、というわけだ。
その姿勢には、感銘を覚えるし、むろん、専門的な知識や考察はプロのすごさを思わせる。
本気の本に触れることは、読書の大きな喜びだ。

図書館の貸し出し期限は2週間。何回読めるか、どこまで納得できるか、どれくらい疑問を発見できるか、ない暇を見つけて、読み味わい、楽しみたいと思う。

<お知らせ>
ライテク関連の当ブログ記事一覧は、記事右のサイドバーの中にある「カテゴリー」から<ライテク>をクリックすると15件ずつ表示されます。または、こちらのクリックでも同様のページが開きます。

ライテク記事目次へ。

ブログトップページへ。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
« おやすみGPZ。 バイクから学... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (めろん)
2007-11-27 18:16:39
バイクのライテク本って良いですよね。
自分も最近よく見てるんですが普段何も考えずに乗ってたバイクが
読み出してから常に脳がフル回転^^;
あまり考え込みすぎると運転に支障がきたすんですけど^^;
速く走るよりも何年にも渡り危険を回避し安全に・・・
ほんとまさにそれ!ですよね。
若い頃は速く走ってナンボでしたが。。

そういえばマイナス10℃以下の世界ってエアコンなんかじゃ暖かくならないんでしょうか?
あまりエアコンを使ってるイメージありません。
 
 
 
エアコンもないです。 (樹生和人)
2007-11-27 20:31:53
めろんさん、こんにちは。
バイク操作の面白いところは、結果が自分に跳ね返ってきて、しかも誰のせいにもできず、かつ、自分を否定しても何にもならないところにあると思っているんです。
上手く操作したら、よりうまく走り、まずい操作をしたら走りが悪くなる。
でも、とりあえず事故せずに、走れるだけでまずは楽しい!景色も、スピード感も、開放感も。

バイクに乗って走っている最中は、あまり後ろ向きになれない。なると危ないので。今、現在と向き合うようになる。それが、心地よいのだと、私の場合思います。
この話は長くなりそうです。また、記事にしますね。

さて、エアコン一つで暖房というのは、北海道では少々きついですね。各部屋にエアコン置いて各部屋暖房ならありですが(そんなお宅もありますが)、すごくエネルギーロスになります。
冷房が要らないところも多く、ストーブはあってもエアコンのない家も多いのです。(我が家もそうです)

北海道の住宅は、驚くほど高気密、高断熱です。建物全体を断熱材で覆い、少ないエネルギーで全館暖房する方が、効率的で暖かいんです。もちろん換気が大事で、換気をいかに計画的にするかが家の性能を分けたりします。

この話も、長くなるので、また。
関西は一年中オンシーズンですね。冬ライド、楽しんでください。
 
 
 
Unknown (めろん)
2007-11-28 19:22:21
バイクのライディングって多少はバイクの性能も左右するんでしょうけど
自分にすべて返ってきますからね。
・・・上手く言えませんが^^;
来年北海道に行けたら話し合ってみたいもんですね。

エアコンはやっぱり付いてない所多いんですね!
たしかに夏でも日中暑くても夜は涼しそうですからね。
やっぱり石油ストーブのほうが暖かくなるんですね。
マイナス30℃とか住んでると大変なんでしょうけど
体験もしてみたくなります(笑)
 
 
 
冬とライテク。 (樹生和人)
2007-11-28 21:58:09
めろんさん、こんにちは。
ありがとうございます。
北海道の道の上で、お会いできるといいですね。

ライテクの話、北海道の冬の暮らしや家の話、
このブログでも、冬の間、いろいろと取り上げてお話していきたいと思います。

本の和歌山氏は50歳過ぎてもどんどん上手くなってるといいますし、私の20年来の心の師匠の一人、根本健氏も、もう60歳になりますが、やはり年々上手くなっているといいます。
タイムや競争の順位はエキサイティングですが、ライテクの上達はまた違った深さがあるようです。

冬の北海道もいいですよ。
日本一寒い町、陸別では、「しばれフェスティバル」もやってます。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。