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ブラインドコーナーを攻略せよ 右

(『バイカーズステーション』№224、2006年5月号、53頁より、カワサキER-6nを駆る和歌山利宏氏。
右中速ブラインドコーナーの立ち上がり付近。アクセルを大きく開けての旋回加速。)

ブラインドコーナーの攻略。今日は右コーナーです。
右が苦手だと言う人も多くいるかと思います。
サンターに寄り過ぎたり、曲がりきれずにガードレールに行きそうになって怖い思いをしたりと、右コーナーは公道では左に比べて走りにくい感覚を抱くことも多いのです。

右ブラインドコーナー攻略のポイントは3つ。

1 直線部分でより減速。アクセルオンで曲がること。
2 ラインはアウト⇒アウト⇒センター。
3 フォームはリーンウィズか、ややリーンイン。バンク角は浅く。

右コーナーでもクリッピングポイントはあるのですが、この場合はむしろクリッピングを意識しない方がいいと思います。

以前、「下りヘヤピン右曲がり」という記事で下り坂、右曲がりヘヤピンカーブの攻略を考えたことがありますが、基本的にはほぼ同じ考え方です。

その時は、下の図A~Dの4つのラインについて説明しました。
A、Bは見通しがいい場合、C、Dは下りでアクセルを開けると思いの他速度が乗ってしまうので、コーナーの中に何回かブレーキングから向き変えのポイントを取った、お薦めのライン。名づけて「超低速多角形コーナリング」でした。
しかし、その時も書きましたが、田舎道のブラインドコーナーが延々続く道では、メリハリをつけたDラインでの走行が最も安全で結果的に速いことは疑いがありません。
ラインとして一番美しいAラインは、コーナー後半で急に道が回りこんでいたりした場合、破綻するからです。

  

  
しかし、こうもいえます。
実は基本はスピードを押さえてのAライン。
そのAラインで走行中、先で道が回りこんでいるのを発見したら、運任せでさらに旋回するのではなしに、一度車体を立ててブレーキング。道のアウトに寄りつつもさらに減速してもう一度コーナーに進入するようにバンクしなおして向き変え、旋回に入る。
するとラインは、結果的にCラインになり、それをさらに繰り返せばDラインになるのです。

さて、改めてポイントを説明していきましょう。


1 直線部分でより減速。アクセルオンで曲がること。

誰でもコーナーを華麗に駆け抜けていく姿にあこがれます。全然急いでいないふうなのに付いていけないベテランの走り。
それに迫ろうとして速く走らなくてはと思うあまり、全体的に速度を上乗せしてあとは勇気で何とかしようとしてしまう…。
これでは怖くなるばかりで、バイクライディングを楽しめません。

バイクライディングの楽しみ、特にコーナリングの楽しみとは、放っておけば倒れてしまうその傾いた状態でアクセルを開け、後輪の駆動力で旋回加速しながらカタパルトから射出されるようにコーナーを脱出していく、あの駆動感、疾走感だと思います。(もちろんそれだけではないですけれど)
その状態はバイクがとても安定している状態でもあり、安全な状態でもあるのです。

その楽しみを味わうために、コーナー進入ではもうひと減速して、速度を落としておく。カーブに入ってからは加速一辺倒で、コーナー進入前が一番遅いのが安全で気持ちいいコーナリングの基本です。
苦手な右コーナーであるならば、まずはこの基本をしっかり踏まえるところからスタートした方が楽しいし、結果的に速い。


2 ラインはアウト⇒アウト⇒センター。

ラインを決め込まず、Dラインのようにコーナーの中でも臨機応変にするのがいいのですが、そのDラインに至る前の段階での心づもりとして、ラインは一応頭に描いておくべきでしょう。そのラインがブラインドの場合、アウト⇒アウト⇒センターがいいと思います。


(ブラインド右でのライン、アウト⇒アウト⇒センター。)

ただし、ここでの「アウト」には注意が必要です。
右コーナーのアウト側は道路のヘリ、路肩。そこには砂が浮いていることも多く、また、路面がかまぼこ型の断面をしている場合、逆バンク状態になっていたりして道路の端付近は危険なことが多くあります。
ホントに目一杯アウトに寄らず、少し荒れた部分を回避する感じで外側(この場合は左側)に余裕を持ったラインでアウトから進入します。

さて、アウトから進入したらすぐにセンターに寄って行きたくなるのが人情ですが、ここは我慢して、本格的なバンク、向き変えを控えたまま、今できる旋回の50%くらいの旋回力だけで、ゆるゆるとアウト側をしばらく進みます。
もちろん、このときまで減速を続けるようではいけません。
あくまで、旋回加速に移れるけれどちょっと「ためる」感じで、遅い速度のまま曲がっていきます。


(右側は旋回状態。左側、バンク角が浅い方が旋回のために「ためて」いる状態。
この状態でアウト側をなぞっていく。いつでも旋回に移れるようにしながら)

なぜか。
ブラインドコーナーの向こうで道の外側が崩れていた!とか道に穴が開いていた!とか、道がさらに曲がり込んでいた!という場合、今の状態からさらにグイっと曲がりこんでイン側に逃げなくてはならないことがあるからです。
その時にぎゅっと曲がれるように、本格的な旋回には入らないでおきます。
センターを進む方が道の外側のトラブルから逃げやすいように思えますが、
アウト側を行った方がより先までの見通しが利くため、前方の障害を早く発見できることと、
アウトからセンターに寄るような向き変え、コーナリングを始めてしまうと、「ため」の状態でなく、安定した旋回状態に入ってしまい、そうするとそこからのライン修正には「ため」状態からの修正よりもずっと手間がかかり、さらに本格的な旋回に入ると加速状態にしないとバイクが安定しないので、コーナリング速度が上がってしまい、とっさの危険回避を難しくするからです。

出口が見えてきたら、「ため」の状態から脱出に向けてバイクを倒し、コーナー内側に向けて向き変えをし、本格的な旋回加速に入ります。
結果、立ち上がりでラインがふくらみ、ガードレールに突っ込みそうになることもなく、コーナーの中でセンターラインをカットして対向車線にはみ出すこともなく、アウト⇒アウト⇒センターのラインを描けると言うわけです。


3 フォームはリーンウィズか、ややリーンイン。バンク角は浅く。

このように、ブラインド右コーナーでは、「コーナリング」をするのは、コーナー出口が見えてから。それまではコーナリングの準備段階と割り切って、安全に、ゆっくり、ラインをトレースしていくのがいいと思います。
ブランドコーナーの中の通過速度が時速10㎞違っても、そのために立ち上がり加速ができずにかえって立ち上がりでアクセルを閉じたり、ブレーキをかけたりするよりは、ブラインドはゆっくりやり過ごして、コーナーの先が見えたら旋回加速から脱出加速とつなぐ方が、トータルでは「速い」のです。

そのための準備期間中のコーナリング(?)フォームは、これから倒しこもうとして、そのまま「ため」ている、そんなフォームのままになります。
多くの場合、それはリーンウィズか軽いリーンイン気味のフォームになるはずです。もちろんそうした「ため」を残していれば、リーンアウト気味でもいいわけです。

(上の図、左は直進時。右は旋回時。真ん中が右旋回に向けての「ため」の状態。
この、これから倒すぞという「ため」の状態を維持したまま、若干バイクをバンクさせ、
ブラインドコーナーのアウト側をなぞっていく。)

この「ため」は当然、コーナー出口が見えたときの旋回加速に向けて、または、道が曲がりこんでいたときや、障害物を内側に避けるために旋回半径を小さくする向き変えに向けて、バンク角を浅く保ったまま、待機している状態です。
できれば10~20度以内、倒しても30度以内のバンク角にとどめて、そこからぐいっとバンクして旋回していく余裕を持たせることが大切です。


(『ライダースクラブ』№83.1985年9月号.23頁より)

上の写真、ライダーの永山育生氏は、バンク角を30度以内に収めて右コーナーを旋回中。この写真では前後なサスが沈み、バンク角は浅いままですがアクセルは大きく開けられ、旋回加速に入っていることがわかります。
写真から推測するに、右ブラインドの中速コーナーです。
バイクは既に旋回加速による安定状態に入っていますが、もし、この先で障害物など何かがあったなら、一瞬アクセルを閉じたり、ブレーキをじわっとかけたりして安定状態を瞬時に崩し、同時に車体を起こして減速しつつ外側に逃げることもできるでしょうし、安定状態を崩して深くバンク、向き変えをし直して内側に逃げることもできるでしょう。
ここでの永山氏は先のラインA~Dで言えば、状況によっては即座にラインC、Dにするオプションを確保しつつ、ラインAでコーナーを楽しんでいる。そういう状態なのだと思います。

ライディングの上手さとは、単にバンク角が深いとか、速く走るとかいうものだけではなくて、状況に応じてどれだけ「引き出し」を持っているか、ということだと思います。
何気ないコーナーをゆっくり走っていても、上手い人はしびれるほどに上手いのです。そしてそれを歯を食いしばって頑張っているのではなく、実に状況を楽しみながら走って行きます。
私が公道で目指したいのは、そういう走りです。

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コメント
 
 
 
Unknown (ぶるーあい)
2008-05-16 08:51:39
なかなか奥の深い記事ですね、なるほどと思えることがたくさんあって、あらためて考えさせられます。
ようやくGPZにも慣れてきた感じの私ですが、このやたらに重い(ABS仕様)ですが、最近この不便さが楽しいのかなと思い始めております。今のものはそれは便利すぎるほど便利で、そこには人の手、想いの入る余地すらないような、その中にあってバイクはいろいろ楽しめる部分が多いことに感謝しています。
またその為には、自分自身の鍛えておかないと無骨な乗り物に太刀打ちできないことでしょう。(と自分を納得させています、笑)
 
 
 
GPZは、いいですよね。 (樹生和人)
2008-05-16 20:02:31
ぶるーあいさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
今回の記事はかなり我流が入っています。
変なところがあったらご指摘ください。

GPZ、重いですよね。
でも、ぶるーあいさんのおっしゃること、私もそう思います。

GPZのいいところに実は下半身はスリムにパシッと決まることがありますよね。
フレームがアルミのごついツインスパーでなく、鉄のダブルクレードルであるがゆえに、ステップやタンク周りがスリムになり、ニーグリップもピタッと決まるようになっている。
私は手が短いのか、ハンドルが遠くて困ったのでバーハンドルにして引き寄せたら、ポジションもばっちり決まった(のではないか)と自分では思っています。

マシンが勝手に曲がるのでなく、ライダーが曲げていく、その操作感は、昔のカワサキの伝統を引き継いだハンドリングだと思います。
私はなかなか好きです。年々好きになってきました。
それはライダーの手の入れ方、思いによって、マシンがうまく動いてくれたり、くれなかったりする、そのリアリティにほれたのかもしれません。(でも、重いけど…)
 
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