<ちょっとあらすじ>
昭和40年。
エネルギーは石炭から石油に取って代わり、
常磐炭鉱大量解雇の冷たい風が吹く福島県いわき市。
なんとか再興を図ろうと計画された
常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)の目玉、
フラダンスのダンサー募集が始まる。
SKD出身の平山まどか(松雪泰子)が東京からやってきた…。
<樹庵的感想>
いやー、泣けた泣けた。
とにかく泣けて、劇場で観なくてよかったとつくづく思いました。
それにしても、なんというか泣ける理由がよくわからない。
でも、ガラガラ泣ける。
そういう意味では、これも不思議な映画だ。
昭和40年。
閉山が迫る炭住に住む、極貧と呼んでもよいかもしれない人々。
冬枯れの東北の、田舎町の風景がまさにぴったりだった。
山で生まれ山で死ぬことが当たり前だった人たちに、
解雇の波が押し寄せる。
「俺達は変わらないのに、時代だけが変わってしまった。」
という紀美子(蒼井優)の兄(豊川悦司)の台詞がねぇ。意味深い。
ダンス教師平山の「プロを呼んできてやれば」の一言に、
方言で啖呵を切るハワイアンセンター営業部長(岸辺一徳)の、
内容はまったくわからないけど、切れちゃってすごい早口でまくしたてるところに、
炭鉱の人々の心の内が見えるようだった。
きっと誰でも同じこと(意味はわからないけど)思っていたんだろうな。
解雇された父親と弟、妹を連れて夕張に引っ越す紀美子の親友、早苗は、
ほんの短い間みんなと練習したフラの時間が、
今までで一番楽しかったと告げる。
早苗の家は本当に貧しくて、
中学を卒業した早苗が家族の面倒を見ていた。
「がんばれよ、あんたの人生これからさ」といいたくなる。
ハワイアンセンターオープン前の、フラガールキャラバンの途中に、
父親が落盤事故で亡くなるサユリ(しずちゃん)。
炭鉱の仕事は死と隣り合わせなのに、
そんなに危険な仕事をしている人たちが、
こんなに貧しくていいのだろうかと思ってしまった。
経済の仕組みというやつがね、恨めしい時があるよね。
でも、どうも泣けるのはそういう貧しさのせいでもなさそうだ。
でもいいや、これ以上分析しなくても。
あー、ガラガラ泣くと、すっきりしてよいわ。