「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

愛媛・愛南町で南海トラフ巨大地震・津波対策を考える

2014-12-02 22:11:24 | 駿河トラフ・南海トラフ巨大地震津波対策
昨日1日と今日午前中、愛媛県愛南町を地震&津波防災の観点から見て回る。

一番考えさせられたことは、子供たちの声が聞こえる、ということ。

高齢化・少子化が進む地域では、平日の昼間や夕方にまちあるきをしても
なかなか子供の姿にぶつかることがない。
もちろん、たまたま、ということもあるだろうが、
愛南町では多くの小学生の姿を見かけた。

子供達が育っているということは、そこには「なりわい」がしっかりある、ということ。
多くの養殖用いかだを見ることもできた。漁港の賑わいも感じられた。
それなりの額の世帯収入を確保できるだけの「なりわい」があれば、
そして子育てをするような世代がその土地でがんばっているならば、
災害によって一時的に厳しい状況に陥ることはあっても、
そこからの復旧復興には十分な可能性がある。
確認すべきは、まずは漁具類の保険辺り、であろうか。

ただ、漁村の住家の老朽化は否定し難い。
家と家とがくっつき合い、幅1mもない路地がその間を抜けている、という、
他の漁村でもよく見かける集落の姿は、愛南町のいくつかの漁村でも同じだった。
一方で住家の老朽化が進み、他方で震源域に近いがゆえに状況によっては震度7も出る、
そのような場所であれば、「ダブルパンチ」すなわち極めて強い揺れの後の津波、の
第一撃に耐えられそうにない、そのような状況が見て取れた。
では、その場所で立て直すのか?職住分離を目指して高台に安全な家を、と
できるか。その適地はあるか……。

立地に問題のある施設・地域もかなりある。
幾つかの小学校は高台にあり、避難所としても十分機能するものだったが
(例えば船越小学校や久良(ひさよし)小学校)
自然の中で子育てをするにはまさにベストな場所と言えるような家串(いえくし)小学校は、
道1本を挟んで目の前は漁港&船泊り。

津波からの安全を、海岸線からの距離で稼ぐことができる地域はまだよい。
(例えば県立病院周辺)
しかし、東西に細長く、西側が海岸線、南側にも北側にも川が東西に流れているという、
三方を水に囲まれ、南側か北側の高台に逃げるには橋を渡らなければならないという
国道56号線のバイパス沿いの市街地は、手の 打ちようがない。
ロードサイドの商業施設のみで、そこには昼間しか人はいない、というならば、
まだ救われるだろうが……。

1日半かけてもざっと見ただけであり、細部の状況まではわからないが、
あの歓声を上げながらサッカーに興じる漁村の子供たちのためにも、
命も、人生も、ふるさとも守れるような、そんな計画をひねり出さなくては、
そう思わずにはいられなかった。
どう考えても、相当にハードルの高い課題だが……。

午後、愛南町の防災対策課の方々と、国交省四国地整局の方々、
事務局をになって下さる日本工営の方々と「旅の坊主」で2時間ほど論点整理。
まぁ、やるしかないよな。


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