イギリスの田舎とB&Bめぐり

留学中の娘を訪ねた45日間のイギリス旅行記。月1間隔でUPしていく予定なので、ゆっくり・じっくり読み進めてください。

11 ベイクウェル  パート2 (チャッツワース) 6月13日(火)

2010-06-21 22:01:07 | イギリス旅行記

  昨日のハドンホールに引き続き、ここからアクセスが便利なもう一つのカントリーハウス「チャッツワース」に出かけた。ホテル前から乗ったバスは、昨日とは反対方向に向かって走り、広大な敷地に建つ堂々としたお屋敷の前で降ろされた。気が付かなかったが、バスはとっくに敷地内に入っており、ぐんぐん進んで入場料金徴収所のまん前まで乗り付けることが出来たのは、その後の疲労を考えると幸いだった。
チケットゲイトには少人数ながら(10人位)行列が出来ていた。こんな事は旅が始まって以来はじめてのことで、人気のほどを実感した。
入り口を入るといきなり階段室。装飾を施した黄金の手すりを両側に配した階段が、私達を二階へと誘う。次々と連なる部屋は、どれも美術工芸品の宝庫。
このカントリーハウスの当主は400年余り続いている「デヴォンシャー公爵家」の11代目。これは来館してから初めて知ったのだが、丁度その年(2000年)は、11代目が爵位を継いで50年目、その上、夫妻の80歳誕生日にあたる記念の年とかで、普段はプライベートルームで所有している数々の秘蔵品が、各部屋に散りばめられて公開されていた。その1つ、「グリーンサテン・ドレッシングルーム」という部屋に入っていったとき、かの有名な絵画と対面する事ができたのである。デヴォンシャー公爵家5代目の夫人ジョージアナの肖像画だ(ゲインズバラ作)。この絵画は盗難に遭い、1994年に当家に買い戻されるまで、100年以上も行方不明だった。盗んだ犯人が、この絵に描かれていた公爵夫人に惚れ込んでしまい、肌身離さず逃亡生活を続けていたというエピソードを、テレビ番組で見た事がある。なるほど、艶やかな美しさに輝いていた。いとも無造作にイーゼルに立てかけてあり、近寄って、このように撮影もできてしまう(写真1)。また盗まれたりしないだろうかと心配になったが、多分触れただけで大音響が鳴り響く仕掛けでも施されていたのだろう。
どの部屋も、壁には大きな額が飾られ、梁や柱には彫刻が施され、天井も華やかなバロック絵画で彩られている。見学者に配慮して、お盆くらいの大きさの拡大鏡が各部屋に用意されていた。それに天井を写して見れば、確かに首は痛くならないのだが(写真2)、あまりにも見るものが多種多様で目が疲れた。この装飾過多ともいえるバロック様式は、日本人の美意識の対極にあるもので、近代ヨーロッパのエネルギーを見た思いだが、正直疲れた。そんな時は、窓の外に広がる庭園に目をやり、穏やかなグリーンにほっと一息ついたものだった(写真3)。
いったん外に出て、別棟のレストランとショップに立ち寄りしばし休憩。最後に庭園にでてみたが、ここも広い。散策している人達が点のようだ。
バロック彫刻の噴水と人工の川が真ん中を貫き、両岸は芝生と並木道が続く。私はそこでダウン。木陰に座り込んで、行き交う人々を眺めながら、一回りして来るミチを待った。ミチは少し先まで足を延ばして、見事に風景に溶け込んでいるお屋敷の写真を写してきた(写真4)。これだけ広大な地域を独り占めした(今もしている)貴族、しかも国中至る所に、このようなカントリーハウスが散らばっていて、この世知辛い現代にちゃんと存在しているのだから、イギリスという国は本当に不思議・・・
帰りは、中まで乗り入れて来るバスが無かったので、バス停まで30分ほど田舎道を歩いた。茅葺屋根の家があったり、その家のドアの前に、自家製のジャムが置いてあったり、そして何処もかしこも花いっぱいの、楽しい道のりだった。