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朝焼け色に光る町

2015年09月25日 03時46分55秒 | 小説
第30話 ピンク色のマーチ

流衣はいつものように浜辺に足を運び朝日を見ていた。
缶コーヒー片手に朝焼け色に光る町に立っている。
今日も頑張る。
そんな気持ちから声が出た。
「この朝日の昇る町は誰にも汚させないからな!」
この間の誓いを胸にし太陽に叫ぶ。
そう言うと流衣は心がスカッとした。
今日も学校に行こうか。
そんな気持ちで後ろを振り向く。
するとそこには龍輝が立っていた。
「おはよう。」
「ああ。あんたもここに来たのか?」
「あいつがここはお前の好きな場所だと言っていたからな。」
「そうだな。いつも早起きしたら来る場所だよ。いいだろ?一番太陽が綺麗で。」
「そうだな。私も希望が出来たよ。改めてそう思えた。」
「頑張ろうな。」
そう言い流衣は拳を出し親子でグータッチを交わした。
こうして流衣はいつも通り学校に登校する。
いつもと同じく早く着き教室でゲームに熱中する。
ゲーム内で仲間を探そうとすると流衣に誘いが入った。
「誰だ?」
そう言いながらも流衣は誘いを受けた。
するとそこにメッセージが打たれる。
「もう学校なの?早いね。今後ろだよ。」
その言葉に流衣は後ろを振り向いた。
「おはよう。」
明恵が立っていた。
「お前かよ。てか1人だし早いな。」
「今日日直だもん。それとゲームばっかしてて楽しい?」
「別にいいだろ。」
「今日途中まで一緒にいた人誰?」
「親父だよ。」
「じゃあ今度私も挨拶しなきゃ。」
「いいよ。余計なことすんな。」
「それより流衣君も今日日直だけどゲームしてて余裕だね。」
「あ!忘れてた!」
こうして今日もヴィーナス学園の1日は始まった。
ホームルームで日直の仕事をし授業に入る。
流衣は今日も退屈そうにしている。
流衣は心の中で思った。
「明恵と日直って中学以来だな。」
そう思っていた。
そして授業が終わり流衣の机の周りに集まる。
椅子に座る流衣。
遥が流衣の机に座り流衣を見下ろし言う。
「あんた、日直忘れてゲームしてたの?バカね。」
遥が流衣をディスる。
「流衣君もうっかりさんだね。」
「いいだろ。遅刻しなかったでけでも。」
「結局は早起きに救われたのよね。幸運強いわね。」
遥の言葉に流衣は黙り込む。
「いいですね。中学以来の日直も。懐かしくありませんか?」
満のその言葉に流衣は頷く。
「そうだな。明恵だから良かったが遥とは絶対嫌だな。」
「何よそれ!」
「こんなゴリラとは絶対なりたくない。なりたくない女ナンバーワン。」
すると遥は机の上に立ち上がる。
そして回し蹴りが流衣の顔面に命中し流衣は椅子から転倒する。
遥がやってやったいう顔で机に立つ。
「今日のパンツはチェックなんだな。」
すると遥は流衣の股間に踵から飛び降り流衣は泡を吹き気絶した。
「頭冷やしてなさい。」
そう言い遥は1人先に自分の荷物を持って次の教室の理科室に向かった。
そして昼休みを迎える。
流衣は保健室で目を覚ます。
「…」
寝起きでボーっとしている。
何があったか思い出そうとする。
「起きた?」
明恵が心配そうな声で問いかける。
声のする方を向くと明恵と幸音がベッド横の椅子に座っていた。
「流衣君のああいう所相変わらずだね。」
「お兄ちゃんってば懲りないね。」
「何故なら俺は不屈の精神を持ってるからな。」
「お兄ちゃん、ゲームのし過ぎ。」
「いいだろ。ゲームは俺の至福の時間だ。」
「それより朝お弁当忘れてたよ。」
そう言い幸音は流衣に弁当を渡す。
流衣は受け取り言った。
「んじゃまた後でな。」
そう言い流衣は起き上がりベッドを出た。
「どこ行くの?」
「1人になりたいんだ。」
こうして流衣は保健室を後にした。
1人中庭で淋しく弁当を食べる流衣。
一方で明恵は生徒会室を訪れた。
翔子と沙菜に相談を持ちかけた。
「そうね。彼は確かに変わったわ。この5ヶ月様子を見ても昔の一面は。」
「ですよね。私だけ取り残されてるみたいで。」
「どういうところが?」
「昔の目で流衣君を見てて私がもし何かあったら止めたいとか思って。」
「彼がまた暴れるってこと?」
「はい。変わったって皆言っても何だか不安です。いつまた昔みたいになるか。」
「そうね。急に暴れるのも猛犬のポイント。でも今は心配ないわ。」
「どうして?」
「だって翔子はそれほど流衣君が好きで信じてるもんね~」
「もう沙菜ってば!」
「信じることも大切だよ。」
「そうですね。」
沙菜の言葉に明恵は笑顔で答え頷いた。
そしてその会話を外で光と剣が聞いていた。
「ねぇ剣君、朝日先輩の過去を教えて下さい。」
「またですか?」
「彼女さんの死から引っ越すまでのことです。私には隠してるようにしか。」
「本当に彼は心が病み社会にいることが出来ぬ状態でした。」
「でも!」
「彼はそのことはまだ触れられたくないそうです。僕も守秘義務ですので。」
「私も風邪さえ引かなかったら知っていたのに。」
「どうやら天に見放されたようですね。」
そう言い剣は光に背を向けその場を去る。
光は暗い顔をして佇むだけだった。
そして放課後を迎えた。
流衣と明恵は日直の仕事を終え2人で学校を出る。
「2人で学校出るのも久しぶりだね。」
「そうだな。たまには2人で出掛けようぜ。」
こうして2人は市街地に出た。
ゲームセンターに行ったりカフェに行ったりと思い切り遊ぶ2人。
そして次に着いたのは公園だった。
森の中のボートのある池の前に佇む。
「そういえば俺も思ったよ。」
「何を?」
「いつまでも凛香のこと引きずるのはやめたいなって。今気付いたよ。過去に囚われ過ぎてた。」
「いいことだよ。じゃないと凛香ちゃんも喜ばないよ。」
「これからはゆっくり自分の生きる道を探すよ。過去の呪縛は解けたし。」
「そうしようね。」
するとそこに一匹の猫がやって来た。
その猫は明恵にすり寄る。
「可愛い。森の中で猫ちゃんが寄って来るってロマンチックだね。」
「そうだな。俺もファンタジー好きだしいいな。」
「何かファンタジーみたいだよ~」
明恵は嬉しくて猫を抱き締める。
「お前もそういう所は相変わらずだが少し変わったな。」
「何が?」
「今までは俺について来るだけだったのに俺に正しいことを教えてくれた。」
「ずっと思ってたんだ。流衣君も新しい恋した方がいいって。」
「俺もお前も変わったな。気付けば前に進んでいた。昔に取り残されてるかと思ってたが。」
「そんなことないよ。」
「そうだな。これからもゆっくりでも前に進もうな。皆でさ。」
「うん。」
こうして2人は誓いを胸にした。
少しずつでも自分たちは前に向かって歩いていると知った。
一歩ずつ確実に足踏みをしながら進んでいる。
昨日より今日へ今日より明日へ進みたい。
そして明日より明後日へ先を見て進もうと思った2人だった。
そんな2人の中にはピンク色のマーチが響いていたのだった。

続く

朝焼け色に光る町

2015年09月18日 03時46分06秒 | 小説
第29話 朝焼け色の決意

流衣は起き上がった。
制服のままソファーで寝ていたことに気づく。
時計を見ると昼前だった。
隣で幸音が眠っていた。
流衣は立ち上がり重い体を動かす。
テーブルの上を見ると食事が出来ていた。
それと一緒に置手紙がある。
「朝食作ったから食べてくれ。」
そう一言書いてあった。
流衣が食事を食べようと椅子に座ろうとした時だった。
インターホンが鳴った。
その音で幸音も目が開いた。
流衣は玄関に出る。
ドアを開けると明恵と遥がいた。
「おはよう。」
「お前ら、何しに来たんだよ。」
「流衣君があれからどうなったんだろうって思って。」
「心配したのよ。あんたああいうとこ昔と一緒ね。」
「親父に会えたよ。元気そうだった。」
「そうなんだ。良かったね。」
「あんたも色々話したの?」
「ああ。夜が明けるまで話したよ。」
「良かったわね。じゃあ私たち帰るわね。あんたが無事で良かったわ。」
「もう無茶しちゃダメだよ。」
そう言い2人は去って行った。
流衣は1人考え込む。
「目的果たせたな。」
この町で父親に会うことが出来た。
思いっきり殴ったな。
流衣はそう思い一気に今まで背負っていた物から解放される。
これからは普通にこの町で生きよう。
流衣はそう思った。
それからまた月曜日を迎える。
流衣はいつものように学校に登校する。
今日はいつもより早く登校した流衣。
いつものように教室でゲームをして時間を潰していた。
するとその時だった。
教室のドアが開いた。
こんな時間に誰だろうと流衣は思う。
流衣は顔を上げた。
「あ!朝日先輩。」
光だった。
光は流衣と目が合い顔を赤くする。
「おはよう。」
「朝日先輩、おはようございます。」
「何してんだ?」
「はい。掃除です。」
「俺邪魔か?」
「いいえ。いて下さい。」
こうして学校での1日は始まった。
授業が始まり流衣はいつものように退屈そうに授業を聞いている。
シルヴィの言葉が右から左に流れて行く。
そんな時だった。
「朝日君。」
流衣が指名された。
「はい。」
流衣は返事をして立ち上がった。
「じゃあ3行目の文章を日本語に訳して。」
「はい。神は言った。信じる者は救われると。」
「はい。よく出来ました。」
そして昼休みが来た。
流衣は剣と教室で将棋を打っていた。
「そうですか。お父様とお会いに。」
「ああ。思いっきり殴ったよ。そして朝まで話した。」
「いいですね。親子水入らずは。」
「お前も親父とこういうことしないのか?」
「父は毎日忙しいですから。」
「大人になったら親父と杯を交わしたいな。お前ともやろうぜ。」
「そうですね。」
「じゃあこれで王手な。」
流衣は剣から王手を取った。
「じゃあな。また明日。」
そう言い流衣は教室を後にした。
教室を出た流衣は中庭に来た。
ベンチに座り缶コーヒーを口にする。
夏も過ぎ涼しくなった9月はすっかり秋の香りだ。
流衣は空見上げため息をつく。
季節の変わり目に前の季節に取り残されているように感じる。
「あら?ため息なんてどうしたの?」
「まだ授業はあるよ~」
振り向くと翔子と沙菜が後ろに立っていた。
「何すか?」
「お父さんと会えたのね。私に感謝してね。」
「そうそう。この恩は体で返すしかないよ~」
「もう沙菜ってば!」
翔子は顔を真っ赤にする。
「確かに会長のおかげですよ。」
「それはどうも。」
「何か成長出来たなって思えますよ。」
「こうして少年は大人になって行くのだった。」
沙菜はそう言い空気を和ませる。
「大人ね。まだ俺ガキっすけどね。」
こうして昼休みは終わり午後の授業に入る。
午後の授業は体育だった。
この日の体育は陸上。
陸上部の生徒たちの実力が発揮されていた。
流衣は走る女子たちの揺れる胸に目が行っていた。
「すげぇ。」
すると後ろから鉄拳が飛んで来た。
「こら!あんたまた!」
遥だった。
「いいだろ。男なんだから。」
「流衣さんもそういう所可愛いですね。」
満が笑っていた。
「笑うなよ。」
「いいと思いますよ。健全な男の子の証ですから。」
そう言われ流衣は恥ずかしくなり顔を赤くする。
「そういえば俺もいつか家庭持つんだよな。」
「いきなりどうしたの?」
明恵は首を傾げ聞く。
「親父と会って思ったんだよ。俺はどんな親になるのかって。」
「流衣さん、お父さんと会ってからそう思われたのですか?」
「ああ。親父は昔はダメでも今は全うに生きてる。俺は親父を見直した。
前はダメな親だと思ったが違った。親父は立派に生きていた。」
流衣はそう言い空を見上げた。
自分も親父も今は変わった。
いつまでも昔のままじゃないんだとそう思った流衣だった。
そして放課後。
流衣はいつもの喫茶店に1人で来た。
コーヒーを注文しDSでゲームをしながらコーヒーを飲む。
最近発売したばかりのドラクエに夢中になる。
しばらくゲームをしていると店のドアが開いた。
誰か来たんだなと流衣は思う。
店員がいらっしゃいませと言った後だった。
「ホットコーヒーを1つ。」
聞き覚えのある声だった。
流衣が顔を上げると我久斗が来店していた。
「大家!」
「朝日様ではありませんか。」
そして我久斗が流衣と同じ席に着く。
「何だよ。」
「先日はご来店ありがとうございました。」
「まぁな。俺もあれからいつも通り生きて行こうと思ったよ。」
「左様ですか。」
「いいんだよ。俺は俺の生き方。あいつはあいつの生き方で。」
そしてその夜。
流衣は風呂上りにプリンを食べながらゲームをしていた。
「お兄ちゃん、今日のプリンどう?」
「美味しいよ。少し味変えたろ?」
「うん。気付いてくれて嬉しい。」
「分かるよ。いつも食ってるし。」
「お兄ちゃん、私たちこれからも一緒だよ。」
そう言う幸音の目からは涙が溢れていた。
流衣はDSを置いて幸音を抱き締めた。
「泣くな。俺がいてやる。」
「お父さんに会えて思ったの。今までの私がバカだったって。親がいなくて苛めを
受けてお父さんが悪いって思ってたけどでも違った。」
「俺もだ。親父を悪者にして生きていた。だが違った。すごく優しいと知った。」
「私もまたいつものように生きるけど今日は泣きたい。」
「泣きたい時は泣け。そしてまた笑うんだ。」
そう言うと幸音は思い切り泣き出した。
今まで堪えていた涙全てが枯れるまで彼女は泣き続けた。
そして翌朝を迎える。
流衣は浜辺に足を運ぶ。
水平線から太陽が昇り金色に光る。
その光は今日も町を朝焼け色に光らせる。
流衣は昇る太陽に決意した。
「俺は今日を生き明日を生きる。皆頑張っている。俺は逃げない。守ってみせる。」
そう朝日に誓った流衣。
彼の心は燃えていた。
もう失ってたまるか。
もう誰も泣かせない。
俺が笑顔にしてやるんだ。
そう誓った流衣だった。

続く

朝焼け色に光る町

2015年09月11日 03時45分19秒 | 小説
第28話 朝焼け色の再会

流衣と幸音は夜の公園で項垂れていた。
先程のことからの確信によりどうすべきか迷う。
「あいつがこの町にいるんだな。」
「そうだね。今何してるんだろうね。」
気を落とす2人。
遥が声を掛ける。
「あんたたちさ、どうしたの?あいつって誰?」
「瀧川龍輝。俺たちの親父だよ。」
「私会いたいよ。お父さんがいるなら会いたいよ。」
「あんたたちってお父さんの顔知らないのよね?」
「ああ。母さんだけが連絡を取っていたそうだ。」
「私も一緒。一度くらい顔を見たい。」
そう言い2人は落ち込む。
重い空気に包まれる。
「あんたたちも元気出しなさいよ。そのうち会えるわよ。」
「そうだな。親父に会ったら先ずはぶん殴ってやるよ。」
「流衣、そんなこと言わないの。」
「お前が言うなよ。」
そして翌日流衣はいつも通り学校に登校した。
いつものように教室でゲームをして時間を潰していた。
しばらくゲームに夢中になっていると教室のドアが開いた。
「おはよう。流衣君、元気?」
「昨日は心配したのよ。」
明恵と遥だった。
「ああ。肝心なこと聞く前に逃げられて手がかりゼロだったがな。」
「ごめんなさい。私が気を抜いたばかりに。」
遥は申し訳なさそうな顔をしていた。
「いいよ。気持ちの切り替えは出来たさ。それより満がいないな。」
「みっちゃんなら美術室だよ。」
「そうよ。だから来なさいよ。」
そう言い遥は流衣の手を引き美術室に連れて行く。
美術室に入れば幸音が先に座っていた。
「どういうことだよ。」
状況の分からない流衣は戸惑う。
「流衣さんたちが昨日見た人物の似顔絵を書きます。」
「似顔絵書けるのか?」
「うん。みっちゃんはそういうの得意なんだよ。」
「いいから満に任せなさいよ。」
こうして満は3人の証言を元に似顔絵を制作する。
そして出来上がり3人に見せた。
「すげー。似てるよな?」
「この人です。」
「やっぱあんたの腕いいわね。」
「とりあえず心当たりないか皆に聞いてみますので。」
「だったら俺たちも手伝うよ。」
するとそこに美術室のドアが開いた。
「先輩のためなら私も手伝います。」
「僕もです。協力させて下さい。」
光と剣だった。
2人の眼差しはとてもやる気に満ちていた。
「だったら私が生徒会長にお願いしてみます。きっと協力していただけますし。」
こうして満は翔子に頼みに出た。
「分かったわ。皆に聞いてみるわね。」
翔子は了承した。
「ありがとうございます。」
「あなたのお願いとあらば聞くわ。」
「そんなこと言って実は翔子は流衣君のためだよね?」
「もう違うわよ。」
「とりあえずお願いします。」
そして放課後を迎えた。
翔子は皆を生徒会室に呼び出した。
「皆、聞いて。有力な情報を手に入れたわ。」
すると皆真剣な表情になる。
「彼は5丁目のハイツに住む波多野という無職の青年。住所も分かったわ。」
「ありがとう。それさえ分かれば十分だ。」
「流衣、本当に行くの?」
「ああ。大事なキーマンだ。何か分かるかもしれない。」
「でも危険よ。」
翔子は忠告する。
「大丈夫だ。」
「だったら私も行くわ。あんた1人じゃ危険よ。」
遥はそう言うが流意は首を横に振る。
「俺1人でいい。皆を巻き込みたくない。」
そう言い流衣は生徒会室を後にした。
学校を出て波多野の家の前に来た。
するとそのタイミングで波多野が戻って来た。
「波多野!」
流衣を見て波多野は驚いて走り出す。
逃げようとするも転倒した。
流衣は波多野を起こし胸倉を掴む。
「瀧川とどこで知り合った!どういう関係だ!」
「知るかよ。」
「答えろ!」
そして答えを聞いた流衣は瀧川のいる場所へ向かった。
そこは小さな工場だった。
流衣は工場へと入って行く。
受付に行き聞いてみた。
「瀧川龍輝っていますか?」
そして対面の時は来た。
応接室に1人の痩せ男が入って来た。
「お待たせしました。私が瀧川です。」
「親父だよな。」
「流衣!」
「親父、何で俺たちを捨てたんだよ。何で母さんの最後を見届けなかったんだよ。」
「すまない。」
「ふざけるなよ。俺はどれだけ…どれだけ…」
「とりあえず場所を変えよう。」
こうして瀧川は早退し流衣と河原に場所を移した。
「すまない。私にはもうお前たちに見せる顔がないんだ。」
「何がだよ!捨てられた身になれよ!あんたが産んだ子だろうが!親だろうが!」
「私はもう親ではない。もう親権も資格も何1つ持っていない。」
その言葉に流衣は激怒した。
瀧川の顔に右の鉄拳を入れる。
瀧川は倒れた。
「ふざけんなよ!俺の17年の思いを分かれよ!親のいない辛さを!」
流衣は泣いていた。
拳を握り締め震え涙を流しながら立っている。
「本当に申し訳ない。あの金はお前たちへのせめての気持ちだ。」
「俺も幸音も昇も苦労したんだよ。分かったか?」
「ああ。とても重い拳だった。」
「家に来いよ。幸音に顔見せてやれよ。あいつも会いたがってたから。」
こうして流衣は瀧川を連れ自宅に帰った。
そして幸音も念願の対面を果たす。
「お父さん!」
泣きながら父に抱きつく娘。
その父親も涙で娘を抱き締めていた。
「すまない。幸音、お前に何もしてやれなくて。」
「お父さん、会いたかったよ。寂しかったよ。」
「やっと親子会えたんだ。今日は何か食べに行こう。」
瀧川はそう言い3人でシャトーに足を運んだ。
たくさんのご馳走が並び口にする。
「再会の記念とはさぞ嬉しいことでしょう。本日は親子水入らずをお楽しみで。」
「父として恥ずかしいですがいつも2人がお世話になっております。」
「こちらこそお2人に色々と手伝っていただいておりますので。」
「お前たちはこんないいソムリエ先生が大家さんで幸せだな。」
「ああ。時々飯食わせてもらってるぜ。」
「大家さんの料理すごく美味しいんだよ。」
するとそこに店のドアが開いた。
「ただいま。」
シルヴィだった。
「先生、おかえりなさい。」
「あら?朝日君、そちらの方は?」
「俺らの親父っすよ。」
「お父様でしたか。私は彼の担任のシルヴィ城です。」
「子供たちがお世話になっております。」
「本日は当店にお越しいただき嬉しい限りです。夫の料理は最高でしょう?」
「はい。」
「親父、今日は色々語り合おうな。」
「私も色々話したい。」
「男同士の熱い話をするのが先な。」
「ダメ。私が先だよ。」
「だったら3人で話そう。今までの時間を埋めるくらいに。」
こうして3人は夜が明けるまで色々と話した。
今までの楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと、辛いことなど全て語った。
今日は2人がやっと父と一緒に笑ったり泣いたりすることが出来た。
そんなことがあった1日であった。
親子水入らずの夜はとても明るく笑顔の月が見守っていた。
こうして夜明けの頃に3人は話し疲れて眠っていた。

続く

朝焼け色に光る町

2015年09月04日 03時38分37秒 | 小説
第27話 朝焼け色の真実

流衣は今日も浜辺に来ていた。
夜明け前から缶コーヒー片手に佇む。
じっと水平線の向こう側を見つめている。
すると暗黒の夜空が次第に明るくなる。
そして水平線の先から眩しい太陽が昇る。
太陽は今日も町を朝焼け色に光らせる。
こうして暁町に今日も1日は訪れる。
流衣は太陽を見て思った。
俺もこの町に来て5ヶ月だ。
親父のことなんてどうでもよくなったな。
そう思う流衣だった。
その頃剣は朝から稽古部屋に正座していた。
刃を噛み締め自分の失態を悔いていた。
刀を片手に刃を自分の方に向けている。
彼は今にでも切腹しようとしているように見える。
するとそこに扉が開いた。
「宗太郎、何をしている?」
「父上!」
そこに入ってきた大柄な男は剣の父宗男だった。
「父上、僕は守るべき物を守れなかった。故に例の情報の漏洩に。」
「腹を切ることだけが償いか?」
「それで許されるならば本望です。」
「違うであろう。そこから立ち上がり生きるのも償いだ。」
「生き恥を晒したくないのです。」
「お前はそうやって逃げるも彼はどうだ?彼は生きながら戦う。」
「僕はどうすれば?」
「今は生きろ。生きて共に戦え。すれば答えは自ずと分かる。」
そう言い宗男はその場を後にした。
その言葉に剣は涙を零しながら刀を鞘に納めた。
そして何も知らない流衣は今日も登校するや否や教室でゲームをしていた。
その様子をシルヴィがガラス越しに見つめていた。
それから時間は経ち昼休みを迎える。
流衣は屋上で皆と食事をしていた。
何気ない会話で食事が進む。
「そういえば昨日のゲーム特集番組見た?」
明恵が流衣に聞く。
「ああ。新作の発表あったよな。」
「あんたは四六時中ゲームだもんね。」
遥がそう言うと幸音がそうそうと頷く。
「お兄ちゃんってば遅くまでゲームして騒ぐんですよ。」
「流衣さんってば私に夜中でもゲームしようって送って来ますからね。」
幸音と満も困っているようだ。
「うるせぇな。ゲームなくして俺はない。」
「遅くまでゲーム。生徒会長として見過ごせないわね。」
翔子は鍛え直してやろうと言わんばかりの表情で流衣を見つめる。
「翔子は厳しくされて育ったもんね。ゲーム禁止されたり。」
「沙菜、余計よ。」
「別にいいじゃないですか。私も夜中に誘い来ても眠いの我慢してやってますよ。」
光は流衣の肩を持ちに出た。
「あんたって本当流衣ラブなのね。」
遥はそう言い呆れ気味だった。
「光、お前は最高だ。もうお前しかいない。」
流衣の言葉に光は胸がキュンとなる。
心の中で言った。
「朝日先輩に褒められた~」
そして光は自分の妄想の世界に入った。
「これからは~朝日先輩とあんなことこんなことを~」
「もしも~し」
幸音が光の前で手を振る。
「でも流衣さんのゲーム好きも一種の武器でいいと思いますよ。」
満がそう言うと皆も頷く。
「そうそう。流衣君って機械関係詳しいからこの間もパソコン直してもらったし。」
「じゃあ沙菜先輩も今度壊れたら直してもらっちゃお。」
「この調子じゃ俺1人に予約が込みそうだな。」
楽しそうにゲーム関係の話で盛り上がる皆。
しかしそんな皆と別に剣は無表情だった。
下を向いて考え込んでいた。
自分は今どうすべきだろうと考える。
朝父に言われた言葉を思い返しながら俯いていた。
そんな時だった。
剣が顔を上げると屋上の入り口のドアが開いていた。
そこを見ると中からシルヴィが剣に向かい手招きをしていた。
剣は立ち上がりその方へと向かった。
そして2人は理事長室に来た。
2人は理事長に向かい合い応接用ソファーに座る。
「あなたの粗相は全て知っております。あの書類を目にされたそうで。」
「申し訳ありません。悪いと知りつつ。」
「あなたの行為は私たちへの信用を落とすだけでなく彼を傷つける行為に当たる。」
「存じております。処分は何でも受けます。ですがそうまでしても知りたかった。」
「あなたは彼の担任であり2人の親代わりなのは分かりますが。」
「私はその両方失格です。」
「この秘密は学園内で我々2人の秘密でしたがあなたが介入されたことで誤算が発生。」
「僕らも2人だけの秘密で通すはずでしたよ。」
「ですのであなたには2ヶ月の減給処分を下します。不服は受け付けません。」
「それで済むならと思います。」
「しかしこれを第三者に漏洩または彼本人に話した時はお分かりですね。」
そして時刻は過ぎ放課後を迎える。
教室を出る生徒をシルヴィは笑顔で見送る。
しかし流衣を見送る時は違った。
険しい表情で彼を見つめていた。
何も気付いていない流衣はいつも通りに学校を後にした。
学校を出ていつもの通学路を幸音と2人で歩く。
「そういえば2人で暮らして5ヶ月だね。」
「ああ。お前も日に日に家事の技能上がってるよ。」
「私ねお兄ちゃんのことに時間使うの好きだよ。だってやっと一緒に暮らせたし。」
「お前も結婚したらいい嫁になるよ。そのスタイルに家事出来て皆欲しがるよ。」
「そういえば大家さん夫婦は旦那さんが家事してるよね。」
「今時普通の逆パターンだな。」
「お兄ちゃん、ずっと一緒にいようね。」
「そうだな。」
こうして2人は気付くと家のビルの前にいた。
シャトーの前では我久斗が店の前を掃除していた。
「帰ったぜ。」
「ただいま。」
挨拶をされ我久斗も笑顔で振り向く。
「おかえりなさいませ。」
そして2人は階段を上がる。
2人が階段を上がり自分たちの家の階に来た時だった。
自宅ポストに何かを入れている男がいた。
星のロゴの黒いニット帽にサングラスをしている。
どう見ても不審に思えた。
幸音は怖がり流衣の後ろに隠れる。
流衣は堂々と男の前に出る。
「何してる!」
すると男は慌てて走り出す。
流衣を突き飛ばし階段を駆け下りる。
流衣も立ち上がり走って追いかけた。
螺旋階段をぐるぐると回って降りる。
すると階段の真下に遥がいた。
「遥、そいつを捕まえてくれ!」
流衣は叫んだ。
すると男はナイフを取り出し遥に襲い掛かる。
「そこを退け!」
遥に退かぬなら殺すぞという感じだった。
しかし遥が男の腕を掴み一本背負いを決めた。
そして十字固めを決める。
「痛ててて!ギブギブ!」
「お前、誰だ!何故家の前にいた。」
流衣はそう言い男の帽子とサングラスを外す。
「知るかよ。俺は頼まれて来たんだ。」
するとそこに幸音が降りて来た。
「これ見て。」
封筒を開けると100万円の札束が入っていた。
生活費に使いなさいと書かれた手紙が同封されていた。
「俺は金で雇われたんだ。変装グッズ渡されて言われた通りにしたんだ。瀧川って男に。」
その時流衣と幸音は瀧川という言葉に驚いた表情になった。
「金を届けに来たなら何故ナイフが?」
「朝日と聞いて怖くなったんだ。」
流衣はこの時やつがこの町にいると確信した。

続く