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朝焼け色に光る町

2015年05月18日 16時51分07秒 | 小説
第12話 赤色の約束

流衣は過去を振り返っていた。
あれは2年前だった。
流衣が町を旅立つ日の朝だ。
3月の冷たい雨の降る朝だった。
流衣は剣を呼び出していた。
剣と朝の駅で待ち合わせ合流した。
「剣、皆をよろしくな。」
「はい。」
「俺は行く。この町を去る。皆には俺の言った通りにしてろ。
詳しく聞かれたら詳しくは知らないと答えろ。」
「分かりました。お元気で。」
そう言われ流衣は剣に背を向け駅の中に向かった。
振り向くことなく流衣は歩いて行く。
遠ざかる背中を剣は悲しそうに見送っていた。
そして今に至る。
流衣は朝の教室で1人窓から空を見上げ佇む。
流衣の目は悲しそうだった。
いつも時間潰しにするゲームも今日は気が進まない。
「流衣、来てたのね。」
振り返ると遥が立っていた。
「ああ。一番乗りさ。」
「ねぇあんたさ私との約束覚えてる?中学の時した約束。」
「約束何だっけ?」
「遠くには行かないでって約束。」
「そんな約束したな。だが俺は一度町を出たがな。まぁ今となりゃ
笑い話だがな。」
すると遥は流衣に激怒した。
ブチギレて流衣の顔面に回し蹴りを入れた。
「ぐきゃ!」
流衣は倒れるも起き上がる。
「何すんだよ!」
「あんた許さないわ!」
こうして流衣は遥に朝からボコボコにされた。
ボコボコにされ1人廊下で伸びていた。
するとそこにシルヴィが通りかかった。
「朝日君、もうすぐホームルームよ。教室に入りましょう。」
「っう…」
その後流衣は自力で立ち上がり教室に入った。
そして休み時間を迎えた。
流衣は遥の前に正座させられた。
遥は足を組み正座する流衣を見下ろす。
流衣は威圧感を感じる中で全てを明恵と満に話した。
「それは流衣君が悪いよ。私たちの心配を笑い話なんて。」
「すみませんでした。」
「まぁ流衣さんも反省してますし多めに見ませんか。」
「次言ったら分かるわよね?」
遥の目は殺気立っていた。
流衣は怯えながら頷いた。
そして昼休み流衣は剣を中庭に呼び出した。
しかしそこには光もいた。
流衣は中庭のテーブルでコーヒーを飲みながら将棋を打ち話をする。
「夕日先輩との約束ですか。」
「ああ。あの約束には続きがあった気がする。」
「私は中学が違いましたので分かりませんが青春してたんですね。」
「ああ。俺と明恵、遥に剣ともう1人凛香ってのがいたがな。」
「その凛香先輩が亡くなり朝日先輩は鬱になったのです。」
「ああ。あれから町を離れた。おっ!王手。」
流衣は剣から王将を取った。
「負けました。」
「将棋は私にはルール難しいですね。」
「まぁ遥との約束の続きは本人には聞けないさ。」
「でしょうね。僕もその約束を忘れてましたのでね。」
するとそこに3人を呼ぶ声がした。
「あんたたちさ一緒に食事しない。」
噂をすれば遥がやって来た。
「別にいいよ。今日はこの2人と食ったし。」
「そう。てかあんたたち何話してたの?あんたたちが将棋してる時って
悩み事相談よね?何話しての言いなさい。」
「何でもないよ!つまらない話です!」
「2人がねはるちんとの約束の話の続きのこと話してたよ。」
突然沙菜が現われ全てを話し出した。
「沙菜先輩、何喋ってんすか!」
流衣は慌てて沙菜の口を塞ぐ。
「何でもないですよ。ねぇ夕日先輩。」
剣は苦笑いで誤魔化す。
「もう遅いわよ。約束の話の続きって何かしら?」
「もう言うよ!今朝のだよ。」
「あれね。思い出したのね。」
「いや忘れた。」
「僕もです。」
「剣、あんたまで忘れたのね。一緒にいたわよね。」
「でももういいではありませんか。」
「私の約束がもういい?潰す!」
「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
こうして剣は遥にボコボコに倒された。
そして次は流衣に怒りの矛先が向けられた。
遥が流衣に怒りを露にし鬼の形相で向かって来た。
「待って!何で俺まで!」
そして遥は流衣の股を蹴り上げた。
「ぐぎゃ!」
流衣は蹲る。
「最低!」
遥は苛立って早足で去って行った。
遥の去った後流衣と剣は中庭で気絶していた。
その様子を2階の窓越しに翔子が見ていた。
「男ってバカね。」
そして放課後流衣は公園のブランコで剣と一緒に嘆いていた。
2人はボロボロになって落ち込む。
「なぁ何で俺らこうなるんだろうな。」
「夕日先輩とても怒ってましたよ。」
振り返ること1時間前だった。
2人は遥を追いかけ校門を出た所だった。
「遥、マジすまん。許してくれ!」
流衣は剣と共に遥の前で土下座する。
「知らないわよ。」
「忘れてすまない。もう教えてくれ。」
「僕もです。ですが忘れるのは仕方ないことです。」
「お前は何開き直ってんだ!」
すると遥は泣き出した。
「私の大切だった約束を…2人を思ってた約束を…」
「泣くな。たかが約束くらいで。」
「許さない!」
こうして2人はまたもボコボコにされた。
そして今に至る。
「何であいつってあんなDV女なんだろうな。」
「それでもあなたには大切な仲間でしょう。仲間ノートを中学の時作ってから
俺たちはずっと仲間だ。何があっても仲間だって約束を書いたのは誰です?」
「仲間ノート?あ!それだ!」
流衣は突然立ち上がり閃いた。
そして剣と猛ダッシュで自宅に向かう。
すると店の回転準備をしていた我久斗2人の前に現われた。
しかし気付かずに2人は走って行く。
「朝日様、おかえりなさいま…」
我久斗はあれ?という顔をしていた。
2人は階段を駆け上がり家のドアを開け流衣の部屋に駆け込んだ。
2人はクローゼットの中を必死で漁る。
「お兄ちゃん、剣君、コーヒー淹れたから飲む?」
「今それどころじゃねぇ!」
「お気持ちだけ受け取ります!」
そしてクローゼットを漁ること20分が過ぎた。
2人はついに目当ての物を見つけた。
「これだ!」
2人同時に手に取り叫ぶ。
そしてノートを開いた。
それから1時間後2人は河川敷に足を運んだ。
そこには夕日を背に落ち込む遥がいた。
流衣は勇気を振り絞り声を掛ける。
「遥!」
すると呼び掛けに振り向いた。
「何よ。」
「約束思い出したぜ。」
「そして朝日先輩はその約束を果たしました。」
「ああ。俺はこの町に戻って来た!だからお前との約束は守ったぞ!」
「何よ。思い出したのね。ありがとう。」
「遠くに行っても戻ってくるのが約束だろ。」
流衣がそう云うと3人はその時を思い出した。
そこは中学時代の夕焼けに包まれた放課後の教室だった。
顔を真っ赤にした遥が重い口を開く。
「ねぇ約束して。遠くには行かないで。行っても戻って来て。」
そして今に至る。
「俺たちはずっといるぜ。もうどこにも行かない。この町で生きる。」
流衣そう言いその後初夏の爽やかな風が吹く。
その風は3人をやさしく包む。
遥と交わした赤色の約束はこうして果たされた。

続く

朝焼け色に光る町

2015年05月17日 13時48分49秒 | 小説
第11話 あの日色の忘れ物

流衣は浜辺に立っていた。
朝日を見るために今日もこの場所に来た。
朝日が水平線から顔を出し町は今日も光る。
「先輩、やはりここに来られておりましたか。」
振り向くとそこには剣が立っていた。
「ああ。戻ってからたまに来るんだよ。」
「先輩が消えた町は変わった。治安も悪くなり皆あなたに求めていた希望も
失った。足は洗えど僕らはこの町では。」
「過去が何だってんだ!」
流衣の言葉に剣は一瞬驚く。
「僕らはこの町で生きていて何の意味があるんだか。」
「もう俺は全て償った。今は真面目に生きている。過去に囚われるな。」
「そうですね。では僕とも昔みたいにお話していただけますか?」
「ああ。無視して悪かった。」
2人は手を取り合い握手し昇る朝日に男同士の固い絆を約束した。
そしていつも通り流衣は学校に登校した。
教室でカバンを下ろしいつものようにゲームで時間を潰す。
早く着すぎて暇でゲームに熱中する。
気づけば他のクラスメイトたちが教室に入って来ていた。
そして流衣を呼ぶ声がした。
「流衣君、おはよう。」
明恵だった。
「流衣、今日皆でご飯食べるわよ。もちろん一緒するわよね?」
「皆でお昼を楽しく過ごしましょうね。」
遥と満が流衣に食事を誘う。
「だったら光や剣も混ぜてやろうぜ。」
「もちろんだよ。」
そしてその直後予鈴がなった。
シルヴィが教室に入って来た。
「皆、ホームルームよ。座って。」
こうして今日も学園に1日が訪れた。
そして時刻は昼休みを迎えた。
流衣たちは屋上に出てシートを広げる。
「ねぇお兄ちゃん、皆でお弁当食べるの久しぶりだね。」
幸音は久々のことにウキウキする。
「そうだな。こいつらが初めからいるのは初めてだがな。」
そこには光と剣の姿があった。
「私朝日先輩から誘って下さったのは初めてです。」
「僕も初めて先輩とランチが出来るんです。嬉しい限りです。」
2人は感動の涙が溢れ出ていた。
「そうよね。剣は1個下で中学は一緒になれなかったわよね。」
「剣君の分もありますから食べて下さいね。」
遥と満2人を受け入れていた。
「あら?私たちを忘れているわよ。」
「ハロー。一緒いいよね?」
翔子と沙菜も入ろうとやって来た。
「会長に沙菜先輩!」
「私が呼んだんだよ。」
明恵が計画したことならそうかと流衣は納得した。
こうして全員集まり楽しい食事は始まった。
それぞれの弁当のおかずを交換しながら食べる。
皆は光の弁当に箸を付けた。
「あ~光の作ったの私のより美味しいじゃん。」
「本当ね。綾瀬さんのお弁当は美味しいわ。」
幸音と翔子が絶賛する。
「流衣も剣もあんたたちも今度料理しなさいよ。」
「まぁ俺らは男だしな。」
「はい。料理は女性の仕事ですから。」
「でもでも我久斗さん料理するよね。」
沙菜は2人にそう突き付けた。
「包丁なんて怖くて握れねぇよ。」
「僕は包丁よりも刀派ですから。」
「そういえば剣君の刀で今度大根切ってみようよ。漫画みたいに。」
明恵は突如そう言うと剣は立ち上がって刀を守ろうとする。
「ダメです。武士の魂である剣をそんなことに。」
「武士ね。剣君もカッコいいわね。」
翔子に褒められ剣は照れ臭そうに笑う。
「翔子はそういう男の子好きなんだよ。強く逞しい人が。」
「もう沙菜ったら。」
「流衣君が戻って来たこと今町じゃ有名なんだよ。知ってる?」
明恵はそういうと流衣は少し驚いた顔をする。
「そうなのか。まぁ有名人だったしな。」
「昔のあんたより今がいいわよ。真面目に学校来て授業受けてる。剣もよ。」
「これからは皆一緒ですから辛い時は仰って下さいね。」
遥と満も優しく流衣と剣を受け入れる。
こうして楽しい午後のランチタイムを送った流衣たちだった。
その後授業に戻り流衣は暇そうに授業を聞いていた。
さっきの楽しい時間があっという間だった。
いつもの退屈な授業を受けつまらなさそうな顔をしていた。
そして放課後を迎えた。
流衣はいつも通り校門を出て行く。
今日は1人で帰るんだと思っていると流衣を呼び止める声がした。
「朝日先輩、待ってください。」
振り向くと剣がいた。
流衣を追いかけて走って来ていた。
「どうした?」
「たまには一緒に町でも歩こうかと。」
こうして流衣は剣と町を歩くことにした。
「この町も2年前と何1つ変わってないな。」
「はい。変わらずにあなたの帰りを待っていたのでしょうね。」
「俺との約束守ってくれて本当にありがとうな。」
「あなたは僕の主です。約束は死んでも守ります。破った時は腹を切る覚悟でいました。」
「凛香には悪いことしたよな。法事行かないでこの町を去って。」
「ですが戻って来たことは嬉しかったと思いますよ。それにあの時のあなたでは。」
「そうだよな。でも2年間変わらないまま待っていて受け入れてくれて嬉しいよ。」
「先輩のいなくなった空白の2年は僕も長く感じました。」
「皆待っていてくれた。そして新たな出会いもあった。俺は今が好きだ。」
「僕もです。今まで暗い顔をして生きていたあなたがここに来て笑顔に見える。僕の
大切な人を笑顔にしてくれたこの町がむしろ好きに感じた。今日からここは僕らの生きる
町であり守るべき場所です。」
「俺もだ。この朝日の昇る町を守って行く。俺たちの使命だよな。」
「はい。共に守りましょう。」
2人はそう誓い立ち止まり目を見詰め合った。
2人の間に強い思いが生まれた。
そしてそこに2人を呼ぶ声がした。
「お兄ちゃん!剣君!」
前から幸音が走って来た。
「どうした?」
「あのね。大家さんが今日皆でバーベキューしないかってさ。」
「もちろん行くぜ。」
「僕も行きます。」
こうして全員集まりバーベキューは始まった。
河川敷に足を運ぶ一同。
肉の焼ける香ばしい香りが辺りに広がる。
「では皆様、乾杯!」
我久斗はワイングラスを掲げ皆もジュースの入ったグラスを掲げた。
「いいな~先生たちはお酒飲めて~」
沙菜は羨ましそうにワインを飲む城夫妻を見る。
「まぁあと数年よ。私たちも飲めるのは。」
翔子は沙菜にそう言い聞かせた。
「皆さん、私が焼きますから食べたいの言って下さい。」
光はメイドとして頑張ろうとしている。
「じゃあ俺はロースで。」
「私は豚トロ。」
「私はタン。」
「僕はレバーで。」
「はーい。」
流衣は思い返していた。
今が幸せなら過去はどうでもいい。
俺の幸せをこれからは守って行くんだ。
大好きなこの町で皆と毎日を送る。
朝起きて朝日を見て学校に行って帰って寝る平凡な日々を送ろう。
やっとみつけた本当の居場所はここなんだ
俺はそこ帰って来て大好きな皆がいるんだと思った。
こうしてバーベキューは盛り上がり今日は皆にとって忘れられない1日になった。
学園生活の楽しい1日となり皆笑顔が溢れていた。
その笑顔を夕日が優しく照らすのだった。

続く

朝焼け色に光る町

2015年05月17日 03時49分50秒 | 小説
第11話 初恋色シンフォニー

流衣は夢を見ていた。
電車に乗り町を離れる夢だった。
遠ざかる町を背に電車は走る。
雨の中電車で町を去る流衣。
桜の木はまだ蕾で花の咲く前の旅立ちだった。
流衣の目は全てを決め覚悟した目だった。
電車に揺られ淡い思い出も共に揺れていた。
そして流衣は目を覚ました。
もう朝か。
そう思い起き上がる。
カーテンを開けると今日も町は朝焼け色に光る。
流衣は制服に着替え食事を終え学校に向かった。
教室に入りカバンを下ろす。
いつも通りスマホでゲームをしている。
そんな中流衣を呼ぶ声がした。
「朝日先輩、おはようございます。」
光だった。
「どうした?」
「あのですね‥‥今日お昼一緒して下さい!」
光は勇気を振り絞り流衣に誘いの手を差し出す。
光はドキドキしていた。
もしダメだったらどうしょう。
不安が過ぎる。
そして流衣が光の手を握った。
「いいよ。一緒に飯食おうぜ。」
こうして昼休みを迎えた。
流衣は弁当を持って教室を出ようとする。
そこを明恵が呼び掛けた。
「流衣君、お昼一緒に?」
「悪い。先約がある。」
そう言い流衣は駆け出した。
「あいつ先約って誰なのよ。」
「ですが先約があるなら仕方ありません。」
遥と満は少しがっかりしていた。
彼が断るなんて珍しい。
そう思う明恵たちだった。
そして流衣は中庭に出た。
そこには光がベンチに座り待っていた。
「先輩、来て下さったんですね。」
「約束は守るさ。」
「私お弁当作って来たんです。食べて下さい。」
光が弁当箱を開ける。
中身はハンバーグだった。
「先輩はハンバーグ好きですよね。早起きして作りました。」
「じゃあありがたくいただくよ。」
そう言い流衣は箸を手に取る。
ハンバーグを掴み口に運ぶ。
「美味しいですか?」
「ああ。幸音のより美味いよ。」
「ありがとうございます。あとは先輩はコーヒーもお好きですよね?
私コーヒーも淹れて来ましたから。」
「ありがとうな。そういう所好きだぜ。」
流衣の言葉に光は顔を真っ赤にした。
頭の中が熱くなる。
好きの言葉が熱く彼女を燃やす。
光も流衣の言葉に心を燃やされ次の手に出る。
「朝日先輩、あと今日の放課後…私とお出掛けしていただけますか?」
「いいよ。暇してたし。」
そして放課後を迎える。
流衣が校門を出ると光が待っていた。
「朝日先輩、行きましょう。」
こうして2人は歩き出した。
「先輩、手くらい繋いで下さい。」
「いいのか?お前彼氏とかいないのか?」
「はい。いたとしても私の初恋の人は朝日先輩だから一度
手繋ぎたかったんです。」
「え!俺なんかが初恋の?」
「はい。女性の味方ですから。だからこの町から先輩が
いなくなって皆寂しがってました。あれから治安も悪くなって
剣君も足洗って何があったか教えていただけず。」
「まぁ諸事情ってやつさ。」
「でも大好きな先輩が戻って来て今が一番幸せです。先輩、
これからどこ行きます?」
「そうだな。カフェとか。」
こうして2人は喫茶店に足を運んだ。
レトロな風合い個人商店だった。
明治時代を感じる店内にクラシックが流れる。
「いいですね。この雰囲気にこの音楽。」
「こういうとこ好きだからな。」
「先輩って私と同じで今が一番幸せでしょ?」
「まぁな。お前もさ俺の周りこそこそしないで最初に言ったように
堂々と来いよ。いつでも受け入れてやるからさ。」
「でも…恥ずかしいです…」
「こうやって俺に積極的になれただろ。今日みたいにしてりゃいいんだよ。
それは剣にも伝えとけよ。」
「はい。私今の言葉で先輩がもっと好きになりました。」
流衣は少し安心した。
自分を好きでいてくれる人が増えたんだなと思った。
「あら?今日はメイドさんとデートかしら?」
「もうラブラブなんだから~」
翔子と沙菜だった。
「何でいるんすか!」
「いいじゃない。女の子だもん喫茶店が好きなの。」
「気分害したらごめんね。あとラブラブでも変なことはしないでね~」
沙菜の言葉で流衣は立ち上がる。
コーヒーを一気に飲み干し光の腕を引っ張る。
「行くぞ!」
「ちょっと先輩!」
流衣は走ってレジに向かい会計を済まし慌てて店を出た。
その姿を翔子と沙菜は笑って見ていた。
流衣は店から半径100mの場所まで光を引っ張り走って出た。
流衣は汗だくで息が切れていた。
「あの2人は本当に面倒だからな。」
「大丈夫ですか?」
「ああ。気を取り直して行こうか。」
「だったら私の家に来て下さい。」
こうして流衣は光の家に向かった。
そこは町で一番大きなタワーマンションだった。
「ここが?」
「はい。」
そして中入りエレベーターのボタンを光が押す。
押した階は最上階であることに流衣は更に驚いた。
そして光の家に上がった。
広い間取りのリビングでそこからは町が一望出来る。
「すげーな。流石は社長令嬢の自宅。」
「先輩、私のお部屋来てみますか?」
光に言われるがままに光の部屋に入る流衣。
そこはとても綺麗に整頓された部屋でたくさんのぬいぐるみが並んでいた。
「私部屋に男の子入れたの先輩が初めてです。初めて入れるのは朝日先輩だと
決めてましたから。」
「すげー一途だな。願い叶って良かったな。」
「はい。毎日神社や教会でお願いしてますから。」
「あり意味怖いな。」
「朝日先輩、今日のために私昨日ゲーム買ったんです。先輩好きですよね?」
光は袋からゲーム機と大量のソフトを出し流衣に見せる。
「ああ。だがこのためにか?」
「はい。遠慮なくやって下さい。」
こうして2人は2時間ほどゲームに時間を費やす。
レーシングゲームに格闘技、野球などを楽しんだ。
ゲームが終わると既に日は沈んでいた。
マンションの入り口まで光は見送る。
「じゃあまたね。」
「ありがとうな。」
こうして流衣はマンションを後にした。
するとその直後だった。
「朝日先輩!」
剣が目の前に立ちふさがった。
「何だよ。」
「綾瀬さんとデートですか?」
「まぁそうだな。」
「綾瀬さんめ!よくも抜け駆けを!」
剣は嫉妬しハンカチを噛む。
皆驚いて見ていた。
何だこの空気は!
流衣は痛い視線に晒される。
流衣も恥ずかしくなり咄嗟の言葉を口にした。
「剣、お前とも今度遊んでやるから今日は帰れ。」
「はい。」
剣は流衣の命令をあっさり聞き去って行った。
しかし周りの視線は痛かった。
そんな痛い視線の中を流衣は苦笑いで歩いて帰って行く。
バーシャトーで流衣は愚痴を零す。
「俺の周りって何で変わり者多いかな?あの2人も光も剣もさ~」
「それは朝日様も大変でございましたね。」
我久斗は流衣の愚痴に付き合わされていた。
「先生、ごめんなさいね。お兄ちゃんが旦那さんに。」
「いいのよ。あの人お客さんの愚痴聞くの慣れてるから。」
幸音の言葉にシルヴィは優しく返す。
幸音は流衣の苦労も分かるが悲しい話はやめて欲しい。
愚痴を零さない前向きないつもの兄でいて欲しいと思った。
幸音はこんな流衣を初めて見たのだった。
そして流衣は今日はどんな日だったかと流衣は感じる。
光に振り回されて何だか疲れていた。
しかし楽しくもあったと感じる。
流衣には楽しかったようで疲れた1日だった。

続く

朝焼け色に光る町

2015年05月16日 21時41分48秒 | 小説
第10話 煌き色レクイエム

流衣は夢を見ていた。
暗い牢獄1人泣きながらで蹲る。
窓を見上げ外の世界を夢見ていた。
錆びた鉄格子の掛かる窓から朝日の光が差し込む。
流衣の涙が朝日に煌いた。
そして流衣は目を覚ました。
起き上がりカーテンを開く。
すると既に太陽が昇っていた。
町が朝焼け色に光っている。
流衣はパジャマから制服に着替えた。
その後朝食を食べ終え学校へと向かう。
いつもの通学路を幸音と2人で歩く。
「もう学校入って1ヶ月過ぎたね。」
「そうだな。お前は学校は楽しいか?」
「うん。学校も好きになったよ。」
「お前がそうなら俺も幸せだよ。」
流衣は安心し幸音を見て微笑んだ。
そして2人は学校に到着し流衣は教室に入った。
「おはよう。」
入るや否や明恵が流衣を出迎えた。
「流衣君、もう暑くなるらしいね。」
「もう5月も中頃ね。早いわね。」
「流衣さんと出会って1ヶ月ですね。」
明恵、遙、満はこの1ヵ月をあっという間だったというようだ。
「俺も思うよ。こっち帰って来て学校入って幸音と暮らして皆と
出会って1ヶ月だなって。」
「楽しい時間は早いよね。流衣君も楽しくてそうじゃない?」
「そうだな。今が幸せさ。今日はあいつに報告しに行くよ。」
そして放課後を迎えた。
流衣は1人で学校を出た。
いつもの町を見ながら音楽を聞き歩く。
変わらない町を守りたい。
朝焼け色に光るこの町を守りたい。
流衣はそう思いながら足を運んだ場所は霊園だった。
凛香の墓石の前に立った。
「また来たぜ。俺は今一番に幸せだ。お前のいないこの世界を
どう生きようか迷ってたが皆に支えられ俺は生きている。
初めてだよ。お前が死んでからこの町が好きになったのは。ありがとうな。」
するとそこに流衣を呼ぶ声がした。
「朝日先輩。」
振り向くとそこにいたのは剣だった。
「お前も来てたのか。」
「ええ。あなたも僕と同じですか。」
「こいつに今の幸せな俺の顔を見せてやりたくてな。」
「僕もあなたとの約束は守りました。誰にも口外はしておりません。」
「約束守ってくれたんだな。」
するとそこに乱入者が現れた。
「何の秘密なの?」
沙菜だった。
「沙菜先輩、何でここに!」
2人は驚き取り乱す。
「私のおじいちゃんのお墓参りだよ。」
「先輩のじいさんの?」
「うん。この間翔子から聞いただろうけど私あの日ここにいたんだ。」
「やっと謎が解けたような。」
「ねぇ流衣君、明日土曜だしちょっと付き合って。ね!」
「先輩、いかがなさいますか?」
「私と2人きりじゃ嫌?」
沙菜は流衣の腕を掴み上目遣いで言う。
流石の流衣も顔が真っ赤になる。
「嫌じゃないです。」
「じゃあ決定。剣君はお留守番で。」
そう言うと沙菜は流衣の腕を引っ張り走り出した。
そして剣はそれを嫉妬しながら見送るのだった。
「あの女め!キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
剣はハンカチを噛み締める。
「私もですよ。許せません。」
墓石の裏に隠れていた光も現れ2人は嫉妬に火を付けていた。
そして翌日流衣は待ち合わせの公園に着いた。
1人缶コーヒーを飲み流衣は待っていた。
あの人一体何したいんだろうな。
そう思いながら待っていた。
「お待たせ。」
するとそこに沙菜がやって来た。
「遅かったっすね。」
「ちょっとね。もう行こう。」
こうして2人はバスに乗り山の中まで来た。
バスで山道を1時間半走る。
ガタガタ道を走り流衣は肩が凝っていた。
降りると同時に肩を回す。
「こんなとこに連れ込んで何するんすか?」
「もうすぐだよ。」
そう言い歩くこと30分。
着いたのは山の中だった。
「今年も筍が出来たし一緒に掘ろう。」
「筍ですか。まぁ俺も好きだしな。」
「じゃあ頑張ろう。」
こうして2人は作業に入った。
流衣はスコップで筍の根元を掘っていた。
「1本掘るのに苦労だな。」
「そうだね。でも苦労した分筍は美味しいよ。」
「ここって先輩の私有地っすか?」
「そうだね。おじいちゃんの裏山で今はお父さんが所有してるけど。」
「凄いっすね。筍の取れる山持ってるなんて。」
「この辺りじゃ普通だよ。」
「確かに町のほうよりも土地はありますよね。」
「そういうこと。じゃあ続き頑張ろう。」
そして作業すること2時間休憩を迎えた。
「お疲れ。お弁当食べよう。」
そう言われ2人はシートを広げる。
沙菜の作った弁当のお重が出され開かれる。
「さぁ召し上がれ。」
そこには豪華な手料理が並ぶ。
「全部先輩が作ったんすか?」
「うん。早起きしたよ。」
「じゃあいただきます。」
流衣は箸を取り先ずは卵焼きを口にした。
「どんどん食べてね。」
こうして気付けばお重は空になっていた。
「ごちそう様。美味かった~」
「ねぇ流衣君、私ねここ何だか落ち着くの。木漏れ日に照らされながら送る
この時間が好き。おじいちゃんの残してくれたこの場所を大切にしたい。」
「先輩のその気持天国のじいさんが喜んでますよ。」
「そうだね。筍もそろそろ溜まったし次の工程に移ろうか。」
こうして2人は裏山を出て民家に入る。
民家の庭で2人は筍を洗う。
「ここが先輩のじいさんの家っすよね。」
「うん。夏は避暑地になるからね。他にも今の季節は新緑に秋は紅葉、
冬は雪景色、春は桜。四季を楽しめるんだよ。」
「いいですね。確かに緑綺麗です。」
「でしょ。洗い終わったら仏さん拝んで帰ろう。」
2人は筍を洗い終え家に上がった。
仏壇の間で沙菜は亡き祖父に線香を立てる。
正座し遺影の前で合掌をする沙菜。
「おじいちゃん。私今日は友達連れて来たよ。流衣君って人で優しくていい子だよ。
ちょっぴり固いけど私には可愛い後輩でこれからも一緒にいたいよ。だからね私たちの
こと見守っててね。また来るから。」
そう言い沙菜は立ち上がった。
「流衣君、お茶飲んだら帰ろうか。」
「はい。」
そして2時間後2人はバスに乗り山を後にする。
後ろから2番目の右の座席に並んで座る2人。
収穫した大量の筍を入れた袋が2人の足元に並ぶ。
流衣は疲れ果て爆睡している。
沙菜はその横顔を見詰め笑っていた。
「何だろうね。やっぱ可愛いな。ずっといてね。」
そう言い沙菜は流衣の頬にキスをした。
そうこうしている間にバスは暁町に着いた。
バスを降りるも流衣はまだ眠たそうにしている。
「疲れた?」
「はい。」
「でも楽しかったね。」
「ふ~ん。デートしてたの?」
そこに突如翔子が現れた。
「翔子!何で?」
「綾瀬さんと剣君からね。」
沙菜は顔を真っ赤にしている。
「まぁいいわ。私もこの間デートしたしここは五分五分ね。」
そう言い翔子は去って行った。
そして流衣も家に帰る。
バーシャトーに筍をお裾分けに行く。
「こんなにいただいてもよろしいのですか?」
「まぁな。飯作ってもらえるなら。」
「朝日君、ありがとう。今日は家で作るから何食べる?」
シルヴィは流衣に質問した。
「筍の料理かな。」
「でしたら筍のフルコースをお作り致します。」
我久斗はそう言い袖を捲り包丁を握る。
「お兄ちゃんに感謝して下さいね。」
「はーい。」
この日は筍三昧の食卓となった。
今日は流衣にとって冒険した1日だった。

続く

朝焼け色に光る町

2015年05月06日 08時57分41秒 | 小説
第9話 空色コンチェルト

流衣は悪夢に魘される。
暗い牢獄で1人泣いている夢だった。
壁を何度も殴り拳は痣だらけになっている。
やせ細り目は充血し目の下にはクマが出来ていた。
壁には傷を付け正の字を刻んでいた。
暗い絶望の牢のような夢に魘されるも流衣は目を覚ます。
「夢かよ…」
そう言い流衣はため息つく。
ゴールデンウイークも終わり学校が始まった。
連休明けで普段ならば行く気は失せるが流衣は違った。
皆のいる学校に行きたい。
暗い部屋に外から日の光が差し込む。
流衣は起き上がり制服に着替えダイニングに出る。
幸音がトーストとコーヒーを食卓に並べ待っていた。
「おはよう。」
「連休終わったな。」
「うん。気を引き締めて行こう。」
そして食事を終え2人は家を出た。
シルヴィと我久斗が階段の下にいた。
「お出掛けですね。行ってらっしゃいませ。」
「朝日君、また後で学校で会いましょう。」
「はーい。」
2人は元気良く返事し歩き出した。
そんな2人に城夫妻が手を振り見送った。
そしていつもの通学路で流衣の隣に幸音が寄り添い歩く。
「ゴールデンウィークあっという間だったね。」
「だが学校が一番落ち着く。今まで学校は遅刻欠席の常習犯だったがな。」
「お兄ちゃん、この町来て変わったね。」
「俺はやっと自分の居場所を見つけたよ。」
すると後ろから声がした。
「居場所って私かしら?」
流衣は驚き振り向く。
翔子と沙菜がいた。
「朝から何すか?」
「今の所あなたは無遅刻無欠席。前の学校の内心と逆ね。感心するわ。」
「もしかして翔子や沙菜先輩が好きで学校来るの?」
「何だか学校来るのが楽しい。その質問はよく分からんがな。」
こうしているうちに流衣たちは学校に着いた。
流衣は教室に入り鞄から教科書を取り出す。
「流衣君、おはよう。」
明恵がいつも通りに挨拶をした。
流衣はこれが日常だと感じる。
中学での喧嘩や学校を遅刻欠席しないで来る。
何一つ変わらない日常を守りたい。
そう思えた。
「流衣、あんたもちゃんと学校来るようになったわね。」
「おはようございます。今日は爽やかな五月晴れですね。」
遥と満もいつも通りに流衣に挨拶をする。
流衣はようやく見つけた居場所の暖かさを感じた。
そして昼休みに流衣は生徒会室に足を運んだ。
翔子を訪ねて入室する。
「あなた自ら私の所に来るなんて珍しいわね。」
「俺さ思ったんだよ。あんたが不良の入学転校を拒否を目指す運動を止めたいと。」
「何で?」
「あんたも分かるだろ?俺の変わったことを朝俺に言った。」
「それは別よ。」
「俺だって変われた。不良は皆がそうじゃなく変わるやつもいる。あんたも気付いただろ!」
「だったら命令よ!今日の放課後私とデートしなさい!」
突然突き付けられたら命令に流衣は驚き瞳孔が開く。
顔を真っ赤にし言葉を失う。
「どう?デートするの?」
「デートって…俺はその…てか話違うだろ!」
「あなたを観察したいの。どんな人間かもっと知りたい。」
そして放課後を迎えた。
流衣は校門で翔子を待つ。
缶コーヒーを飲みながら1人退屈そうに立っている。
校舎の時計の針は昼の3時半を指していた。
五月晴れで雲一つなく暑く日差しが照らす。
流衣は暑さあまりに上着を脱いだ。
晴れ渡る空の下待ち続けていると翔子が校門から出て来た。
「会長、遅かったな。」
「沙菜を振り切るのに時間が掛かったのよ。」
「別にいても良かったっすよ。」
「2人きりがいいの。行きましょう。」
こうして2人は歩き出した。
それを木陰から光と剣が嫉妬しながら除く。
「会長ったらよくも私の朝日先輩を!」
光は爪を噛み締め泣く。
「朝日先輩が今度は会長に!」
剣はハンカチを噛み締め泣く。
そんな2人をよそに流衣は翔子と腕を組み歩き出す。
「なぁ恥ずかしいよ。」
「いいじゃない。鈴本さんとは手を繋いでたし。」
「でも見つかったら。」
「気にしないの。それより私を楽しませてね。」
そう言い2人は町を歩く。
そして2人はショッピングモールに入った。
先ずは洋服店に足を踏み入れた。
翔子は試着した服を流衣に見せようとカーテンを開けた。
白の七分袖ジャケットに水色のワンピースを着ていた。
「どう?」
「いいっすね。大人な感じで。」
そう言われ翔子はその服を購入した。
次に2人はCDショップに足を踏み入れた。
「ねぇ流衣は好きな音楽は何?」
「聞いてみます?」
そう言いCDを入れヘッドホンを翔子に渡す。
その曲はゲームのBGMだった。
翔子は歌詞のない曲を苦笑いしながら聞いていた。
そしてヘッドホンを外す。
「どうよ?」
「BGMね。私は歌詞のある曲が好きだけど。」
「はっきり言うんすね。」
そう言われるも流衣はそのCDを購入し店を出た。
それからしばらく2人はモール内を楽しむ。
そしてショッピングモールを後にし町のカフェに入る。
オープン席に座り2人はアイスコーヒーを注文した。
青空の下でティータイムを送る。
テーブルに並ぶ2つのコーヒー。
翔子のはミルクが入っていた。
「会長、分かってくれました?今日の俺見て全然怖くないだろ?」
「そうね。あなただからいいのよ。」
「他のやつらは嫌か?俺だからなら一緒だった剣は?」
「彼もいいわ。あなたたちは私たち女性には優しいし。だけど男子は怖がってたわ。
だけど男子たちが変なことしなくて助かるわよ。」
「要するに俺は利用されてると。」
「違うわ。最初はそうでもあなたといるうちに時間を忘れ気付けば出会って1ヶ月。
とても楽しい時間よ。こんなの初めてだわ。」
「会長には沙菜先輩がいるでしょ?それとは違うんすか?」
「男の子といて楽しく思えたのはあなたが初めて。私は今まで男子は獣に思って嫌いでいたの。
だけど朝日流衣。あなたは特別。女性の味方だもん。」
「まぁこの町じゃな。」
「だけど突然あたなはこの町を去った。私も会いたかったのに。寂しかった。」
「あの時のあなたの言動には何か隠していたようだった。本当は何があったの?」
その言葉に流衣は意表を突かれた。
隠したつもりを見抜かれ同様し冷や汗を掻く。
「あなたこの町に来た日お墓参りに来ていたわね?私も偶然お墓参りに来ていたの。
何か関係ありそうだと思うの。本当のことを言いなさい。」
流衣は戸惑う。
何を言おうか言葉を探す。
目が泳ぎ汗が流れ息が乱れる。
翔子の鋭い眼差しが突き刺さる。
そして流衣は立ち上がる。
叩くようにテーブルに両手を乗せ怒鳴った。
「俺にだって言いたくないことはある!あんた何様だ!」
皆が驚き2人のことを見る。
翔子は突然の激怒に驚き言葉を失う。
瞳孔が開き口を開けポカンとした顔をする。
「ごめんなさい。もう触れないからこれからもよろしくね。」
その言葉に流衣は冷静さを取り戻した。
2人のデートは終わりを迎え最後は公園で別れる。
「今日はありがとう。楽しかったわ。」
「じゃあまた学校で。」
こうして2人は別れ別々の方向に歩き出す。
「好きよ。」
翔子はそう呟き空を見上げた。
明日も頑張ろうと決め気持を新たに翔子は歩き出した。
今日は翔子にとって気持がリフレッシュした1日だった。
彼女の顔は嬉しさあまりの笑顔だった。

続く

朝焼け色に光る町

2015年05月03日 04時52分50秒 | 小説
第8話 花色マーチ

流衣は自宅リビングのソファーでスマホでゲームをする。
幸音の淹れたコーヒーを片手にゲームに熱中する。
隣で幸音は流衣の横顔を眺めていた。
流衣はゲームでボスを倒しスマホを置いた。
無言でコーヒーを口にする。
「お兄ちゃん、ゴールデンウイークなのに自宅にいていいの?」
「お前、どこか行きたいのか?」
「家でもいいよ。お兄ちゃんといられるなら。」
「そうか。まぁゴールデンウイークだがあいつらは相変わらずだな。」
流衣はそう言うとカーテンを開けベランダに出た。
するとそこには光と剣がいた。
「相変わらずご苦労さん。」
「はい。いつから私と剣君にお気付きでしたか?」
「最初からな。」
「では僕らはここで。」
そう言うと2人はベランダから非常階段に飛び移り走り去った。
そしてその直後流衣のスマホに着信が来た。
明恵からだった。
流衣は電話に出た。
「どうした?」
「流衣君、実はね…」
そして翌朝流衣は駅前の時計台に足を運んだ。
1人缶コーヒーを飲みながら佇む。
流衣は時計を見上げる。
まだかなと言う顔だった。
そんな中後ろから彼を呼ぶ声がした。
「流衣君、来たよ。」
明恵が走って来た。
「遅かったな。」
「ごめんね。」
「いいよ。行こうぜ。」
こうして2人は電車に乗った。
明恵は電車に揺られながら海を見渡す。
「ねぇ流衣君、私流衣君とデートは初めてだよね。」
「そうだな。あいつと付き合ってたからな。」
「私凛香ちゃんには劣っても一生懸命流衣君を楽しませるから。」
「それは嬉しいよ。」
「今年三回忌だったけど来なくて流衣君この町を捨てたかと思ったよ。」
「そうだな。一回も法事行かなかったな。」
「この町にお父さんいるんだよね?」
「だがもう忘れかけてるな。親父殴りに来たのに皆との時間が楽しくて。」
「そうだね。」
こうしている間に電車は目的地に着いた。
場所はフラワーガーデンだった。
明恵はここに来ようと楽しみにしていた。
2人は入園し園内を歩く。
「ねぇ、手繋いでいいかな?」
「お前がいいなら構わないが。」
「じゃあ繋ごう。」
こうして2人は手を繋ぎ歩き出す。
「流衣君はお花好き?」
「普通かな。」
「私は好きだよ。ここね毎年ゴールデンウイークに来るんだ。」
「確かチューリップが見頃だよな。」
「うん。あとは流衣君に見せたい花あるんだ。」
「俺に?」
「あれだよ。」
そう言うと明恵は指を指す。
その先にはヒナゲシの花が咲いていた。
「あれが何だよ?」
「あれはアイスランドポピーって言って花言葉は感謝だよ。流衣君が帰って
来てくれて私ありがとうって伝えたいんだ。」
「そんなに俺に?」
「うん。」
すると2人の後ろから声がした。
「あら?お2人さんはラブラブだね潤オ」
その声は2人に聞き覚えのある声だった。
振り向くと沙菜が立っていた。
「沙菜先輩!」
「私もいるわ。」
翔子と2人来ていた。
「会長まで何で?」
「私たちも毎年ゴールデンウイークにここに来るのよ。」
「ねぇ沙菜先輩たちも一緒していいかな?」
「はい。」
その言葉に流衣はがっかりした。
こうして4人で歩き出す。
流衣と明恵は繋いだ手を放していた。
流石にこの状況では手を繋げないと流衣は判断し放したのだった。
「明恵、悪いな。」
「いいよ。皆の方が楽しいし。」
「ねぇ流衣君ってあきちゃんと中学からだよね?」
「はい。」
「私も中学での流衣君見たかったな。女の子の味方だったもんね。」
「流衣、私たちも守ってくれるかしら?」
「何かあんたは守る以前に自分の固い守りが俺には崩せん。」
「そうかしら?」
「そうですよ。何か隠してそうです。」
「先輩たちも流衣君に気があるんですか?」
明恵は突然2人に聞き出した。
流衣は顔を真っ赤にした。
「そうね。可愛いからペットにしたいわ。」
翔子は笑顔で答えた。
「それはやめてくれ!」
流衣はそれは俺のプライドが許さない。
死んでも犬は嫌だと思った。
「私は流衣君を友達にしたい男の子No.1に思ってる。だって
女の子の味方だったもん。」
「俺がか?だったら仲間だった剣はどうなんだよ?」
流衣は突然剣のことを口にした。
「珍しいね。剣君のこと言うなんて。」
明恵は少しばかり驚いていた。
「剣君はあまり話さないから分からないな。」
「まぁ彼は忠実な所は尊敬ね。」
「忠実だな。俺を一途に今もあそこにいるぜ。光とだがな。」
流衣は振り向いて後ろの木を指差した。
すると3人も振り向き指差す方を見ると2人は姿を現し流衣に駆け寄る。
こうしてまた2人増え6人で歩き出した。
「2人は本当に流衣君想いだね。」
沙菜は光と剣を誉める。
「私中学から追っかけでやっと対面を果たせたんです。」
「僕は嘗ての相棒でありながら今はさて置かれ寂しいです。」
「2人も流衣にはどんどんアタックしなさい。皆積極的な人が好きなのよ。」
翔子がそうアドバイスすると2人の目には炎が燃えた。
「なぁお前ら2人付き合えば?いつも一緒で恋しないのか?」
「私は朝日先輩一筋です。」
「僕も今はあなたの傍にいたい。」
「本当に流衣君は愛されてるね。皆に愛されて幸せだね。」
流衣を見ながら明恵はそう言い笑った。
「流衣君と2人きりのはずだったけど久しぶりに剣君も一緒に休日出掛け
られて楽しいよ。皆のいる今がまるでバラ色の日々みたいだし。」
「はい。僕もです。」
「私もですよ。」
「光ちゃんと剣君も私の友達だから何でも相談してね。」
「明恵先輩ってお花好きで花言葉知っててロマンチストですね。」
光はそう言うと明恵は答える。
「うん。私のお母さんの影響だよ。」
するとその時流衣の腹が鳴った。
皆の視線が流衣に行く。
流衣は恥ずかしげに口を開いた
「そういえば腹減ったな。」
「じゃあご飯にしよ!」
そして一同は芝生の上にシートを広げた。
「私お弁当作ったよ。たくさんあるから遠慮しないでね。」
「沙菜先輩もだよ。作って来たよ。」
「流衣、私も作ったから食べて。」
3人はそう言い流衣に弁当の蓋を開け見せる。
「美味しそう。私作って来なかったかは後悔です。」
「僕も先輩に作れば良かったです。」2人は肩を落とした。
しかしそんな2人に明恵、翔子、沙菜は自分たちの弁当を見せ言う。
「私たちのがあるから。」
2人はその言葉に笑顔が出る。
砂漠で喉を乾かしオアシスを見付けたかのように。
するとそこに流衣を呼ぶ声がした。
「あ!お兄ちゃん!」
幸音だった。
流衣はオーマイガーと心の中で叫んだ。
「朝日様もお越しでしたか?」
「朝日君たちも来てたなんて奇遇ね。」
「私が腕に頼をかけ昼食を作りましたので皆様是非お召し上がりを。」
城夫妻もいた。
流衣はここに行くと幸音に伝えなかったことを今になり後悔した。
「私たちもいるわよ。」
「こんにちは。ご一緒よろしいでしょうか?」
遥と満までいた。
「皆勢揃いかよ!」
流衣は驚く。
「今年はせっかくの5連休だから大家さんに連れて来てもらったよ。まさか
お兄ちゃんたちも来てたなんて。」
流衣はおいおいと心底思った。
しかし皆のいる時間に幸せも感じる流衣だった。
暁町に来て彼は幸せを手に入れた。
そう思った1日だった。

続く