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雑感や書評など

塩野七生「ローマ人の物語 (20)」

2005-09-21 08:56:34 | 書評
石原慎太郎が「これからの日本は、まだまだ良くなる!」と言っている姿を、ちょくちょく拝見するが、その根拠はどこから来るんだろうと不思議に思いつつも、ああまで自信たっぷりに発言することが大事なんだろうなぁと感じたりします。


「ローマ人の物語 (20)」読了。

今回は、暴君で名高いネロ帝のお話。

その治世に嫌気がさして、遂に反乱したヴィンデックスという人物についての経歴。
 父を継いだヴィンデックス自身も、元老院議員になっている。それどころか、ガリアの属州の一つの「ガリア・ルグドゥネンシス」(リヨン属州)の総督に任命されていた。ローマ化の進んでいた「ガリア・ナルボネンシス」(南仏属州)と比較すれば文明化か遅れているとローマ人が見た、「長髪のガリア」(中北部フランス)の有力者の元老院入りを認めたクラウディウス帝の法成立から、わずか二十年しか過ぎていない。征服者ローマ入の、被征服者への開放ないし同化路線の進度の速さは特筆に値する。植民地時代の朝鮮の総督に、日本人でなく朝鮮人を起用するのと同じことであった。
塩野七生「ローマ人の物語 (20)」204頁 新潮文庫

今のアメリカや中国の唐王朝にしても、人材登用の間口の広さには、恐れ入ります。
ローマも然り。

世界帝国と呼ばれる歴史上の国々で、異民族を排除して成り立ったのは、モンゴル帝国くらいか?(だから、短命だったのだろうけど……………)

日本は、トヨタに代表されるとおり、いくら世界企業になっても、外国人の受け入れには消極的だもんなぁ。
カルロス・ゴーンにしろ、ソニーの新社長にしろ、業績がにっちもさっちもいかなくなって、仕方なく受け入れているからな。

まぁ、世界帝国を目指すわけじゃないのだから、それでいいのかもしれないが……………人口が減っていくことが目に見えている現状では、そうも言ってられないのか?


それは、ともかく。
これまで、塩野七生「ローマ人の物語」を語るときは、「つまらないわけじゃないが、どうも深みが足りない」と難癖をつけてばかりいました。

が、構成の見事さは、褒めずにはいられません。

今回のローマの人材登用の巧みさについて語っている点などは、「ローマ人の物語」の初期の段階から、何度も説明しております。

超長編でありながら、場当たり的・その場しのぎ的に記述するのではなく、後々の歴史への影響を考えて構成を組み立てているのは、さすが作家の力量。

カリグラ帝からは、ユダヤ人・キリストについて徐々に触れ始めており、後に巨大な影響力を持つことになるキリスト教についても、しっかりと布石をしております。

歴史の解説書でありながらも、作者の伏線を張り巡らした記載によって、楽しく読めちゃうんだろうなぁ。


これまでの感想。
塩野七生「ローマ人の物語 (17)」まぁ面白いんだけどさ
塩野七生「ローマ人の物語 (18)」男の夢
塩野七生「ローマ人の物語 (19)」努力が報われないタイプ


ローマ人の物語 (20)

新潮社

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