東京・台東借地借家人組合1

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京都で定額補修分担金特約は違法として消費者団体訴訟

2008年03月30日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 京都市の不動産管理会社「長栄」は所有する物件の一部について「借り主は、賃貸借開始時の新装状態への回復費用の一部負担金として、定額補修分担金を支払う」などと定めた特約条項を設け、賃貸借契約時に月額賃料の2-3倍の分担金を徴収していた。また「入居期間の長短にかかわらず負担金の返還を請求できない」などとする条項も記載されていた。(「長栄」が使用した定額補修分担金条項は訴状(下記)の9ページにあります。)

 賃貸物件の借り主に原状回復費の一部を定額分担させるのは不当だとして、特定非営利活動法人(NPO法人)「京都消費者契約ネットワーク」(代表理事・野々山宏弁護士)が2008年3月25日、京都市のマンション管理会社「長栄」を相手取り、分担金条項の使用差し止めを求める訴えを京都地裁に起こした。(訴状) 

 消費者団体が被害者に代わって業者を訴える「消費者団体訴訟制度」を活用した全国初の訴訟だ。

 「京都消費者契約ネットワーク」(KCCN)は「本来は物件所有者が負担する回復費を借り主に負わせており、消費者の利益を一方的に害する条項は無効とする消費者契約法10条に反する」と主張している。

 長栄によると、分担金制度は2001年4月に導入し、退去時の原状回復費の半額程度の負担を求めていたが、定額補修分担金はわかりにくいという借り主からの指摘を受けて、2007年7月に廃止したという。

 KCCNは「分担金特約は消費者の利益を一方的に害し、消費者契約法10条により無効」と主張し、「特約の廃止は確認できておらず、将来復活する可能性も考えれば、訴訟の意義はある」としている。

 提訴に対し、長栄は「分担金は、過失による住宅の損害に対する賠償額を一定にする仕組みで、消費者に一方的に不利ではない」と争う姿勢を示している。

 賃貸物件をめぐる不当な条項の是正に取り組んできた「京都敷金・保証金弁護団」がKCCNを全面支援するのに対し、長栄側には同弁護団と更新料訴訟で争っている弁護士たちが支援に回る構えをみせている。

  この日、記者会見した代表理事の野々山宏弁護士は「提訴することでこうした訴訟制度があることを広く市民に認識してもらうと同時に、京都という町の賃貸借契約を公正なものにしていきたい」と述べた。

 同席した長野浩三弁護士は「長栄側は分担金条項をすでにやめているというが、再び使う可能性があるため提訴した」と指摘。消費者団体訴訟制度は、今後発生する同様の被害を予防する効果があるのが最大の特徴という。

 原告の弁護士らはこれまで「京都敷金・保証金弁護団」を結成し、自然損傷の修繕費用を借り主に負担させる同じような原状回復特約や更新料などの賃貸契約をめぐって提訴してきた。

 すでに一定の成果を得ているが、消費者保護の追い風となるこの制度を利用したことで、「差し止めの判決を勝ち取れば、別の訴訟でも有利な証拠になる」といい、今後もこの訴訟制度を積極的に使い、賃貸物件をめぐる不透明な慣習をなくす取り組みを推し進める。

 敷金問題に詳しい増田尚弁護士(大阪弁護士会)は「この訴訟制度は、未然にトラブルを防止でき、消費者問題を根本から解決する方法といえる。第一弾となる今回の訴訟の行方は大いに注目される。今後は被害の救済を視野に、消費者団体が損害賠償請求もできるよう、この制度をよりよくしていく必要がある」と話している。

 この団体訴訟制度は、英会話学校NOVAの受講契約をめぐるトラブルなど大規模な消費者被害が後を絶たない中、業者に対抗する「切り札」として導入された。

 この訴訟制度は被害の発生や拡大を未然に防止するために2007(平成19)年6月施行の改正消費者契約法で規定された。国が認定した適格消費者団体が、悪徳商法などの被害者に代わり、業者の不当行為の差し止めを裁判所に請求できる。同ネットワークなど全国5団体が認定されている。

 この制度では、勝訴すれば事業者は問題とされた不当な勧誘行為や契約ができなくなり、事業内容の改善が求められる。一方、事業者が得た不当利益の損害賠償は消費者個人が請求する必要がある。

 ネットワークの代理人弁護士は、課題が残ることを認めながらも「勝訴すれば、判決を消費者に有利な証拠として活用できる」と話している。

 

 消費者団体訴訟制度
 消費者利益の保護強化と被害拡大の防止のため、悪徳商法などで被害を受けた消費者に代わり、政府から認定を受けた「適格消費者団体」が不当行為の差し止め訴訟を起こす権利を認めた制度。2007年6月に始まった。欧州で普及しており、一部の国は損害賠償請求権も認めているが、日本では経済界の反対で見送られ、賠償請求訴訟は消費者個人が起こす必要がある。

 

全国借地借家人新聞より

 

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