常識について思うこと

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「国譲り」の二面性

2008年01月09日 | 日本

新年に入って一週間が過ぎ、そろそろ、お正月気分も抜けてきた頃だと思います。既に初詣で、神社にお参りをされた方もいらっしゃるでしょう。報道によると、日本の政治家のトップの方々は、伊勢神宮に参拝されたとのことです。伊勢神宮と言えば、天照大神をご祭神とした神社であり、日本全国の神社を統括する神社本庁のなかで頂点に位置づけられているという由緒正しい神社です。

ところで、現代の「伊勢神宮が頂点」という考え方には、私自身、大いに疑問を持たざるを得ません。このテーマについては、徐々に取り上げていきたいと思いますが、まず大前提として確認しておかなければならないのは、天照大神という神様は、出雲大社のご祭神である大国主大神から、国を譲り受けた存在であるということです。このあたりのお話は、日本書紀や古事記などにも出ており、「出雲の国譲り」として、大変有名な神話となっています。

このなかで注目すべきは、日本史のなかで、元来、国を創設した大国主大神よりも、国を譲り受けた天照大神が、何故これほどまでに高く評価されるのかということです。これには、日本書紀や古事記の成り立ちはもちろん、日本建国の謎が隠されています。またこれらの考察を通じて、聖徳太子の実在に対する疑念や、出雲だけは「神無月」を「神在月」と呼ぶといった不思議な謎も解き明かすことができるようにもなります。

これらの謎については、機会をあらためる(「日本建国史の再考」参照)として、ひとまず今回は、以下「国譲り」というものに対する二つの見方を例示して、並べてみたいと思います。

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《建国》
争いごとを好まない一人の帝王がいました。帝王は自らの平和的精神を貫いて国を建て、国民も進んでその建国の精神に従い、国の秩序は大変よく保たれていました。そして、互いを尊重し合い、互いを思いやる民が集った国は、大変な繁栄の時代を迎えるようになりました。

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《国譲り-見方1》
しかし、その国の周りに強大な外国が誕生するようになり、そうした国々が虎視眈々と帝王の国を狙うようになってきました。こうした状況の中、帝王の平和的精神だけでは、国を失い兼ねないという危機感を抱いた者たちが、帝王に対して国譲りを迫り、帝王に代わって国を治め、外国に負けない国造りに励むようになりました。
 ⇒「帝王は、国の長としてふさわしくなかった!!!」
   ※たしかに「国譲り」ではある
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《国譲り-見方2》
しかし、その国が栄える一方で、その繁栄を羨み、次第に強大化していく国の権力に目を付ける者たちが出てきました。そして、その者たちは国の権益を奪うべく、帝王に対して譲位を迫りました。帝王は、争いごとがない世の中を創るために国を建てた人物であったため、権力争いにつながるような真似はせず、その建国の精神を守って、おとなしく国を譲ることにしました。
 ⇒「帝王は、反逆者によって追放された!!!」
   ※「国譲り」というよりも、むしろ「国獲り」
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上記で分かるとおり、「国譲り」というのは、譲られた側の都合の良い解釈に過ぎません。国を治めるべきは、国を創設した帝王ではなく、別の人間であるという論理は、それはそれとしてあり得ることです。しかし、帝王が国譲りをするというのは、権力交代の一側面でしかなく、もうひとつの側面として「権力の奪取」があったことは、紛れもない事実です。しかし、それを「権力の奪取」と表現してしまっては、権力を奪取した側(譲られた側)にとって大変都合が悪くなります。

現代に至るまでの長い日本史観は、記紀に大きく依存しています。けれども、記紀にばかり頼った日本史観では、権力を奪取した側(譲られた側)の論理しかみえません。そしてまた、現代において、こうした日本史観に基づいて、伊勢神宮の天照大神ばかりを頂点と仰ぐことには、違和感を抱かざるを得ません。

出雲大社の大国主大神、伊勢神宮の天照大神。日本のトップの方々が、真剣に日本という国を考えているのであるならば、少なくとも日本の成り立ちについては真面目に勉強しておいていただきたいし、この二柱の関係をきちんと理解したうえで、お参りに臨んでいただきたいと思うのでした。

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