末吉洋文の平和研究室

帝塚山大学法学部で「国際法」や「平和学」を担当しています。

平和度指数、日本は8位

2007年05月31日 | 平和
よく知られるイギリスの経済雑誌「エコノミスト」の調査部門EIU(Economist Intelligence Unit)が世界121か国を対象にした「平和度指数」を初めて発表し、日本は主要8か国(G8)では最高の5位にランクされた、とのニュース。

平和度指数は、犯罪傾向や軍事費の国内総生産(GDP)比など全24項目を比較、各国で平和が実現されている程度を今回初めて数値化したそうですが、詳細についてはまだEIUのホームページに発表されていませんので、そのうち全24項目についてお知らせしようと思います。

トップ3は1位がノルウェー、2位ニュージーランド、3位デンマーク。最下位はイラクで、ワースト2位はスーダンだったようで、米国は、巨額の軍事支出や紛争への関与から、先進国中では最低の96位でした(やはり!)。

昨日の「失敗国家ランキング」に続いて大変興味深いデータではないかと思います。

失敗国家ランキング

2007年05月30日 | 平和
今日は兵庫県立国際高等学校へ。小生と高校側の双方の都合で1ヶ月ほど空いてしまいましたが、講義の連続性はなんとか保ちたいものです。小生が居ない間、担当の先生が「失敗国家ランキング」なるものを生徒さんに紹介していたので今日はそれをネタに書こうと思います。このランキングは、2006年にアメリカのシンクタンクの一つであるThe Fund of Peaceが発表したものです。

失敗国家(failed state)とは「国家機能を喪失し、内乱・政治腐敗などの原因によって国民に適切な行政サービスを与えることが出来ない状態にある国家」を指す政治学用語とされていますが、国際法の分野でもいろいろと言及されるようになって来ています。例えば、PKOを始める時に領域国政府の同意が必要である、という「同意原則」があるのですが、政府が存在していない場合、平和維持活動をはじめることができないということになってしまいます。

失敗国家はアフリカなどの後発開発途上国で発生し、深刻な国際問題となっているのですが、各々の国家がどれだけ失敗しているかは以下のとおりです。

1位 スーダン
2位 コンゴ民主共和国
3位 コートジボワール
4位 イラク
5位 ジンバブエ
6位 チャド
7位 ソマリア
8位 ハイチ
9位 パキスタン
10位 アフガニスタン
   ・
   ・
57位 中国
   ・
   ・
123位 韓国
124位 ドイツ
125位 スペイン
126位 スロベニア
127位 イタリア
128位 米国
129位 フランス
130位 イギリス
131位 ポルトガル
132位 チリ
133位 シンガポール
134位 オランダ
135位 日本
136位 オーストリア
137位 デンマーク
138位 ベルギー
139位 カナダ
140位 オーストラリア
141位 ニュージーランド
142位 スイス
143位 アイルランド
144位 フィンランド
145位 スウェーデン
146位 ノルウェー

・・・やはり北欧諸国は頑張っていますね。

そしてランキングを決定する指標としては、12あるようで、

①人口圧力の増大(Mounting Demographic Pressures) 
②難民および国内避難民の大量移動(Massive Movement of Refugees and IDPs )
③集団としての不平不満が残っており、復讐への動機が残っていること(Legacy of Vengeance - Seeking Group Grievance )
④慢性的および継続的な現実逃避の状況(Chronic and Sustained Human Flight)
⑤経済発展の不均衡(Uneven Economic Development along Group Lines )
⑥経済状況の悪化(Sharp and/or Severe Economic Decline )
⑦国家の犯罪化もしくは非合法化(Criminalization or Delegitimization of the State )
⑧公共サービスの悪化(Progressive Deterioration of Public Services )
⑨大規模人権侵害の状況が存在していること(Widespread Violation of Human Rights )
⑩国家の状態を反映する治安維持組織の状況(Security Apparatus as "State within a State)
⑪利己的エリート層の台頭(Rise of Factionalized Elites )
⑫他の国家または外部の主体の介入があるかどうか(Intervention of Other States or External Actors )

指標の設定の仕方によって順位が微妙に変わってくると思いますが、これはこれで国際社会の現状をよく表しているのではないでしょうか。ところで、日本は135位にランクインしていますが、決して「成功」しているとはいえない現状があるようにも思います。

学内業務

2007年05月29日 | 日々の生活
今日はお昼休みに今年度初の広報委員会がありました。それから非常勤へと出かけていったのですが、会議の時間が長引いたために電車の乗り換え等のすべてが時間ギリギリになる始末。普段は普通電車に好んで乗っている小生ですが、今日ばかりは新快速のお世話になりました。また、疲れていたのか車中での勉強はそれほどはかどりませんでした。

俗に「雑務」といわれる教育と研究以外の学部の仕事は、なかなか難しかったりします。
お願いされた仕事を完遂することは当たり前なので、あとはどれだけ学部のみならず大学全体のためにクリエイティブな仕事ができるか、に未来がかかっていると思います。この点小生は広報委員長とキャリアセンター委員という重要な役目を仰せつかっているので、アンテナの感度を良くしながら仕事を進めていこうと思っています。

非常勤を終えて実家に帰ると晩御飯のデザートとしてスイカが出てきました。気分はもうカブトムシ・・・美味しかったです。

スイカに砂糖?

2007年05月28日 | 料理とグルメ
そういや、一昨日生駒山を歩いているとき、留学生に対して確かめたいことがあったので訊いてみました。「スイカに砂糖をかけるって本当?」と。そう、中国ではどうやらスイカに塩ではなく砂糖をかけて食べるのだとか。

実はこの話、小生が大学院生のときに中国人留学生の先輩から話を聞いたのですが、なんでまた砂糖を?と思った記憶が強く心の中に残っていたのでした。で、答えはやはり「はい、砂糖です。」と。

むしろ「日本人は何故塩をかけるのですか?」と訊き返されました。そこで小生、「果物そのものの甘みと旨みを引き出してくれるからだよ」と返したのですが、納得しないご様子。中国人留学生いわく、「砂糖だと甘みが増すのです」とのこと。

やはり「中国では砂糖、日本では塩」というのは本当でした。もうそろそろスイカの季節ですね。

今日は疲れたので寝ます。おやすみなさい・・・

生駒山スカイウォーク

2007年05月26日 | 日々の生活
生駒山スカイウォークに行ってきました。去年行こうと思っていたのですが、実現しなかったので、今年こそはと思っていたのです。生駒駅に集合し、ケーブルカーへ。小生は二回目でしたが、初めて乗るという留学生は興味津々だったようです。

昨日の酷い雨が影響したのか、山上からの景色は霞がかっていました。山の上なので涼しく、参加者に配布されていたお茶を飲むこともなく、ひたすら歩き続けること2時間ほど。日ごろの運動不足がどれだけ解消されたのかはわかりませんが、心地よい疲労感が残りました。

それにしても昼食をとった蕎麦屋さんに貼ってあった生駒山からの夜景のポスターの綺麗なこと・・・やはり夜に特別な女性と来るべき場所なのだと思いましたが、今日は今日。科学的に証明されていないと聞くマイナス・イオンですが、やはり緑の中を歩くのはとても気持ちの良いものでした。

補講が入った学生は残念でした。また何か企画しようではないですか。

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来週の土曜日はユニセフ大阪支部で勉強会の講師を務めます。

勉強会「国連憲章を学ぼう」
日時:6月2日(土)、7月7日(土)、8月4日(土)、9月1日(土)
    14時から16時まで
場所:大阪支部研修室(4F)
参加費:無料

ミレニアム・ビレッジの可能性

2007年05月25日 | 平和
今日は雨が「これでもか」というくらいに降っていました。小生のスーツも若干濡れてしまったわけで、早くも小奇麗計画は頓挫したのでした。

今日は大学院の授業と入門演習、そして専門演習の3コマ。今年のゼミ生はなかなか頑張って発表をしているように思います。前もってレジュメのチェックを受けるために必ず小生の研究室を訪問することになっているのですが、必ずみんな守ってくれています。

ゼミでは、安全保障理事会における二重拒否権の問題が出てきたのでわかりやすく説明したつもりなのですが、どこまで理解してくれたのでしょうか・・・ま、徐々に成長してくれたらそれで良いと思っています。「解らないことがある」ということを知ることもまた勉強ではないでしょうか。

ところで、ちょうど1ヶ月前の日本経済新聞の「経済教室」に、コロンビア大学教授であるジェフリー・サックス氏が「アフリカ支援 農村を軸に」という題で論稿を発表していました。

ミレニアム開発目標が設定され、2015年までに達成すべき8つの目標があることは度々このブログでも紹介してきたところですが、2002年のミレニアム・プロジェクトの一環として開始されたミレニアム・ビレッジ・プロジェクトというものがあります。

このプロジェクトは、極度の貧困からの脱却の糸口はコミュニティー単位の開発にあるとの考えに根ざしており、多くの実用技術を組み合わせ、それを活用することによって人間の安全保障を実現していこうという計画です。

2005年にまとめられたミレニアム開発目標の報告書においては、飢餓は徐々に減少しているものの、依然としてアフリカの貧困者数は増加、AIDSは教育分野に大打撃を与え、性の不平等は解消されていない、と指摘されていました。

いずれにせよミレニアム開発目標の達成は難しくなっているわけで、ならばコミュニティー単位をターゲットとした処方箋を、ということで考案されたのがミレニアム・ビレッジ・プロジェクトなのです。こうした方策の方が、意外と効果があるのかもしれませんね。

ジェフリー・サックス氏によれば、このプロジェクトにおける日本の役割は大きく、国際社会からも注目されているところなのだとか。外務省が力を入れてきた「人間の安全保障」を実現するための日本外交がここにきて評価され始めているということなのでしょう。しかし、依然としてアフリカ大陸を取り巻く環境は厳しく、日本を含めた国際社会の更なる国際協力が必要であることは言うまでもありません。

読売新聞『「平和」の今』

2007年05月24日 | 平和
衣替えでスーツを交換しました。クリーニングに出していたズボンは折り目がピチッと入っていてなんだか背筋がシャンとなるような気分になります。「見た目が9割」の世の中でもありますから小奇麗にはしておこうと思いますが、折り目がもつのはいつまでなのでしょうか。小生は身だしなみには無頓着な方だと思いますが、頑張ります。

さて、読売新聞がここのところ『「平和」の今』という特集をしています。ここまで8回分が掲載されているのですが、平和教育をめぐる広島と長崎を中心とした現状が把握できるので非常に有益な情報であると思います。(読売新聞のサイトから閲覧できます。)

まず印象に残ったのは、広島に原爆が投下された1945年8月6日午前8時15分という日時を答えることができなかった広島市内の小学生(4年生以上)が、50・4%、中学生でも32・4%いたそうです(2005年のデータ)。調査は95年から5年ごとに行われ、初回は小学生44・3%、中学生25・3%。2000年には、小学生が64・8%、中学生も37%に増えたそうですが、広島における平和教育をめぐる環境も色々あるようです。

これまでの『平和が大切、二度と戦争を起こしてはいけない』式の『説教型平和教育』への反省などがあるようですが、被爆国の人間として、そして平和憲法の国の人間として教え込まれる「平和教育」と自分の頭で考える「平和学」との連携をうまいことやったら別に問題ないようにも思います。

また、関西学院大学のことも取り上げられていました。ここの大学もいわゆる平和学を開講しているのですが、カリキュラムなどがいろいろと工夫されているので参考になりました。

記事によると、講座は単に「平和が大切」「戦争は悲惨」と説くのではなく、学生に想像力や知識を求めているとのこと(→小生が担当している帝塚山大学のの「平和学」と同じ!)。ただ、「なるほど」と感心したのは、レポートのテーマが「自分が被爆三世と仮定し、原爆開発者の孫と、日本軍の重慶爆撃による被害者の孫と会ってどんな会話をするかを考えよ」「高齢化した被爆者の立場になって、自由に意見を述べよ」という設定がなされていること。

小生の場合は、今年度は「平和学検定」と自由テーマのレポートの二本立てにしていますが、関学のような「設定もの」も良いかもしれません。他者の立場になって考える想像力が求められる部分が平和学には大きいようにも思いますから、来年度の参考にさせていただこうと思います。

『世界の半分が飢えるのはなぜ?』

2007年05月23日 | 平和
非常勤の行き帰りの普通電車は貴重な読書タイム。購入しておきながら、読んでいなかった『世界の半分が飢えるのはなぜ?』という本を読みました。中学生でも読めるような感じの内容で、やや大きめの字で書いてありますので、姫路までの片道もあれば読み終えることができました。

著者はジャン・ジグレール氏で、現在はジュネーヴ大学社会学教授、同大学付属第三世界研究所所長、パリ・ソルボンヌ大学講師です。また、最近注目されている「食料に対する権利」についての国連人権委員会特別報告者(Special Rapporteur)も務めています。

著者によると、飢餓は「運命」や「自然淘汰」ではなく「人災」である、と分析しています。難民キャンプで行われる「命の選別」・・・助かりそうな子どもだけが救済されるという矛盾や「環境難民」という新たな種類の難民が発生している現実。平和学の授業では貧困問題についてお話をしたのですが、改めてこの本の紹介だけでもしておこうと思った次第です。

「百聞は一読に如かず」・・・小生が下手に紹介するよりも是非ご一読をオススメしたいと思います。

平和学検定をはじめます

2007年05月21日 | 平和
週末はゆっくりできました。しかし、ゴールデンウィークが終わったあとの授業期間はけっこうしんどい。「学生諸君、しんどいのは先生たちもなのだよ」と誰彼かまわず訴えたい心情です。なんかこう、肩で息をしている感じです。なので今日はもずく酢を購入。だいたい3個パックになっているものですが、一気に平らげてしまいました。やはり少し疲れたときの酢の物は最高に美味いです。

さて今日は平和学でレポートの課題を発表。ひとつは「平和学検定」の問題を作成する、というもの。将来的には帝塚山大学のeラーニングシステムで公表しようと考えています。最近では検定ブームですから、それに便乗するかたちで「いっちょやってみるか」と思ったわけです。

小生を含めて戦争を知らない世代がどのような検定問題を作り上げるのか、楽しみにしていただきたいと思います。

以下は、小生が作った問題例です。

問題例その1)
Q 国際社会の平和の問題について「主要な責任」を負う国際連合の機関はどこか?
(1)安全保障理事会(2)総会(3)事務総長(4)経済社会理事会
【答え】(1)
【解説】国連憲章第24条1項において「国際連合の迅速且つ有効な行動を確保するために、国際連合加盟国は、国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を安全保障理事会に負わせるものとし、且つ、安全保障理事会がこの責任に基く義務を果すに当って加盟国に代って行動することに同意する」と規定されている。これに続く「副次的責任」を課せられているのは総会である。
 冷戦期、常任理事国の特権である拒否権が行使されることが多かったため、機能不全の状態に陥ることも多かった。しかし、冷戦後、ソ連邦の崩壊と内戦の増加に伴う平和維持活動の増加により、安全保障理事会の活動に国際社会からの期待が寄せられている。
 ところで、日本は常任理事国入りを目指しているが、国連憲章の改正には加盟国の3分の2に加えて常任理事国が拒否権を行使しないことが条件となるため、厳しい状況にある。


問題例その2)
Q 広島の原爆を描いた漫画『はだしのゲン』は世界何か国語で出版されているか?
(1)5か国(2)7か国(3)11か国(4)15か国
【答え】(3)
【解説】2005年現在、少なくとも英語版、フランス語版、ドイツ語版、イタリア語版、朝鮮語版、ロシア語版、スペイン語版、インドネシア語版、タイ語版、エスペラント版が既に刊行されている。
 『はだしのゲン』は、著者である中沢啓治自身の被爆体験を元にした漫画。同タイトルで実写映画やアニメ映画化もされている。
 1972年に「週刊少年マガジン」の漫画家自伝企画の第1弾として掲載された、中沢の自叙伝『おれは見た』を元に、脚色を交えて1973年から「週刊少年ジャンプ」での連載が始まった。単行本、文庫本などを含めた累計発行部数は1000万部を超える。
 ところで、2007年5月30日からウィーンで開催される核拡散防止条約(NPT)運用検討会議の第1回準備委員会で、日本政府代表団は、本作の英訳版を加盟国に配布する。外務省が英語版30冊を出版社から譲り受け、今後も「漫画外交」を活発に展開させる予定である。

投資責任原則の普遍化

2007年05月18日 | 平和
最近は変なお天気が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今日のゼミは残念ながら「風邪を引いてしまいました」というゼミ生も何人か居たわけですが、こればっかりは「健康管理がなっとらん!」とお説教をするわけにもいきません。・・・ま、愛すべきゼミ生の皆さんお大事に。

さて、毎日新聞によりますと、不発弾が市民に大きな被害を与えているクラスター爆弾を「非人道的」と判断し、製造企業への投資を05年以降、中止した欧米の大手基金や金融機関が約20に広がっていることが17日までに判明したそうです。

投資を中止した中には、日本の大手銀行の預金量並みの総資産を持つノルウェー年金基金(総資産約2500億ユーロ、約41兆円)もあるそうですが、これは国連が主導する投資責任原則に銀行業界が注目し、実践した重要な第一歩であるということでもっと注目されるべきニュースであると思います。

同基金は71年に生産を始めた北海油田の収益を元に、90年に設立され、国外企業約3000社(07年)に投資しているそうですが、04年に倫理委員会を設置し、「著しい人権侵害」を行う可能性のある投資対象の審査を始めたということだそうです。この結果、昨年までにクラスター爆弾製造7社と核兵器製造関連8社など、計19企業への投資を中止することができたというのですから立派なものです。

この点に関してはもっと書くべき部分があるのですが、1週間が終わった今日、探偵ナイトスクープを見ながらの何ともいえない安堵感・・・芋焼酎が骨身にしみる美味さなので続きはまた明日。