Simplex's Memo

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高千穂鉄道、存続への検討委員会発足。

2005-08-12 00:00:04 | 鉄道(地方・専用線など)
先月、高千穂鉄道の存廃に関する議論が始まることを紹介したが、10日に宮崎県と沿線自治体が「高千穂鉄道検討委員会」を発足させて、初会合を開催した旨が報道されていた。

「赤字の三セク「高千穂鉄道」存続への課題探る 県と沿線5市町検討委を発足」(西日本新聞、8/11)

この「高千穂鉄道検討委員会」、沿線自治体(延岡市、北方町、高千穂町、日之影町、五ケ瀬町)の助役、宮崎県及び高千穂鉄道で構成される。
今後、経営の現状と今後の見通し、経営改善の対策と将来の方向性、地域住民の生活に必要な公共交通機関のあり方等を検討していくことになる。
今後は利用者アンケートなどの結果を踏まえて経営改善策を検討していくという。

前回の記事では「廃止も視野」と紹介されていたが、今回の記事を見るとそういったニュアンスは窺えない。
最近目にするようになった沿線自治体を中心とした経営改善委員会のように見える。

個人的には残して欲しい、というのが本音ではあるが、今後の車両更新、橋梁(日本の鉄道で最も高い、高さ105mの高千穂橋梁がある)の補修費用等を考えると、そう楽観的な事ばかり言ってもいられない。
そうした今後発生するコストに見合う収益増加がなければ廃止、という可能性も否定できない。
ただ、そうした収支計算だけで廃止して良いのかとも思う。
仮に高千穂鉄道が廃止され、バス転換されたとして、まず高千穂鉄道利用客の自家用車への転移、そして自家用車での移動が困難な人は延岡市へ移動するのではないか、そんな事を思う。

鉄道からバスへ転換した過去の事例を見ると、鉄道利用客がバスへそのまま転移したケースは殆ど聞かない。
そう考えると、最終的には転換バスの衰退、過疎化の進展は避けられないようにも思える。

しかも、今後も高齢化は進展し、自分でハンドルを握れない人が増えてくると思っていたら、実態はそんな事はない。
例えば、2005年の警察白書では高齢者の85%が免許返納を考えておらず、家族はそれを「危険」と考えているという事をとりあげている。
免許返納を考えていない理由として「運転能力は低下していない」、「交通機関がなく、不便」が挙げられていたが、前者はともかく、後者については注目すべき点ではないだろうか。

安価で便利な公共交通機関が整備されれば、高齢者ドライバーが公共交通機関へ戻ってくる可能性はまだ残されている事を示唆している。
特にこうした山間部のローカル線ではそうした視点からの議論が必要ではないだろうか。
「運転能力は低下していない」と本人が自負していても、果たして実際はどうだろうか。以前にも触れた覚えがあるが、高齢者が原因となった交通事故が多発し、それが無視できない経済的・人的損失をもたらすようになった時、まず国が考えるのは運転免許に年齢制限を設け、高齢者に車の運転をさせないようにするだろう。
そうした形で自らの足であるクルマを奪われた高齢者が増加した時、まず公共交通機関を整備する議論は確実に出るだろう。
まぁ、このぐらいの事をしないと地方における公共交通機関の衰退に歯止めがかかることはないだろうとは思う。

単に収支だけで公共交通機関の存廃を考えるのではなく、公共財として考える。
そういった広い範囲での議論がなされれば、これ以上の事はないと思う。


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