池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

金融危機に思う

2008-11-01 | 社会・生活・食・健康

今、世界は百年に一度の、モンスターのような金融危機に侵されている。国によっては国家が破綻する恐れもあるという。
お金には固定された価値がある、との思いは無邪気でしか無かった。実際は生き物のように強くなったり弱くなったり変動する。
投資は結果がすべて。プロセスの一喜一憂関係なし。数年間こつこつ値を上げてきた株価も数週間で半減する。その逆もある。偶然に支配されるギャンブルだ。

けれどもこんな状況を嘆いたり恨んだり萎縮したり、という場合では無い。
世界大戦前や戦中戦後の混迷した時代に生きた人たちは大変だったろう、と想像しても、自分には過去の歴史でしか無く、リアリティーが無かった。
むしろそんな時代に歴史を塗り替える革命的な芸術作品が生まれたことに憧れ、今の時代があまりにも平和で、ぬるま湯につかっているようで、もどかしく思っていた。
現実にテロや大震災などが起きても、自分の身に降りかかってこなければ実感は乏しい。*

一体、作曲を営むこと自体、ギャンブルでなくて何だろう。
国内だけで毎年何十曲ものオーケストラ作品が初演される。経費は1曲あたり何百万。殆どは1回きりで忘れ去られる。一生を作曲に捧げたとしても、報われる保証など無い。
作曲云々以前に、自分が生まれた事さえ偶然だし、どんな親の下に、どんな国に、どんな時代に生まれ、どんな学校に行き、どんな先生につくか、職業、不動産、時には交通機関や宿泊施設の選び方さえ重大な結果を招く事もある、すべて賭け。
そもそも地球が誕生したのも奇跡的な偶然だ。

偶然の産物は神聖なもの。再現不能。
野生の動物が餌にありつくのも偶然の要素が高い。しかし学習によって成果を上げる。
例えば待つことを、耐えることを、自分を主張しないことを学習する…学習は攻めに通じる。
逆説のようだが、偶然性が強い状況であればあるほど、勘などでは無く学習能力がより重要となるだろう。
現在の危機的情勢こそ、自分の中に眠っていた野生を呼び覚ますのに、これ以上の好機は無い。
お金の価値を見直すと共に、「では価値の変わらないものは?数字に支配されないものは?」と問い質すのにも。

* 2020年、新型コロナウイルスが世界中に蔓延。2022年、ロシアがウクライナ侵略。2023年、ハマスとイスラエルの戦争。



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