ハローサマー・グッドバイ (ネタバレしません!)
著:マイケル・コーニイ 訳:山岸真
河出書房新社
オチがスゴいSFといえば有名なのは「猿の惑星」だ。有名過ぎて、映画を観たことなくてもラストは知ってるという人のほうが多そうな勢いだ。もっとも、これは本人にとっても作品にとっても不幸なことかもしれない。僕は幸いにもオチを知らずに映画を見ることができてものすごいカタルシスを得ることができた。
本作も「オチのすごさ」が有名である。Amazonのレビューをみたら、ほぼみんなそこに触れている。たしかにそう来たか! というものであるが、レビューの中にはネタバレしてしまっているものもあったり、ヒントをほのめかしているものも多かったので、本書未読の方は気をつけられたし。
もっとも本作はオチだけの一発狙いでもないのであって、SFでもあり、青春小説でもある。SFと青春というのは一見そぐわない気もするが、うまくプロットがしてあり、SFの舞台設定のなかでしっかり青春している。この青春がいかにも往年の海外小説という感じで、今となってはセピア的な感じもしてなかなかこっぱずかしいのだが、このベタでピュアな思春期のひと夏に読者を誘っておいて、いつのまにか伏線を張り巡らせているという、じつはミステリー小説としてもよくできている。
本作、SFファンの間では長いこと知られた作品だったらしい。ただし日本では翻訳本がずいぶん前に絶版になり、幻の作品になっていたとのこと。それが8年前に河出文庫で復刻したということである。
そういう意味では、復刻されて8年が経っているわけで(続編も翻訳刊行された)、なぜそんな本を今さら手にしたかというと、施川ユウキの読書マンガ「バーナード嬢曰く。」で紹介されていて興味を持ったからである。
このマンガ、読者好きのインサイトをよくとらえられていて抱腹絶倒なのだが、このマンガに登場するSFマニアの女子高生が、SFビギナーのヒロインに本作を勧める。その薦め文句が「おもしろくて読みやすくてかつ 読んだら読書家ぶれるから読め!」というものであった。これは読まねばなるまい。
ちなみにAmazonの「この本を買った方はこんな商品も買ってます」でしっかり「ハローサマー・グッドバイ」が出てきたので、僕以外に買ったヒトがいたことになる。おそるべし「バーナード嬢曰く。」