古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

今アメリカで起きていること

2013-12-04 | 読書
『(株)貧困大国アメリカ』(堤 未果著、13年刊岩波新書)を読みました。(筆者は、参院議員川田竜平さんの夫人みたいです)
 この書で、筆者が主張したいことは、プロローグによると、
【「今この国の三権分立は、かつてないほどの危機に瀕しています。あらゆる分野で大企業の力が強くなりすぎ、ついに議会の権限まで超越してしまった」
ワイデン議員の言葉は本当だった。
 アメリカ通商交渉委員長でもある彼は、自身が監督する立場にあるTPP交渉に関する情報へアクセスすることができないでいる。交渉内容はUSTR(アメリカ通商代表部)が仕切っており、600社の企業代表だけが、閲覧や修正を許可されているからだ。国民の代表である国会議員が交渉内容を自由に見ることもできず、それに関しUSTRと協議する場も与えられていないことに危機感を感じたワイデン議員は、この不条理に真っ向から挑む法案を提出した。
 USTRは、TPP交渉文書をすべての国会議員および許可証を持つそのスタッフに公開すること。交渉内容に関し議員とUSTR双方を協議させ、議員も意見を述べる機会を設けることなどが盛り込まれた内容だ。・・
 「国民の生活を大きく左右する通商交渉分野のトップ議員が、わざわざ法案まで出さなければならないほどすっかり蚊帳の外に置かれている。この異常な状況が、今のアメリカをよく表している・・・TPP交渉一つとっても、日本を含む各国政府が交渉を進めている相手が、かつてのような国家としてのアメリカだと思わない方がいい。今政府の後ろにいるのは、もっとずっと大きな力をもった、顔の見えない集団なのです」】(プロローグから)

【それはアメリカの企業ですか」
「いいえ、多国籍企業群だと思った方がいいでしょう。かつてのように武力で直接略奪するのではく、彼らは富が自動的に流れ込んでくるしくみを合法的に手に入れるのです」
 そう国境はないのだ。メキシコやカナダ、イラクや南米、アフリカや韓国の例を見るとわかるように、アメリカ発のこの略奪型ビジネスモデルは、世界各地で非常に効率よく結果を出している。どこの国でも大半の国民は、重要なキーである「法律」の動きに無関心だからだ。TPPやACTA、FTAなどの自由貿易をアメリカ国内で率先して推進する多国籍企業群はこうした国際法に国内法改正と同じくらい情熱をもって取り組んでいる。】(あとがきより)

とても興味深いこんな事例が載っていました。
第5章「政治とマスコミも買ってしまえ」です。
【米国立法交流評議会(American Legislative Council=ALEC)の存在です。
ALECは、州議会に提出される前段階の法案草稿を、議員が民間企業や基金などと一緒に検討するための評議会だ。小さな政府と自由市場主義を政策の柱としている。
 2011年7月、(弁護士)リサ・グレーブは、匿名のALEC会員から電話を受けた。ALECに関する内部文書に興味はあるかと言う。二つ返事で承諾した。送られてきた文書を開いてみると、それらはALECで作成された800本以上のモデル法案だった。
「ショックでした」
 リサはスタッフと共に送られてきた文書を検証したときのことをこう語る。
「それはすべて、全米各州で州法として導入されている法律の原案でした。実際の条文と比較すると、文章がほとんど同じなのです。なかには一言一句同じものが使われている法律もありました。それはつまり、ALECで承認されたモデル法案を、州議会議員が自分の法案として議会に提出しているということです」
 「信じられません。州民の代表者であるはずの州議会議員が、閉じられたドアの向こう側で企業の望む法案を作成していたなんて。何よりもショックだったのは、こうした民主主義を根底から揺るがすようなことが、国民の知らないところで秘密裏に30年以上も続けられていたことです」
「「フォーチュン500」の上位100企業の半数がメンバーになっています。政策草案を作っていたのは、誰もが良く知っている、多国籍企業の面々でした」】
更に・・・アメリカでは、究極のグローバル化、政治のグローバル化が進んでいるようです。
【2010年1月。
アメリカの政治体系を、根底から揺るがす出来事が起きた。
・・最高裁が5対4で出した「企業による選挙広告費の制限は言論の自由に反する」という違憲判決で、企業献金の上限が事実上撤廃されたのだ。
「アメリカ国民にとっての選択肢は、大金持ちに買われた小さい政府化、大金持ちに買われた大きい政府化、という二者択一になりました」
 この判決にはもう一つ、アメリカの政治を大きく変える要素があった。米国籍でない外国企業でも、PACという民間政治活動委員会を通すことで、匿名で献金できるようになったのだ。これで世界中どこからでも、米国の政策に影響を与えられるようになる。
「この判決はアメリカの歴史を、本当に深刻な形で変えてしまいました。アメリカの政治は、もう国民だけのものではなくなってしまうかもしれない」】
 新たなステージへと進んだ貧困大国アメリカが、後を追う日本の近未来を鏡のように映しだし、岐路に立つ私たちに今、新たな選択肢を投げかけている