古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

デフレの正体

2010-11-07 | 経済と世相
 『デフレの正体』(藻谷浩介著、10年6月刊、角川書店)という本を読んでいます。面白いデータの紹介がありました。

 財務省のホームページにある「国際収支統計によると、『日本の貿易黒字は01年に8兆円。資源高がピークだった07年には、12兆円ですから、今世紀頭の7年間に5割も増えた。世界同時不況の08年には4兆円に急落したが、09年1月を底に再び延び始め、貿易黒字もまた拡大基調だ。

 (日本にとって輸入は)売上に連動する変動費ですから、輸出が減っているのに輸入だけが増えるということにはならない。日本が貿易赤字になるのは構造的に難しい。過去20年以上、輸出の上下に関係なく平均10兆円超黒字を出し続けている。

 所得収支(金利の受け取りー支払い)を見てみましょう。バブルの頃は3兆円程度でした。それが07年には16.3兆円。世界不況が始まった08年が15.8兆円、不況の深まった09年は13兆円まで下がりましたが、それでもバブル期の水準の4倍以上です。

 所得収支に貿易黒字を合わせ、海外援助やサービス収支の赤字を引いた経常収支黒字は、07年には25兆円で史上最高。09年も90年の2倍以上の13兆円を記録している。

 01年~08年の8年間だけで累計138兆円の経常収支の黒字を稼ぎました。

 中国と日本の2国間貿易について言うと、08年の貿易収支は、日本が2.6兆円の黒字(07年も2.7兆円の黒)。ちなみに08年の対米黒字は6.3兆円の黒ですから、中国は米国の4割程度、日本の黒字に貢献している。

 一言注釈すると、この数字は中国+香港です。日本の対中輸出は香港経由が大きいが、中国は日本に直接輸出している。(香港を除いて)中国の数字だけ見ますと日本が赤字です。

 韓国、台湾はどうか。07年、08年と続けてそれぞれ3兆円程度の貿易黒字を頂いて、この2年間、中・韓・台湾の合計は米国を上回っている。

 そもそも日本は韓国や台湾に何を売っているのか?

 韓国・台湾は、日本からモノづくりのためのハイテク部材や機械だけを買っているわけではありません。豊かになった向うの国民が、日本製品の中でもブランド価値の高いものを買い始めているのです。

 洞爺湖サミットに集まったG8諸国(中国、ロシヤ、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリヤ)のうち、この年に日本に対して貿易黒字だった国が3ある。

 どの国かお分かりでしょうか。

 カナダ、フランス、イタリヤで、カナダは資源の輸出で黒字を出しているが、フランス、イタリヤは「ブランド品」で稼ぐ国でした。

 以上の話から言えること。「経常収支をいくら稼いでも国内の景気がよくなるわけではない」(グローバル化の時代、稼いだ人が国内で金を使う保証はないから)。

 もう一つ、グローバル化経済の時代に、発展途上国に追い上げられた時、先進国は「ブランド」で稼がないといけない。