min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

麻生 幾著『ZERO (上中下』

2010-04-10 14:56:41 | 「ア行」の作家
麻生 幾著『ZERO (上中下』 幻冬舎文庫 平成15.8.30 初版 648円+tax

オススメ度:★★☆☆☆

(2001年8月に幻冬舎より刊行された単行本の文庫化)

麻生幾という作家は『宣戦布告』という作品で注目を浴びた作家で、それなりに評価された作家らしいが、あの『宣戦布告』を読んで以来ほぼ“投げた”作家であった。
着想も文体も良いのだが、とにかくエンターテイメントという点においては完全に失格している作家と思ったためだ。

それが先のNHKのTVドラマ『外事警察』の出来栄えが素晴らしく、その原案(決して原作ではない)が同作家の『外事警察』とあげられていたので、ひょっとしてこの手の分野(公安警察)では面白いものを書いているのでは?と
期待したのであった。
本作はNHKのドラマにもちょこっと名前が出てきた“ZERO”という、公安警察でも更に“裏の公安”といわれる謎めいた存在の組織の呼称である。
実在するとは思われないのであるが、似たような組織は現存するかも知れない。
同書で設定されたZEROという裏の公安組織は終戦直後につくられ、特に対中国の諜報活動が行われた。
その中国との間に封印された“陰謀”が47年後に解かれることに関し、公安警察官峰岸が遭遇する陰謀と裏切りの数々は確かに面白いのであるが、あまりにも現実味に欠ける。
陰謀そのものの中味はあり得るのであるが、物語の展開があまりにも稚拙であり読者にリアル感を与えないのだ。
先に述べたが同作家の着想はある程度評価出来るのであるが、エンタメ小説作家としてはとうてい及第点をあげるわけにはいかない。
膨大な資料を漁った力作であるのは解かるが、やはりこの作家はいただけない。
NHKドラマ『外事警察』が秀逸であったのは、原作ではなく脚本が素晴らしかったせいであることを再確認した。


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