緩和ケアで行こう

へなちょこ緩和ケアナース?!のネガティブ傾向な日記です。

医療用麻薬の管理について

2012-01-28 04:21:14 | ケアの感覚

前回の記事で、オプソ(モルヒネ塩酸塩の速放製剤)の空包の処理はどうしているのか、という質問を投げかけさせていただきました。

実は、これに関しては、ずっと感じていたことがありまして。



医療用麻薬の管理は、非常に、非常に厳密さを要求されているところです。
緩和ケア病棟のように、大量に医療用麻薬を扱う部署では、管理の方法は手馴れているところがある一面、
緊張感に欠けてしまうときがあり、トラブルを起こすと、ぞくぞくっとするくらい、怖さを感じるところがあります。


医療用麻薬の管理については、これまで、いくつかの病院に勤務してきましたが、病院の決まりごと(実際は、薬局または薬剤部の決まりごとなのでしょうか)に従ってきました。


ところが、
今の病院に来て、疑問に思うことがでてきました。

それが、
オプソの管理です。


前病院では、オプソの空包は廃棄していました。
つまり、使用が終わると、ゴミ箱に「ぽいっ」していたのです。

今の病院では、オプソの空包は、医療用麻薬の空アンプルのように厳密に扱われていて、空包まで置いておいて、数を合わせて薬剤部に返却しないといけないのです。
ですから、空包が足りないと、「事故届」を提出することになります。


でも、
事故届が必要なくらい重大なことなのに、どうして施設間で違いがあるの?という疑問をずっと持っていました。



私は、これまでずっと、自治体によって医療用麻薬の管理は違いがあるのだと思っていました。


それが勘違いだったと気が付いたのは、厚生労働省と自治体が主催する講習会に参加した時のことでした。


厚生労働省のお役人さんと、県の薬務課のお役人さんがいらっしゃる場でしたので、率直に質問させていただきました。
どうして、オプソの管理が施設によって違うのか、それは、自治体によって違うものか、と。




そしたら。
モルヒネ塩酸塩のような空アンプルについては、返却は絶対ですが、オプソの空包については、返却しないといけないという規則はない、とのことでした。
座長さんからいただいたコメントとしては、
「それは、薬剤部のやり方によるものでしょう」とのことでした。



あららーーーー。
私の不勉強。



そうなんやーーーー。
それって、薬剤部のやり方だったのだーーーー。


座長さんの気配りで、会場の参加者のみなさんに、オプソの空包を返却しているか、廃棄しているかを挙手してもらうように質問してもらえました。
ざっと見積もって、
返却しているが30%くらい、廃棄しているが70%くらいだったでしょうか。







ここで、オプソの管理について思うことを挙げてみます。

1)オプソの空包は捨ててもよいものなのに、保管しておかないといけないと厳密に管理することは現場に必要以上の緊張感と負担感を強いる。
2)捨ててもよいものなのに、保管できていないことによって、「事故届」を求められることによって、管理できていないという烙印を押されるような気持ちになる=医療用麻薬の事故は、事故を起こした者にとっては「超・へこむ」できごとです。
3)捨ててもよいものは捨てて、医療用麻薬の保管の規則に則って、保管しないといけないものに対する労力を注ぐべきではないか。
4)オプソの空包の管理(=勤務帯ごとに員数点検すること)の時間と手間がかかる(これは現場の看護師が一切を負っています)=本来は必要ないことに労力を注ぐことになる
5)オプソの空包を保管しておくと、空包に残った薬液が保管の容器に漏れ出して、容器がべとべとになったり、夏場はカビが生えていた=非常に不清潔
6)空包の数を数えるときに、手に薬液が付着して、べとべとになる。


以上のことは、自分が思う問題点ばかり挙げましたが、さらに思うことがありまして。
オプソの管理については、病院によって違いがあるとはいえ、決まりは決まりなので、決まりを守れないこと自体に問題があるのではないか、ということも気になるところです。

実際に、当病棟では残念ながら、医療用麻薬の事故がちらほら起こっています。



リスクマネジメントの観点から、事故を起こさないために規則を厳しくして、事故を起こした時には厳密に処理されることによって、抑止力を働かせて事故を防ぐといったことも、方法のひとつかもしれません。



しかし、事故防止のために、抑止力を強めて、単にそれに従うといった方法は、よい方法とは思えません。



実のところ、私は医療用麻薬の管理については、不当に負担感を負わされているといった感覚があります。
そこのところは、自分の考え方と、薬剤部や部署のスタッフとの感覚のずれがあります。
このことについて、深く考えている看護師は全くいません。
医療用麻薬の取り扱いについては、病棟独自のマニュアルを作っていつでも確認できるように、ファイルも作成しました。
事故が起こらないように、注意を喚起する意味で、迷った時に、いつでも思い返せるように、ファイルを作成しました。

そして、医療用麻薬の管理について、トラブルが起こると話し合いを持つようにお願いをしましたが、そのお願いに対する反応がありません。
ファイルを見てくれる看護師は皆無です。
(ほぼ、関心ゼロ)
とほほーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ。







医療用麻薬の管理が十分に行われていないところは、そこが問題だと思っています。


ですから、
自分の部署での医療用麻薬管理について思うところは。

1)薬剤部が現場での医療用麻薬の管理方法について現場任せにせずに、薬剤部も実際的に参加すること。
2)看護師は医療用麻薬の管理について病院の規則に単に従うだけではなく、規則の「根拠」、医療用麻薬の管理方法そのものに関心を払うこと。






できるだけ客観的に、医療用麻薬、つまりオプソの管理について記載したつもりですが、実際には施設全体の体制の問題が根本にありまして、うまくいかないのは避けられないと思っています。
(きっと、自分がどう働こうが、うまくいかないということ)


この類のことって、「うちの病院の信じられないこと」はどこの病院にもあることと思っています。


病院という組織は、医療用麻薬の管理に限ったことではなく、人の命、人の人生を扱う非常に繊細な組織であるにもかかわらず、そこのところに非常に無頓着な、非情なものが存在します。




あれ。
ちょっと、本題とずれてしまいましたね。




ぼそっ…と、
私の言いたいことというのは、医療用麻薬の管理は、病院の医療用麻薬管理に関する責任者とスタッフの考えによって、管理の方法が違うので、そこのところをまずは把握しておこう、というところでしょうか。




悶絶する患者さんを放っておけない

2012-01-08 02:48:35 | 日々の「ケア」

 昨日、横田さん(仮称)が外来にやってきた。


 うちの病院の緩和ケア科外来は残念ながら、マンパワーの不足で外来フォローを行うことができません。
 緩和ケア病棟への入院を受け入れるための外来しかできません。
 ですから、ご本人が外来にやってきても、もともと患者さんを診てくださっている病院でのフォローをお願いして、入院の時期がきたら受け入れるという形をとっています。
 ですから、うちの緩和ケア科の外来は家族診という形をとります。
 患者さんが受診されることはわずかです。


 横田さんは例外でした。

 
 外来フォローができない緩和ケア科外来しか開くことができていない状態では、緩和ケア科外来にご本人が受診されるときには、正直にいうと、私はどきっとします。
 化学療法などの治療ができなくなった段階で早めに受診してくださる患者さんも増えました。
 ご本人やご家族にとっては複雑な気持ちであることには違いないのですが、そのあとの時間の過ごし方を考えると、医療者としては望ましいことだと思います。


 なぜ、私がどきっとするかというと、患者さんがうちの緩和ケア科外来を受診されるときには、横田さんのように「例外」の場合があるからです。


 それは、もともと治療を受けているまたはかかりつけ医としての病院があるにもかかわらず、入院を希望されて受診されるからです。
 理由は、ひとつ。
 
 かかりつけ医となる病院から十分なケアを受けることができないから。




 横田さんがそのような感じでした。



 外来の診察室にご案内するために声をかけた時、横田さんの表情はこわばっていました。
 このままでは診察室へ歩くのも難しいのでは、と思えたので、すぐさま車椅子を持っていきました。
 横田さんは、車椅子に移るときに、「あああああっ」と大きな声を出しました。

 痛くて痛くて、悶絶しておられました。


 診察室に移っていただいた後、事情を伺いました。


 ご家族はとにかく、うちの緩和ケア病棟での入院を希望されていました。
 
 正直にいうと、うちの緩和ケア病棟では緊急入院の受け入れはないので、困り果てました。
 うちの外来を受診される前日、この地域のがん拠点病院である病院を受診されておりました。そこには、緩和ケア科外来があります。
 しかし、その病院の緩和ケア科外来を受診されることなく、なんらかの痛みに対する手立てが施されることなく、当院に紹介となっていました。
 その、前日。
 ご本人にその病院の医師から説明がありました。
 
 「もう、治らないのだから、残りの時間を大切にするために、緩和ケア病棟に行きなさい。」
 

 横田さんはがんであることは知らされていましたが、「治る」と思っておられたそうです。
 
 前日に相当な衝撃を受ける説明を受けられたその翌日。
 痛みに悶絶しながらうちの外来を受診されました。




 緩和ケア医とともに、ポンは唸りました。



 時間は17:00を過ぎている。


 どうも、痛みとともに吐き気を訴えておられる。ひょっとして、肝臓がんなので、血腫で肝被膜が伸展されて嘔気を訴えているのでは…、ひょっとして、予後がすごく短いのでは…。


 緩和ケア医は一般病棟への緊急入院を考えていました。
 病院のシステムとしたら、それが筋ですが…。


 病院の現状と、3連休を考えると、一般病棟での緊急入院よりも緩和ケア病棟への入院が妥当だと、私も緩和ケア医も判断しました。




 病棟に連絡を入れて、緩和ケア病棟での緊急入院を受け入れました。

 病棟は緊急入院の受け入れで、どよよーんとした雰囲気。
 入院の受け入れを手伝ってくれたのはとてもありがたかったけど、受け入れを担当してくれるスタッフは誰もいなかったので、ポンが担当することになりました。



 そして、検査をした結果。
 横田さんは、高カルシウム血症、高アンモニア血症であることがわかりました。
 疼痛は治療で入院後1時間で、半分に減りましたが、予後としてはかなり厳しい状態。
 翌日である、今日、昨夜を七転八倒しながら過ごした横田さんは、ご家族との話し合いによって、鎮静になりました。



 緩和ケア病棟のスタッフからは、緊急入院の受け入れがあったことに非難の嵐。
 




 この経過で思うことが多々。


 


 うちに紹介される前に受診されていた病院ではなぜ、何もケアがなされなかったのか。
 苦渋の決断であったにもかかわらず、非難という形でスタッフから業務優先の意見が出たことへの悲しさ。


 


 横田さんにできることは限られていますが、あの悶絶するような状態でご家族ともに、悲鳴を上げるような時間を過ごさなくて済んだということに、今回の入院はこれでよかったのだと、受け入れは間違っていなかったのだと、私は思います。
 ただ。


 周りには不穏な空気が漂います。

 それは常に漂っていることで。
 



 横田さんが今晩、少しでも楽な時間を過ごせることを願いつつ…。






 私の今の病院でのモチベーションは底をつきつつあり、限界を感じています。
 四面楚歌です。
 患者さんが前病院で何らかのケアを受けられなかったことはとても、とても残念ですが、それよりもスタッフの反応がとても悲しいです。
 

 
 

年始

2012-01-04 00:02:43 | 日々

 あけましておめでとうございます。
 今年も、このブログにおつきあいいただけると、とっても嬉しいです。


 また、「今年」が始まったっ。

 今年は自分にとって「動く」年にしたいと思います。
 さて、どう動くのやら。


 ますます寒くなってきていますが、みなさま、お体に気を付けて。