森の詞

元ゲームシナリオライター篠森京夜の小説、企画書、制作日記、コラム等

ファンタジー小説の難しさ① ~世界を創る~

2008年01月20日 | 小説を書く、ということ

 小説には様々なジャンルがあります。
 現代小説、恋愛小説、ホラー小説、推理小説、歴史小説等々。
 それぞれに特有の難しさがあることは言うまでもありませんが、その中でも今回は、ファンタジー小説の難しさについてお話します。

 さて、ファンタジー小説の利点とは何でしょうか。
 それはやはり、現実には有り得ないものを書くことができる。この一点に尽きると思います。
 魔法、ドラゴン、タイムマシン、不老不死……いずれも現実世界における常識の枠を超えた事象・存在です。少し言い方は悪いですが、作者は緻密に巧妙に嘘をつき、世界を創り上げていきます。読む者は巧みな嘘に想像力を刺激され、創られた世界に惹きつけられます。

 現実を舞台とするならば、世界を創る必要はありません。
 職場や学校、地域社会など自分のよく知る世界は勿論、例え知らなくても取材等で補えばいい。それは歴史小説においても同じことです。場合によっては作者が作中に書かなかったことまで、読者は自身の知識・経験で補ってくれるため、作者と読者は比較的容易に世界を共有することができます。
 一方、ファンタジーは世界を一から創らねばなりません。
 仮に現代日本を舞台とするなら説明するまでもない、国の成り立ちや文化レベル、民の生活水準、服装や食物に至るまで。実際には作中に書かずとも、自身の中に明確な世界を創るか否かで、仕上がりに雲泥の差が生じます。

 しかし、読者はあくまで現実世界に生きている。
 ここを失念すると、どんなに完璧に世界を創り上げようとも読者を惹きつけることはできません。

 次回に続きます。


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