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ユニット企画《UNI》「2WAY」(作・演出 あつみ空光 於アトリエSーPASE) 80点

2012-07-19 14:19:17 | 演劇遍歴

何の知識もなく、見てしまった劇団。祝日にしては少ない観客数。(劇場も超小さいが、、) 最初前置きの話が広島と長崎の原爆投下の話である。観劇の際のご注意かなあと思っていた僕は少々驚き。

そしてある放送局の原爆取材がコミカルに始まる。広島と長崎の二重被曝という重い主題をテーマに観客に寄り添うように親近感を持って物語は進む。

登場人物は7,8人なんだが、みんな見事にセリフを噛んでいる。一人二人だとよくあることだが、ほとんど全員が噛んでいる。不思議だなあと僕は思う。でもそんなことを忘れさせてくれる中味の重さである。

昨年だったかNHKで、この二重被爆の人の話を僕は見ている。この出来事を海外で笑いにしたということがかなり問題になったことも覚えている。意外と日本人にも知られてはいない出来事なのである。

広島は充分周到に吟味されて原爆を落としたのに長崎は割といい加減に落としてしまったこと等、僕たちの知らないこともこの舞台で知る。その長崎でも原爆慰霊碑のある広場と爆心地の浦上天主堂とは距離があるらしい。浦上地区はそもそも差別地区だったらしいこと、天主堂はのちに解体したのに広島の原爆ドームは残されたことの相違等が語られる。

ドキュメンタリー番組で長崎の浦上天主堂の焼けただれたキリスト像はアメリカへの配慮で画策されたこと、そして長崎には外国人の捕虜収容所まであったということを僕は知っていた。

確かに原爆となるとヒロシマの方がみんな印象深いのではあるまいか、という事実、、。

舞台のラストは二重被曝の当人がヒロシマから逃げたことを悔いていたが、ヒロシマの姉一家の消息を知り、心が融解し、泣き崩れるシーンが見事である。そしてほとんどの観客が泣いている。それは熱い美しい涙である。こんな舞台の若い人たちが原爆のことを真剣に考え舞台にしているのに、僕のような年寄りがただそれを眺めている。ただ涙を流している。自分はたただの傍観者になり下がっているだけではないのか。

舞台は実に2時間ほどの長時間であった。いいたいこと、やりたいことを舞台にすべて込めようとした結果長くなってしまったのではないか。荒削りで、俳優のセリフのかみ方も目立ったが、僕はそれ以上に彼らのこのテーマへの追求の心情を買いたい。立派である。彼らを前に僕が苦言を言える存在ではない。

今年春に見たコンブリ団の「ムイカ」という演劇もヒロシマを描いたものだった。これら若い人たちの気持に強く感動した舞台であった。


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