いま味わっておきたい昭和

熱海にはよく出掛けるが、昭和27年創業の『ボンネット』は（日記を振り返ってみたら）４年半ぶりの訪問だった。三島由紀夫、谷崎潤一郎といった文豪や越路吹雪やトニー谷、美輪明宏といった芸能人も贔屓にしていたという喫茶店だ。
昨日は「目玉焼きナポエッグ」（900円）を注文。ナポリタンは老舗だけにケチャップ、ハム、玉ねぎといった王道かと想像していたのだが、ケチャップ感は薄く、また具にはミートソースのように挽肉が使用された独自のスタイルだった。そして、目玉焼きの黄身を崩して麺と一緒に食べると、ナポリ感は一層薄れ、カルボナーラ的な味わいもやってきて、とてもおいしかったのだ。
これを作っているのが、たぶん80歳半ばのお父さんである。
後から何組もやってきて、出来上がりが滞ってしまったが致し方あるまい。「少し時間がかかってしまいます」という声に、みんな快く頷くのであった。

ここも後継者の姿は見当たらない。今のうちに昭和遺産をたっぷり味わっておきたい。







こちらは『ナポリタン』（750円）