湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

美食の道を行かん

2007-09-11 01:12:30 | 湘南ライナーで読む


立原正秋著『美食の道』(角川春樹事務所/グルメ文庫)は、小説家である著者の書き記した食にまつわるエッセイを集めた書である。
「グルメ文庫」で「美食」というと、いかにも贅沢の極みの豪華料理をイメージしてしまうが、そういった内容では決してない。
「美食」というよりも「うまい食べ方」を探求した“生き方”の本という趣だ。
高価なものがうまいのではなく、たとえ質素なものであっても、その食材の旬にふさわしい作り方、食べ方をすれば最高級なものになる。そして、それを日常としている著者の生き方は少々頑固だが、実に清清しいのだ。
「東京で売っている魚は前日あがった魚である」から、どんなに高級店であっても鯵のたたきなどはうまいはずはないと。
ごもっとも!
これは序の口で、言いたいことをズバズバいう包丁さばきが心地よい。中には、人も店も名指しで一刀両断。戦後の高度成長期に書かれたものだが、著者が現代に現れたら切り刻むものが多過ぎて、この本は何十倍もの厚さになっているに違いない。
夕刻の会議で出た味の濃い大きな弁当を完食し胸焼けしている僕なども、みじん切りにされるはず。
この日記の『食べたり飲んだり』のくくりなどは、『美食の道』の対極。『B食の道』ですね。

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