ありがとう、ごめんなさい

「すみませ～ん」

後ろの方から女性の声が聞こえる。
逗子の小坪に下りていく道だ。振り返ると、クロネコヤマトの事務服を着た女性が走ってくる。歩道には誰もいないので、どうやら僕を呼んでいるようだ。

「あの～」
手に何か持っているぞ。

見覚えのあるタオルハンカチだ。
「あっ、あ～！すみませ～ん」

僕も引き返して、彼女からそれを受け取る。
どうやら、さっき通り過ぎたヤマト運輸の前で落としたらしい。建物は敷地の奥にあったので、僕が落としたのを中から目撃してわざわざ追いかけてきてくれたのだろう。

「あ、ありがとうございます」
僕は深々とお辞儀をした。本当にいい人だなぁ。
「いえいえ」と彼女は笑顔で応えてくれたが、それがちょっと引きつった笑顔だったことを僕は見逃さなかった。
そのタオルハンカチ、ややウエッティだったのである（笑）。今日も暑かったからねぇ。
そう、さっきヤマト運輸の前で、僕はバックから新しいハンドタオルを取り出した。そのとき落としたのだから。

走って坂を上って行く彼女の背中に、僕はもう一度お辞儀をする。
「ホンットにごめんなさい」

たぶん、事務所に戻った彼女は、真っ先に手を洗ったと思うけど。


写真は、九品寺にて。ウエットなタオルより、草履の世話のほうが数十倍もたやすいね。
ちなみに、このあと僧侶たちは“お練”で光明寺に向かった。昨日今日明日と「お十夜」の法要だ。




このあたりは古い建物も多い。


さっきまであふれていた人はみんな本堂へ吸い込まれていった（笑）。おっと、この写真は1847年に建立された山門から。今日は公開されいてラッキー！


山門の上から海も見える。