列車の車窓は心の窓

我が家の住人は電車がとても好きなので、車がありません。電車とバスで出かける日本の旅

'06年末の旅(10) 鯖湖湯(1)

2007年01月28日 | 全国の私鉄と第三セクター鉄道を訪ねる旅

12月30日(土曜日のち曇り

 (その9)のつづき

 (その10)

 今日入った外湯「鯖湖湯」の建物です。美しい建物を見ただけで期待感がわいてきます。

 鯖湖湯は、飯坂温泉で最も古い外湯です。かの松尾芭蕉も、奥の細道の道中ここに入浴したといいます。その時の出来事は、次のような文章で綴られています。

 ”其夜飯塚にとまる。温泉あれば湯に入て宿をかるに、土坐に筵を敷て、あやしき貧家也。灯もなけれバ、ゐろりの火かげに寝所をまうけて臥す。夜に入て雷鳴、雨しきりに降て、臥る上よりもり、蚤・蚊にせゝられて眠らず。持病さへおこりて、消入斗になん。
 (注:「飯塚温泉」とあるのは、今の飯坂温泉のこと。)

 温泉につかった後に借りた宿は、「灯」もない「あやしき貧家」だったといいます。雨漏りはする上に、蚤や蚊に苦しめられたそうです。(注:”あやしき”は、”粗末な”の意味。)

 これだけ読むと、飯坂温泉はたいした事もなかったのかと思います。しかし江戸時代、今のように安心して長旅をすることなど無理でしょう。ということは、飯坂温泉だけひどかったわけではないはずです。

 立石寺における芭蕉の筆は、困難な道中においても心は平静を保ち、ほとんど神々しい境地に達しています。それに比べると、飯坂温泉におけるそれは、「あ~しんどい」というような気持ちがストレートに出ていて、実に素直な文章だと思います。「奥の細道」は、この二つの対比が魅力です。

 つづく

 


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