しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

木星買います アイザック・アシモフ著 山高 昭訳 ハヤカワ文庫

2013-03-22 | 海外SF
昨年末からのアシモフ作品読み直しの流れに乗りブックオフで見つけ105円で購入。

この作品集も、アシモフが1950年代に執筆して他の短編集に収録されていなかった作品を集めアシモフの短文も入れて上げたもの。
編集者に「アシモフの作品に駄作はない!」とおだてられて応じたようですが、1975年段階ではそうでも、2013年現在ではきびしい作品がかなり含まれています。
米ソ冷戦構造とか社会情勢が変わっていますしね。
変わってもできのいい作品は十分読むに堪えますが、今一つのものはちょっと....。
この辺の作品を残さないでいい作品だけ残した方が現在の評価ももっと高かったような気がします。

内容(裏表紙記載)
銀河のかなたから地球を訪れた、人類よりはるかに高度な異星人は奇妙奇天烈な取引を申し出た-太陽系最大の惑星である木星を「買いたい」というのだ。はたして異星人の真意は?-表題作ほか、光の彫刻家として名高い貴婦人が、なぜロボット技師を殺したかを描く「光の韻律」、雨を極度に嫌う奇妙な隣人の話「雨、雨、向こうへ行け」、小説を書く猿とSF作家の対決を描き出す「猿の指」などヴァラエティゆたかな珠玉の24短編を収録。さらに、「作者一流のユーモアとエスプリに満ちた語り口で作品の舞台裏を披露する楽しいエッセーもまじえて、巨匠アシモフ博覧会の開催!

「ダーウィンの玉突き場」
生物の進化について複数の人間が語るというもの。
それぞれの考え方はそれなりに面白いですが、「核」への啓蒙が明らか過ぎるラストです。
狩人の日
ちょいと変わったタイムマシンもの+生物の進化というテーマ。
着想は面白いですが、これも最終戦争に対する啓蒙が明らか過ぎるラスト。
(本人も書いていますが、あまりの明らかな教訓的結末は興ざめです)

「シャー・ギード・G」
未来だか過去だかわからない設定のアトランティスもの。
遊び心があって、余裕をもって書いている感じでなかなか楽しめました。

「バトン、バトン」
アシモフ得意の(この手の短編を最近何度も読んだ気がする...)マッドサイエンティストかつ若干ミステリーがかった作品。
本人いわく「ユーモア」を描きたかったとのこと。
力が入り過ぎるとだめな感じがします、今一つかなぁ...。
「猿の指」
SF作家と編集者をめぐるドタバタをユーモラスにという感じですが、パンチが今一つかぁ。

「エヴェレスト」
エヴェレストが初登頂される前に書かれたお話。
アイディアだけで書いたなーという感じ。
ある事情から「エヴェレストは決して登頂されないだろう」と書いて売った2ケ月後にはテンジン・ヒラリーが初登頂を果たしています。
本人もよく講演で引き合いに出している作品とのこと。

「休止」
これも「核」への恐怖が行き過ぎている作品。
展開も安直といえば安直
現代でも「核」はもちろん恐怖なんですが、麻痺しているんでしょうね。
70年代くらいまでは米ソ冷戦という単純な構造だったので「核」に目がいったんでしょうが、現代は群雄割拠ですから人間ドラマ的な方に主題が移っている気がします。

「望郷」
これも「核」もの。
いろいろ心配だったんでしょうね。

「それぞれが開拓者」
ある惑星に不時着した宇宙飛行士がであったものは...。
アイディアは面白いと思いますが、前段の伏線があまり生きていない感じ。
ちょっと雑か?

「空白!」
タイムマシンもののショートショート、ちょっと安直な感じ。

「蜜蜂は気にかけない」
アイディアも面白いですし、なかなかフンタジー。
短くまとまっていていい作品と感じました。

「ばか者ども」
ショートショート、初期短編集で出てきた銀河連盟ものの設定か?
アシモフ本人も言っているようにこれも「核」危機感もの。

「木星買います」
タイトル作品なので期待をして読んだのですが...。
肩すかしにあった気分です。

「父の彫像」
タイムマシンものの変形、マッドサイエンティストものもちょっと入っているか。
アシモフ、なかなかストレートにタイムマシンもの書きませんね。
着想面白いなと思いました。

「雨、雨、向こうへ行け」
SFというかファンタジーという感じ。
ブラッドベリが書いたらもっと詩情が出るんでしょうが...。
アシモフはこの手の者苦手な気がします。

「創建者」
アシモフがSFから遠ざかっていた時期にお題を与えられて書いた作品とのこと。
ちょっと無理があるような感じを受けました。
「地獄への流刑」
久々にキャンベル向けに書いた作品。
オチありきですが、キャンベルが掲載誌の紹介文でばらしてしまったとのこと。
知ってしまったら興ざめですね、でもまぁその程度の作品ということ。
「問題の鍵」
マルティバックもの。
ロボットものに近い味わいのショートショート、軽い仕上がり。
「適切な研究課題」
ショートショート、ミステリー的要素もあるか?
まぁライトな作品ですね。

「2430年」
1984的管理社会を描いたショートショート。
アシモフらしい科学的な根拠に基づいた数字が妙に生々しくて不気味です。

「最大の資産」
2430年が出版社に不評で、同じ「2430年」のお題で少し明るく書き直したもの。
アメリカンな味わいですが、まぁいい作品だと思いました。

「好敵手」
宇宙旅行もの。
軽く楽しめる作品、スマートにまとまっています。

「チオモリン、星へ行く」
チオモリンもの。
広瀬正の短編に同じような展開があったような....。
これも軽く楽しめます。

「光の韻律」
ロボットもの。
USロボット社やトラヴィス技師が出てきます。
「われはロボット」の世界観を引き継いだ作品、ミステリ仕立てです。
本人いわく2時間半で仕上げたとのこと。
そうは思えない出来ではありますが、オチは途中から予想がつきました。
(21世紀の読者はいろんなものを読んでスレています。)

この作品集も絶版ですが、これを復刊する意義は.....まぁないでしょうねぇ。

それより「鋼鉄都市」「神々自身」を復刊して欲しい。
ハインラインの長編などはまだ結構残っているのにハヤカワ文庫のアシモフラインナップかなり細っていてさびしい。


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