白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

うぐいすの声は過ぎぬと思えども

2016-05-31 | 画廊の様子
生まれたての緑がいっぱいにきらきらしている夏の初めが好き。
私は花のお江戸の真ん中に暮らしている女の子。
名前は・・・「おちゃっぴー」おとっつあんとおっかさんが私をそう
呼ぶの。
この振袖、似合うでしょう?
良いご縁に恵まれますようにっておとっつあんが無理をしてあつらえてくれたの。
小さい頃から私の一日は大忙しよ。手習い所に行って読み書き習って、少し大きく
なってからは手紙の書き方や和歌も勉強してね、今はそれに踊りや三味線やお花にも
通っているの。そりゃあ、もうたいへん。
おっかさんは何よりも私の幸せを願っているの。ありがたいけれどね、まだまだ
やりたいことがたくさんあるの。
お伊勢参りや江の島詣でやね、この振袖を着てお芝居にも行きたいわ。
今日もね、お風呂の帰りにお友達と団扇をもって蛍狩りに行く約束をしたの。
あの源氏物語の蛍の場面素敵なんだもの。あこがれちゃう。
本もたくさん読みたいわ。いつも、貸本屋さんに頼んであるの。順番が待ち遠しいわ。
幸せな結婚はまだまだ先よ。一生懸命勉強して御殿奉公の試験を受けてみたいし、
あのお七さんみたいな恋もしてみたいわ。
私の夢はもう、止められないほどにふくらんでいくのよ。
私はお江戸のおちゃっぴー
ぽっぴんを吹きながら先の事いろいろに考えると胸が熱くなってしまうのよ。
                   

  うぐいすの声は過ぎぬと思へども染みにし情なほ恋ひにけり
                      大伴家持

今日の一枚の絵  ぽっぴんを吹く女  喜多川歌麿    木版

歌麿はこの少女をなんておおらかで清らかな表情と仕草で描きだしたのでしょうか。
どんな美しい大人の女性に成長していくのか楽しみにさえ想像させられてしまいます。
                             s・y