白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

夕空はれて

2014-08-30 | 画廊の様子
大きな台風が日本列島をゆっくりと縦断して行きました。
とてつもない大雨の被害を各地方にもたらし、たくさんの尊い命が
失われました。
この嵐が去った後にはぶ厚い雲の群れが突き破られてぱっと青空が
広がり、吹き渡る風も心なしか涼やかになって来ました。
深い悲しみと苦悩に見舞われた方々に心の支えと形ある援護の手が
きちんと届けられますように願わずにはいられません。

真夏の太陽に育てられた草花も少しずつ疲れて来たようです。
朝夕歩く道端の足元からはまだまだ小さいけれど様々な虫の音が
聞こえてきます。
季節はある意味、残酷です。
何事もなかったように動いて自然の秩序を守り通します。


お盆のあとのある日、時々、散歩に出かける農場の並木の端っこに
不思議なかたまりが揺れていて、雨上がりの夕陽にキラキラして
いました。ちくちく動いているように見えたのでそっと近づくと、
蜂の巣でした。キヤー!!!おおきい!!!
逃げ帰って一週間後にこわごわ行ってみるとそれは撤去されていて
「危険近づくな」と書いてある段ボールの切れ端がありました。

あの蜂さんのお家は何処に持っていかれたのでしょう。
ずいぶんみんなで力をあわせて作ったでしょうに。

寺田寅彦の「蜂が団子をこしらえる話」を思い出しました。
………せっかく美しく出揃った若葉はいつの間にか悪い昆虫のために
食い荒らされる。なかんずく一番ひどくやられるのは薔薇である。
羽根が黒くて腰が黄色い小さな蜂がやわらかい若芽の茎の中に卵を
産み付けると……

作文のお手本として教科書に載っていましたわ。
鋭く辛抱強い観察の眼、的確で簡潔で豊かな文章力、
小さな生き物、命、自然を優しく見守る目~などなど。
う~~~。難しい。s・y

………虫のすることは実に面白い。そして感心するだけで
決して腹が立たない。
私は人間のすることを見ては腹ばかり立てている多くの人達に
わずかな暇を割いて虫の世界を見物することをすすめたいと
思う。 大正十年七月  寺田寅彦
     伝説の警句  天災は忘れたころにやって来る


 六月、この農場で採れたての小さなイチゴをはちみつで軽く煮ました。
 それはそれは美味しいデザートでした。 

今日の一枚の絵 「ひともし頃」 鏑木清方 大正2年
               明治の美人画  複製版画


銀河の向こうに

2014-08-06 | 画廊の様子
賢治先生は宿直の晩に、生徒たちを誘ってはよく散歩に出かけました。
花巻農学校の教え子の一人、小原忠さんのお話です。
「行先は野原、夜空に天の川がぱぁっとかかり流れ星も飛びました。
~銀河鉄道の夜~はあの夏の夜空から生まれたのではないか、そして
銀河はあの時の天の川で、鉄道は先生の大好きだった岩手軽便鉄道では
ないでしょうか。
賢治先生の頭の中は童話や詩でいっぱいだったようです。」と。

岩手では北上川が北から南に流れその天上を天の川が流れています。

「銀河鉄道の夜」の初めの‘午后の授業‘では
  先生は黒板に吊るした大きな黒い星座の図の上から下へ
  白くけぶった銀河帯のようなところを指しながらみんなに
  問いをかけました。………
 
 「大きな望遠鏡で銀河をよっく調べると銀河は大体なんでしょう。」
 
………やっぱり星だとジョバンニは思いましたが………

賢治は地上では実現しえない美しい真実のものを銀河の向こうに
あると信じ、星粒の一つ一つに今は亡き愛する人達の面影を
探していたのではないでしょうか。
地上の世界と天上の世界のどちらに賢治は自分の身を置きたかった
のでしょう。
                         
今日の一枚の絵  「星祭り」  竹久夢二  リトグラフ



奈良時代に遣唐使が持ち帰った朝顔の種は、漢名牽牛子~けんごしと
呼ばれ牛一頭と交換されるほどの高価な生薬でした。牽牛子に因んで
和名朝顔~あさがおなので江戸時代には織女を朝顔姫と呼びました。
七夕のごちそうは朝顔寿司にしましょうか。花の形に抜いた
寿し飯にピンクのそぼろ、花の芯にはほろほろ卵。 s・y