恋の方程式が解けません in goo

よくわからないまま引っ越してみた?

こういうのはありかしら?

2016-10-27 07:36:37 | 日記
毎年、この季節になると近所で、稲が終わった田んぼでは花フェスタと称して、

ひまわりとコスモスが植え付けられる。

で、ちょうど、今週の末に、ささやかなイベントが行われる。

もちろん、近所なので、よく通りかかり花が開いていく経過をしっかりと、

見ていられる。季節的には少し遅く感じられるが、黄色の絨毯を目の当たりに

してしまうと、そんな違和感も吹っ飛んでしまう。

昨日、地元新聞でこの様子が掲載されたので、ちらほら見物客の姿が現れ始めた。

これは、その向日葵の顔が揃い始めた時の話。

朝焼けの綺麗な晴天の日。僕は、畑に向かう途中、田んぼに無造作に植え付けられた

向日葵の黄色が目に入り、今年の咲き具合の確認にいこうと思い立つ。

特に、このプロジェクトに関わりがあるわけでもないが、

日頃、懇意にしていただいてる顔見知りの諸先輩方が世話をしているのと、

今年の悪天候による生長状況が知りたかった。

すれ違う車はそれぞれの農作業に向かう軽トラックと、遠方に職場のある通勤の車。

一、二台だが、知り合いだろうかと目を凝らす。

知り合いだったら、運転していても軽く会釈をしないと、何を言われるかわからない。

僕は目があまりよくないので、たまに抜かる。

知り合いじゃない人に手を振るのもおかしいが、知ってる人に手を振らないのは

もっとおかしいとされている。田舎独特の風習。

いいのか、わるいのか・・・。結論などいらないだろう。

とにかく、挨拶大事。

なんて、野暮なことを考えているうちに二か月前まで田んぼだったひまわり畑に到着。

心持ち、通行の邪魔にならないように、道の脇に車を停める。

まだ朝日の差さない向日葵が群生している光景はなんとも神秘的で、

なんとも形容しがたい発色をしている。

その姿は、目が覚めたのに、まだまだベッドの上でまどろんでいるようにも見える。

影のない時間帯。僕は、軽トラのエンジンを止める。先程まで耳をくすぐっていた

ラジオの音が消えると、遠くの高速道路で通行する車の走行音がかすかに聞こえる

のみになった。これほどの色彩の渦の中だからこそ静寂が引き立つ。

どこから沸き立つ衝動なのか分からないが、何故か写真を撮りたくなる。

が、探せど探せど、携帯電話がない。どうも、自宅に置き忘れたようだ。

こういう事は日常茶飯事だから、また次の機会にしよう。

明日でも全然撮影できるだろう。そうして、再び、エンジンキーに手を描けたとき、

ひまわり畑から彼女は現れた。

全然気がつかなかった。彼女はじっとこちらを見ている。

彼女のまっすぐな視線に、敗北感を味わいたくなくて僕もしっかりと見つめ返す。

自他ともに認める人見知りの自分は、あまり人の目を見ないのだけれど、

この時はどうしたものか、彼女を見つめる事に何の負い目もなかった。

彼女は少し身を屈めたままで、身動ぎ一つしない。

頭の中で、どうする、どうする。と、僕の次の行動計画が巡っていく。

同時に、ひまわり畑の中の彼女が何故ここにいるのだろう。

本来なら、違和感を覚えそうな光景だが、意外とマッチングしていて、

奇妙に、美しさを称えている。

携帯電話を忘れた後悔の念。様々な思いがぐるぐるする。

その時、彼女の視線がすっと外れる。

と、同時に僕の身体も意に反して動いてしまい、何かにぶつかった物音がした。

彼女はその物音なのか、僕の動いてしまった事になのか、わからないが、

ビクッとして、様子見から警戒態勢に入ってしまった。

その時、僕の背後からの車が僕の横を通り過ぎる。

一瞬、その車に意識を取られて視線を外してしまった。すぐに彼女に視線を戻したが、

そこに彼女はもういなかった。

いや、正確には、元いた場所から畑の奥に移動する途中だった。

なにかしらの後悔、なにかしらの安堵。

彼女の背中に、『じゃあ、またね』と声にせずにつぶやいて見送った。

彼女は、その周りに咲くひまわり負けないくらいまっすぐな尻尾で

『まあ、また会うこともないでしょうけどね』

と、答えたように聞こえた。

僕は一つ軽い深呼吸をして車をエンジンをかける。

向日葵に猫。絶対、なんとかして写真に一枚収めたかった光景。

何年前に、飛行機に乗ったとき、雲に落とした飛行機の影に虹が架かっていたのを

思い出した。あ、ずっと彼女って思ってたけど、あの猫、メスだよな~。


    おしまい




※まあ、ブログの表紙に貼った写真がそのひまわりです。去年のだけど(笑)

では、こういう感じはいかがかな?っと書いてみました。

ちなみに、ノンフィクションです。





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