oregonian way of life. 

オレゴンでの学生生活から南下して社会人生活へ。IT産業でホットなサンフランシスコ・ベイエリアで地味~に文系の仕事してます

「オーガニック vs. ローカル」のジレンマ

2007-03-19 | 
去年11月に訪れたペンシルバニア州フィラデルフィア。そこである日、リンゴを買おうと思ってWhole Foods Market(世界最大の自然食品スーパー・チェーン)に入りました。店内にはorganic とconventional(農薬使用)の二種類のリンゴが。Conventionalには見向きもせずにオーガニック・リンゴを手にとって見ると、その産地は西海岸のワシントン州。「う~ん、ここは東海岸だぞ。何千キロ運ばれてきたんだ?」と、自分も西海岸から東海岸まで運ばれてきた(?)ことを棚上げして、しばし買うのを躊躇してしまいました。恐らく、Whole Foods Market用にリンゴ栽培をしている大農園がワシントン州にあるのでしょう。でもな~、リンゴだったら秋の東海岸でも栽培されているはず。晩秋の東海岸にいて西海岸産のリンゴを買うのもな~、と思いつつ、結局買いました。皮をむかずにかじるつもりだったので、もし地元産だったとしても農薬使用のリンゴを買う気は最初からなかったです。(余談ですが、Whole Foods Marketが、やはり自然食品スーパー・チェーンであるWild Oatsを吸収する形で合併することを先月発表しました。益々巨大化するWhold Foods。ちなみに、Wild Oatsの本部はコロラド州ボルダー。写真は去年4月、そのボルダーで撮影したWild Oatsです。)

地元でオーガニック栽培された食材が手に入るのが一番なんだろうけれど、日常生活においてオーガニックとローカルのジレンマによく直面します。遠くから運ばれてくるオーガニック食材と農薬使用の地元産食材、どちらを選ぶべき?「地元」って具体的にどの範囲を指すの?

これらの疑問について論じた記事が、先々週発売になったニュース週刊誌『タイム』に掲載されていました。この記事を執筆したJohn Cloudさん自身の結論を先に述べると、オーガニックよりもローカル、だということ。Could さんはローカル農業をサポートするCommunity Supported Agricultureというプログラムに参加していて、地元の有志といっしょにローカル農業に出資し、週一(冬季は月一)食材を自宅に届けてもらっているそうです。(「ローカル農業」と言っても、Cloudさんが住んでいるマンハッタンから300キロも離れているけれど。)そのプログラムの目的は、食材はスーパー・マーケットが作るのではなく、人間が汗水と土にまみれて作るということを消費者に実感させること。消費者は実際に農作業を見学することもできるそうです。生産者と消費者の結びつきを強めることが目的の、このCommunity Supported Agriculture。昨日の記事と関連させて言い換えると、食産業が促進してきた自然界と人間界の分離を再び合体させようという試み、とも言えると思います。

このプログラムを通じてCloudさんは無農薬の野菜を入手しているけれど、果物は農薬使用。それに、卵を産む鶏は放し飼いとはいえ、その餌・・・・・・じゃなかった!「食事」には農薬使用の穀物を与えているのだとか。自分の口に農薬が入るのは気になるけれど、何千、何万キロも離れた場所から運ばれてくるオーガニック食材よりは、自分が食べる食材の栽培場所がわかるローカル食材を選ぶ、とCouldさんは述べています。

その記事の中で興味深かったのが、シリコンバレーに本社があるGoogle内のカフェテリア、「Café 150」の話。2004年にフード・サービス部の部長、John Dickmanさんが入社したとき、Googleのカフェテリアの基準はオーガニック。しかしその後、Dickmanさんはオーガニックよりもローカルを重視する方針に変えたそうです。オーガニックと言えども、大量の燃料を使って食材を輸送することに異議を唱えて。そう、カフェの名前にある「150」という数字は、150マイル(約240キロ)内で生産される食材しか使用しないという意味だそうです。食材が比較的豊富な北カリフォルニアだから、150マイルに限定できるのでしょうが。その名前に忠実に、トロピカル・フルーツは出さないし、トマトや果物は缶詰や瓶詰めにしてオフシーズンには提供しているそうです。(コーヒーも提供しないのでしょうか?)

この「オーガニック vs. ローカル」のジレンマ、ある意味「今さら?」って感じがしないこともないですが・・・。この問題は、自然食運動のパイオニア達がすでに直面していたこと。この町で最も早く登場した生協、Growers Marketの設立当時のメンバーの一人と5年前お会いしたとき、1970年頃すでにこの問題に直面していたことを聞きました。生協の理想は当然、無農薬食材とローカル農業のサポート。が、やはり、地元オレゴンで農薬を使って栽培した食材と、カリフォルニアで無農薬栽培した食材どちらを生協は仕入れるべきかで、生協メンバー内で論争があったのだとか。その時も、農薬を使用していてもローカル農業支持で決着したそうです。


(写真の中央右に見える建物がGrowers Market。週2回オープンしています。今でも対抗文化の香りがぷんぷんしているオシャレなマーケット。60年代や70年代に盛り上がったアメリカの対抗文化の雰囲気を経験したい人にはお勧めです。ちなみに、中央左の建物はプランタン系レストラン。やはり運動系の香りがぷんぷんです)

だったら、わたしもフィラデルフィアのWhole Foods Marketで、西海岸産のオーガニック・リンゴよりも農薬使用の地元産リンゴを選ぶべきだったのか?(農薬使用は地元産だったと仮定した場合だけれど。)皮をむかずにかじるつもりだったので、オーガニックかな。でも、リンゴではなくて料理に使用する食材を選ぶんであれば、遠くから来るオーガニックよりは農薬使用の地元産食材を購入するかもしれません。

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