太田市長とれたて日記

清水まさよしが太田の元気をお届けします

2009年 第40回天城会議で講演を依頼された。

2009年08月31日 | Weblog

会議に出席するのは経済界、評論家など力のある有名人ばかりである。会場は伊東から車で40分くらいのところにある「アイビーエム」の伊豆の研修所、立派な会場であった。
紹介者はよくテレビに出ている嶌信彦さんである。
講演で一番まずいのは紹介してくれた人の顔に泥を塗るような内容と話し方である。
あまり準備をしていくタイプではないので、まあ、それでうまくいってきたのだが、今回は少し緊張もしていた。
講演の後、質問を受けたが多かった。終わって記念撮影したが、参加者から「よかった」と言われ、親しく名刺の交換ができた。まずまずのできかな?と思いながら太田に帰ってきた。
翌々日、嶌さんから手紙が届いた。

 

「先日は『天城会議』のため遠くまでお越し頂きありがとうございました。講演は大好評で皆さん大満足のようでした。リスクをかけて具体的成果を出されているので説得力があり、地方分権という抽象論の具体的内容がよく理解できたと思います・・」
評論家の嶌さんの顔に泥を塗らなかったようで、ひと安心した。
私流というのがあって、いささか引っかかるような表現がでてくるが、それに興味をもってくれたみたいだ。
どんなレジュメを基にしたのか、ちょっと書いてみる。

 

地方分権はほんとにできるの?

○知事会が「地方分権」を強く主張。目立つ。
地方分権とは究極、地方に住む人たちの近くに権限を移すということ。
地方とは市町村のことで県ではない。往々にして、県は国から得た財を付加価値もつけずに市町村に配るだけの機能しか持ち合わせていない。付加価値のないセクションは不用になってしまう。県民とはなにか。中途半端でピンとこない。
電器業界のヤマダ、あるいは自動車には卸はない。農業だってスーパーなどに産地直売時代が来ている。地方分権は都道府県つまり卸しの権限を制限することもあり、だと思う。
基礎的自治体(市町村)が主役で地方分権は進められるべきだ。

 

Oまた、分権で目立つ発言をしている知事、たとえば大阪府の橋下知事や宮崎県の東国原知事が県内市町村にどこまで分権しているか。税源をどこまで委譲しているかまったく公開されていない。不明である。もしかして、市町村への分権をやっていないのではないか。

 

O都道府県と市町村をまるめて『地方』というのは間違い。むしろ、国と県はひとまとめの範疇にあるように思う。地方とは市町村のこと、市民をもつ自治体のことである。

 

○市町村が分権の受け皿になれない理由がある。
市町村民税で職員給与が払えない自治体?が存在する。群馬県下で6団体がある。たとえば、世田谷との交流都市である川場村は地方税35億円、人件費53億円。
最低でも人件費は自力で支払うべきである。地方交付税を当てにして職員をかかえるのは自治体の形を成していない。自分の収入で生活できることが自治体の最低条件ではないか。
そういった自治体が分権に応えられる必要にして十分な人材を確保しているか。いないケースが多い。なのに、合併はしない。
いざ、地方分権というときに対応することができないと思う。この種の自治体?が東京都を除けば数多くある。どうすべきか、は急務ではないか。

決算より予算という慣習

○選挙で「ムダを省く」と議員はいう。与党も野党も。
しかし、議会(市民)では決算は軽視する。予算重視である。
国土交通省にしても、農林省など他の省庁にあっても「連結バランスシート」はみたことはない。国会議員はバランスシートを基本に議論をしていくべきだ。太田市の場合、決算はもちろん黒字だ。しかし、連結バランスシートでは26億円の赤字である。主要因は扶助費(福祉関連)赤字である。
国会審議などテレビで見るが、極めて部分的である。差し引きしてマイナスの部分だけに集中する。それだけでテレビのヒーローになる。「ムダを省く」といっても、従前のどんぶり勘定決算の中からは何も生まれてこない。
国も連結バランスシート、セグメントバランスシートをつくるべきである。国家予算でどの部分が地方にしわ寄せしているか、貴重な資料になるはずだ。

 

O本当の借金はいくらあるのか、800兆円なのか860兆円なのか、あるいは配分すべき地方交付税を臨時財政対策債など地方に負担させている分を含めるといくらになるのかまるで分からない。改善点すら明確にならない。
太田市ではセグメントバランスシートで市民にかかるコストを公表している。とはいえ、現実住民負担を増やすことはできないのが実情。民主党が出産祝い金を55万円に増額するという。国保をパンクさせるのか、一般財源で補填するのか、ならその財源は国で負担するというのか、何もいっていない。
バランスシートで地方財政の状況をじっくり見なければ、国保の値上げか財政のパンクか、どちらかになる。

 

○退職手当債が各地で発行されはじめた。臨時財政対策債と同じようにどんぶり勘定の結果である。退職引当金はいくらになっているのかわからない。バランスシートやコスト計算書(損益計算書)なしでは現状がまったく分からない。差し引き「いくら」、これが国や自治体の決算だ。借金を重ねていけば、赤字は絶対起こらない仕組みになっている。国も自治体も黒字が当たり前である。

 

○企業も決算によって株価は動く。経営者の評価も決まる。
内政については国の経営も地方の経営も同じではないか。国にバランスシートの感覚はない。

職員意識の改革

○太田市ではISO9001、ISO14001、ISO27001をもつ。
自治体はもともと親方日の丸である。貧しくなれば地方交付税など、国が経営できるような仕組みになっている。不交付団体になっても財政的な豊かさは感じられない。
全国一律、横並びを国は目指しているとしか言いようがない。だから、親方日の丸になっている。地方財政がどうなろうと、つぶれるつぶれないの騒ぎは起こらない。夕張市は例外中の例外である。

 

○企業なら差別化は必要だ。そのために「職員の意識改革」が必須条件となる。どうやって意識改革を図るべきか、太田市では第三者に監査をしていただくことにした。
それが『ISO』である。役所を変える、そのためのツールとして機能している。職員の意識が変わった。

 

○ただ与えられた仕事をしていても、コストとサービスの質、量を考えながら仕事をしていても給与は同じ。ならば、人間として向上する意識の方が得という意識改革である。
市民満足度調査でも数値は上がっている。特に、窓口サービスは飛びぬけて高い満足度。364日、夜7時(セブンイレブンを目指した)まで窓口は開いている。視察は多いが他市ではじめたことは聞かない。

 

○CO2の削減も数値化するようになった。12年前、庁舎新築の際、南面ガラスには太陽光発電システムを挿入した。平成12年には1,984トン、それ以降毎年1,800トン前後の削減に成功している。5年前、777戸の分譲地に建設された住宅には2.4メガの太陽光発電(当時、世界最大)を完成させた。すべての学校にもISO14001を導入した。

 

○ISO27001は個人情報保護、『機密性』『安全性』を考え、市民の個人情報を守っている。

 

子育て支援・教育

○ 人口が1億人を割るのはすぐ目の前にきている。30年後である。国に戦略はあるのか。地方自治体への発信はない。この一、二年、瞬間的なばらまきを予定している政党があるが、それは選挙のための材料として使われ恒久的に支出増に耐えられるかどうか疑問である。政治家は一時的であっても政権につきたい。とはいえ、いずれは忘れ去られる運命、そのときどきでブレる。
官僚は定年まで責任をもたなければいけない、そのくらいの気概はある。官僚の出番である。「官僚主導はダメ」というのは当たらない。それ故、役人が長期的なプランニングをしなければならない。

 

○ 子どもの数が減っている。28年連続で減少しつづけ、過去最少を更新している。総人口に占める子どもの割合も世界最低水準となり、日本の将来を憂う現状となっている。少子化対策として、太田市では第3子以降の子どもの妊娠、出産から中学校卒業までの基本的な子育て費用を市行政が支援している。医療費無料化も中学校卒業まで、保育料も県下最低レベルを設定している。国、県が何か感じてくれるか期待してのこと。
行政サイドが可能なかぎり色々な支援メニューを提示したところで、もちろん親サイドの事情もあり、子育てに関する企業の理解や子育て世代の環境整備、小児医療環境の整備、児童受け入れ体制の充実などクリアーしていかなければならない問題も多いのは太田市にとどまらない。
そんな中、太田市の出生率は群馬県内ダントツのトップであり、年少人口も増加するなど、子どもにやさしい自治体として評価されている。
このことは逆説的に言うと国が確固とした少子化政策を持っていない裏づけであろう。

 

少子化の歯止めは家庭へのバラマキでは無理。多様性をもった子どもたちへの対応が必要。おおた芸術学校(世界一のオーケストラ団体と東京フィルの飯守泰次郎さんはいう)、おおたスポーツアカデミー、おおたIT学校、そしてぐんま国際アカデミーは太田市独特の教育組織。20人以下で国語、算数、英語、数学を教える教育支援隊は義務教育を強くサポートしている。

 

○一体、どこから子育て支援の経費を捻出するのか。
こういった新しい施策を実施する際には財政的裏づけが必要となる。潤沢な財源があるわけでもない。財政の健全化が少子化対策の前提となる。とは言え、経常的経費から高齢者や障がい者の福祉経費を削減するわけにはいかない。サービスを落とすわけにもいかない。突き詰めていくと、人件費・補助金の削減しかない。
太田市には『黒塗り』はない。私をはじめ幹部に運転手はいない。典型的な事例だと思う。補助金などのスクラップ&ビルトを民間団体が主導で徹底。代わりに、「1%まちづくり事業」を定着させている。
街づくり基本条例にある「参画と協働」がキーワードになる。

 

外国人との多文化共生

○ 現在、太田市人口の約4%が外国人である。約8千人強。隣の大泉町には人口比16%もの外国人が居住するようになった。好景気の時には日本人の労働力不足もあり、ブラジルから随分と多くの労働者が出稼ぎにきた。その結果、様々な問題が生じてきた。では入国を許可した国がなんらかの施策を実施したかと言えば、ノーである。

 

○ 入国した外国人が現在どこにいて、何をしていて、困りごとは何かくらいは国が関心を持つべきだろう。子どもたちのことは特に心配である。すぐに帰国するのであれば、日本語ができなくても将来に不安はない。しかし滞在期間が長く、あるいはそのまま日本に居住することになれば、子どもたちへの教育はかかせない。せめて高校教育くらいは受けさせるべきで、そのための予算を国はつけるべきではないか。現実を見ようとせず、やるべきことをしないでいるのは、明らかに国の怠慢でしかない。
以下、日々感じていることを書き綴ってみた。

 

・外国人学校が経営危機に陥っている状況の中で、国は憲法上直接的な補助はできないとの立場であるが、ブラジル政府やペルー政府が認定する学校については、2国間の取り決めに基づき母国での補助要請のみではなく、日本として支援等について検討するべきではないか。

 

・外国人の子どもについては、入国時期や日本語のハンディにより義務教育年齢を超えた義務教育未修了者が多く存在することから、夜間中学校を拡充して就学機会を増やす仕組みづくりを国が主体となって検討するべきではないか。

 

・高学年で来日した外国人に対し、日本語力の不足により現行の中学校卒業程度認定試験では、学力の対応が困難なため、新たな制度創設の必要があるのではないか。

 

・現在の社会保険制度は複雑な制度となっているため、短期滞在、定住、永住等外国人の滞在形態に合わせた、理解しやすい社会保険制度を検討する必要があるのではないか。

 

・年金受給権の発生期間や年金保険料の関係から、外国人の加入のネックとなっているので、脱退一時金の算定の上限見直しや年金加入免除などについて検討する必要があるのではないか。

 

・外国人の表記についてパスポートのアルファベット、通称に統一し、市町村における事務がスムーズに行われるように対応してもらいたい。

 

・日本人と結婚した外国人妻に介護士としての道を積極的に開くべき。会話は十分であり識字能力のアップだけで効果が高い。太田市では独自にはじめたが、現在国は関心を示さない。インドネシア、フィリピンからがすべてではない。


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