市民大学院ブログ

京都大学名誉教授池上惇が代表となって、地域の固有価値を発見し、交流する場である市民大学院の活動を発信していきます。

智恵のクロスロード第49回「近年高まっている「バウハウス芸術運動」の再評価」近藤太一

2016-07-12 19:46:15 | 市民大学院全般
 第一次世界大戦後、アール・デコ芸術運動と同時代のバウハウス芸術運動が、再評価されだした。このバウハウス芸術運動は、「機能がフォルムを決定する」というシンプルなスローガンに集約された表現形式を生み出した。ヴァルタ―・グロピウス(Walter・Gropius 1883~1969)によって創始されたミニマリストの建築・装飾芸術はこのことを忠実に表現している。その結果、美しさと機能性が融合した作品が生まれたのである。1919年に統合された国立バウハウス学校が開校し、初代校長を務めた。ブロピウスは、以後イギリスへ亡命、最後は、1937年米国ハーバード大学に招かれ、当時超高層ビルのパンナムビルも設計した。
 このバウハウスの芸術・デザインは、スイス超高級時計パテック・フィリップにも採用され、シンプリシティを「カラトラバ」という商品名で売り出している。
 このバウハウスでは、「付加価値」という言葉はいらないという。「価値」とは、モノの外側に付け足していくようなものではない。モノと人との関係を隙間(すきま)もないほど融合し見出すことこそが「価値」である。価値をつけてやろうとする欲望があるときは「ゼロ原点」に立ち返り、インスピレーションを得たフォルムが必要な時が来たようだ。
 削ぎ落とされたシンプルな美しさは、その表現として独創的とは奇抜なことではなく、誰よりも先にスタンダードを創り上げることである。自動車でも高級ドイツ製には、このバウハウスの芸術性が見て取れる。食器でも北欧諸国には、シンプルとクオリティを融合させている。
 一方、自然界では、水が空間を落ちる大滝は、飛沫と音を作り出し、一つの芸術空間を創り出している。海と陸地の波打ち際でも一つの芸術空間を作り出している。音を作り出す動きと重なり合っている。その境遇が、バウハウスの世界を一層深く進化させる可能性を秘めている。
        ハルカス大阪近鉄阿倍野百貨店文化サロン講師  近藤太一

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