熟年や成熟という言葉は、ややもすればマイナスのイメージが付きまとう。熟年という言葉がある時には「濡れ落ち葉」のようにとられるところから最近はシニアで表現される場合が多い。また成熟社会とは低成長・停滞の代名詞だ。だがそれは海外の人が見れば競争力の源泉だという。これを機に、成熟を活かすにはどう考えたら良いだろう。
第一に、短気と気長(きなが)のバランスである。時間をかけたくないモノには徹知的に削ぎ落とす。一方で、楽しみたいモノにはじっくり取り組む。例えば早く移動したいならば新幹線「のぞみ」が良い。しかし、沿線の景色や駅名の移ろいを楽しむなら東海道線の情緒も棄て難い。特に江戸時代に東海道53次と決められた。この53次は、宿泊し、53人以上の人々から教えを請う『華厳経』終章「入法界品」の部分で善財童子が文殊菩薩の指南により善知識を求める部分である。53人とは海師・長者・賢者・バラモン・外道(仏教以外の宗教を信じる人)・王・道場地神・天・夜神・仙人・比丘尼・女性などであり、女性の中には娼婦まで入っている。かえって著名な仏弟子などは訪ねていない。人間の価値は地位・身分・職業・性別・その他出家・在家、宗派の違いなど一切の区別を認めないという華厳思想の反映である。江戸時代は、江戸から京都までの53人の人々から学べ!という文殊菩薩を引き出してきている。従って東海道ローカル線に乗って景観・地名・駅名から酒類の好きな人はちょびちょび・・・飲みながら楽しむのである。帰りは東名高速バスでもまた新しい景観が体験できる。
ローカル線地域にも経済の価値が創造できる。
第二は、異文化との融和である。世界を震撼させている宗教対立も、日本は千年以上かけて「八百万の神」的発想で融和の道を歩んできた。融和には「他を認める」「自分も主張する」「周りも喜ぶ」といった視点が欠かせない。これは石田梅岩の心学での「三方よし」である。商道徳の基本として明治維新から今日まで経過して来た。
他にも成熟を活かす方法は、侘び・さびにも隠されている。「効率」「合理化」「資産価値」という資本主義利益思想の中にこの成熟の競争力が垣間見られる世界の湧出であろう。
(ハルカス近鉄文化サロン講師:近藤太一)
第一に、短気と気長(きなが)のバランスである。時間をかけたくないモノには徹知的に削ぎ落とす。一方で、楽しみたいモノにはじっくり取り組む。例えば早く移動したいならば新幹線「のぞみ」が良い。しかし、沿線の景色や駅名の移ろいを楽しむなら東海道線の情緒も棄て難い。特に江戸時代に東海道53次と決められた。この53次は、宿泊し、53人以上の人々から教えを請う『華厳経』終章「入法界品」の部分で善財童子が文殊菩薩の指南により善知識を求める部分である。53人とは海師・長者・賢者・バラモン・外道(仏教以外の宗教を信じる人)・王・道場地神・天・夜神・仙人・比丘尼・女性などであり、女性の中には娼婦まで入っている。かえって著名な仏弟子などは訪ねていない。人間の価値は地位・身分・職業・性別・その他出家・在家、宗派の違いなど一切の区別を認めないという華厳思想の反映である。江戸時代は、江戸から京都までの53人の人々から学べ!という文殊菩薩を引き出してきている。従って東海道ローカル線に乗って景観・地名・駅名から酒類の好きな人はちょびちょび・・・飲みながら楽しむのである。帰りは東名高速バスでもまた新しい景観が体験できる。
ローカル線地域にも経済の価値が創造できる。
第二は、異文化との融和である。世界を震撼させている宗教対立も、日本は千年以上かけて「八百万の神」的発想で融和の道を歩んできた。融和には「他を認める」「自分も主張する」「周りも喜ぶ」といった視点が欠かせない。これは石田梅岩の心学での「三方よし」である。商道徳の基本として明治維新から今日まで経過して来た。
他にも成熟を活かす方法は、侘び・さびにも隠されている。「効率」「合理化」「資産価値」という資本主義利益思想の中にこの成熟の競争力が垣間見られる世界の湧出であろう。
(ハルカス近鉄文化サロン講師:近藤太一)