A3 Hirata, S., Yamakoshi, G., Fujita, S., Ohashi, G., & Matsuzawa, T. (2001).
Capturing and toying with hyraxes (Dendrohyrax dorsalis) by wild chimpanzees (Pan troglodytes) at Bossou, Guinea.
American Journal of Primatology, 53, 93-97. [link]
ギニアのボッソウの野生チンパンジー(Pan troglodytes)がハイラックス(Dendrohyrax dorsalis)を捕まえておもちゃにする
チンパンジー(Pan troglodytes verus)がニシキノボリハイラックス(Dendrohyrax dorsalis、イワダヌキ目)を捕まえ、おもちゃにしているところを観察した。ある思春期のメスが、1頭のハイラックスを15時間運び、自分の巣でそのハイラックスと眠り、そのハイラックスの毛繕いをした。その捕まえられたハイラックスが食べられることはなかった。近くの成体チンパンジーはそのハイラックスを無視していた。別の事例では、2個体の思春期のオスが、ある小さなハイラックスをおずおずと念入りに調べていた。これらの観察から、ボッソウのチンパンジーがハイラックスを食べる動物とみなしていないことが示唆され、このことは、食べる機会があるとしても捕食可能な相手を食べない理由がありうるという考えを支持している。
キーワード:チンパンジー(chimpanzee)、ハイラックス(hyrax)、狩猟(hunting)、道具使用(tool use)。
第1著者の平田聡は現在林原類人猿研究センターに所属。林原グループは、岡山では知らない人はいないと思う。
食べるわけでもないのに動物を捕まえるのは、何もヒトにかぎるわけではない。この報告は、チンパンジーにもそれが可能であることを示している。ただし、力加減にかんしては、相手のハイラックスのことはまったくかまっていない。
チンパンジーが力加減を自分では制御できないのか、それとも単純にチンパンジー一般に備わっている気質なのか、どちらなのか。参考になるのは、野生ゴリラの行動である。私は山極寿一のエッセイでしか読んでいないが、マウンテンゴリラはハイラックスのような小動物に合わせて力を加減できるそうである。チンパンジーも力加減は不可能ではないが、気質がそうさせないだけなのかもしれない。
では、彼らより大きい動物にたいしてはどうなのか。チンパンジーやゴリラが彼らより大きい動物と戯れることはまず考えられないので、ここではフサオマキザルが参考になる。成体どうしで比べるとハナグマはフサオマキザルの2倍あるのに、フサオマキザルはハナグマと遊ぶことがある。かといってフサオマキザルが自分たちより小さい動物にたいして力加減が制御できないわけではない。それについては、近いうちにその内容の事例報告が出る(まだ公式には発表されていない)。
2006-02-01追記
ここを「ビデオ図書館」⇒「ボッソウ」⇒「ハイラックス (451KB)」と辿るとmpeg動画で見られます。
Capturing and toying with hyraxes (Dendrohyrax dorsalis) by wild chimpanzees (Pan troglodytes) at Bossou, Guinea.
American Journal of Primatology, 53, 93-97. [link]
ギニアのボッソウの野生チンパンジー(Pan troglodytes)がハイラックス(Dendrohyrax dorsalis)を捕まえておもちゃにする
チンパンジー(Pan troglodytes verus)がニシキノボリハイラックス(Dendrohyrax dorsalis、イワダヌキ目)を捕まえ、おもちゃにしているところを観察した。ある思春期のメスが、1頭のハイラックスを15時間運び、自分の巣でそのハイラックスと眠り、そのハイラックスの毛繕いをした。その捕まえられたハイラックスが食べられることはなかった。近くの成体チンパンジーはそのハイラックスを無視していた。別の事例では、2個体の思春期のオスが、ある小さなハイラックスをおずおずと念入りに調べていた。これらの観察から、ボッソウのチンパンジーがハイラックスを食べる動物とみなしていないことが示唆され、このことは、食べる機会があるとしても捕食可能な相手を食べない理由がありうるという考えを支持している。
キーワード:チンパンジー(chimpanzee)、ハイラックス(hyrax)、狩猟(hunting)、道具使用(tool use)。
第1著者の平田聡は現在林原類人猿研究センターに所属。林原グループは、岡山では知らない人はいないと思う。
食べるわけでもないのに動物を捕まえるのは、何もヒトにかぎるわけではない。この報告は、チンパンジーにもそれが可能であることを示している。ただし、力加減にかんしては、相手のハイラックスのことはまったくかまっていない。
チンパンジーが力加減を自分では制御できないのか、それとも単純にチンパンジー一般に備わっている気質なのか、どちらなのか。参考になるのは、野生ゴリラの行動である。私は山極寿一のエッセイでしか読んでいないが、マウンテンゴリラはハイラックスのような小動物に合わせて力を加減できるそうである。チンパンジーも力加減は不可能ではないが、気質がそうさせないだけなのかもしれない。
では、彼らより大きい動物にたいしてはどうなのか。チンパンジーやゴリラが彼らより大きい動物と戯れることはまず考えられないので、ここではフサオマキザルが参考になる。成体どうしで比べるとハナグマはフサオマキザルの2倍あるのに、フサオマキザルはハナグマと遊ぶことがある。かといってフサオマキザルが自分たちより小さい動物にたいして力加減が制御できないわけではない。それについては、近いうちにその内容の事例報告が出る(まだ公式には発表されていない)。
2006-02-01追記
ここを「ビデオ図書館」⇒「ボッソウ」⇒「ハイラックス (451KB)」と辿るとmpeg動画で見られます。