労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

日本のファシズム運動と口蹄疫騒動

2010-05-24 01:40:38 | Weblog
 つい先日まで日本のファシズム運動は“地方主権”を合言葉に進んでいた。

 大衆迎合的な政策と人気取りで地方自治体の首長職をかすめ取り、そこを足場にして、独裁政治を押し広げていく。このようにして東京、大阪、名古屋といった日本の人口密集地の諸都市がつぎつぎとファシストたちの手に落ちていった。

 もちろんこの運動は、日本のブルジョアジーの支持をえており、大阪の橋下のもとには大阪のブルジョアジーが、名古屋の河村のもとには名古屋のブルジョアジーが、東京の石原のもとには東京のブルジョアジーが結集しており、総資本の立場もこのような地方のブルジョアがファシスト勢力を後押しすることを応援していた。

 かくして彼らは“郷土の英雄”となり、国に対して自分たちに権限を委譲することを要求し、農林事務所などの国の出先機関は二重行政だから廃止するように求めていた。

 これにたいして自民党も民主党も彼らに追従し迎合する方策をとり、日本には“地方主権”の時代がやってきた。

 しかし、自民党も民主党も問題の本質を見失っていた。つまり、地方のファシストたちが独裁政治を求めるのは、労働者階級を攻撃し屈服させるためであって、必ずしも彼らに自治能力があり、自分たちがやった方が国がやるよりもよりよくできるからではないのである。

 こういうことは昨年の新型ウイルス騒動の時に、はっきりとしていた。われわれはこの騒動の時に大阪にでかい穴が開いているので水際作戦は成功しないだろうといった。

 実際、大阪の橋下知事がやったことは国に対して、財政的な理由から防疫体制を緩和するように要求することであり、国はそれを許諾することによってウイルスの流行は大阪を起点に全国的なものになっていった。

 そして同じことが口蹄疫でもくりかえされている。地域の住民の生活よりも国から何らかの利益を誘導することが熱心な“郷土の英雄”によって、口蹄疫の初期段階は見逃され、口蹄疫が拡大を見せはじめるや、地方のことは地方でやるから国の出先機関を閉鎖せよといっていた連中が、一斉に、農水省に「何の指示なかった!」(地方分権はどこに行ったのか!)と攻撃し始めている。

 そして国と地方がケンカしている間に事態は悪化の一途をたどっている。

 新型ウイルスにせよ、口蹄疫にせよ、住民の大量死につながるものではないのでひとまず安心だが、これがペストやエボラ熱にようなものであったら、また疫病ではなくとも地震や洪水といった自然災害や公害といった人為的な災害であったら、おそらく東京と大阪と名古屋は壊滅的な情況になるであろう。

 現在、国と地方のあるべき正常な連関は破壊されている、もっとはっきりいえば、日本ファシズム運動の“地方組”がめざしているのは、大きな全体の一部として地方を拠点にして労働者階級に攻撃をかけ、全国的なレベルでの独裁国家の樹立を助けることにあるのだから、本来の意味での“地方自治”や地方住民の生活や社会保障にはまったく関心がない。

 これにたいして国の官僚や自民党や民主党やその他もろもろの政党は、地方主権をいうのであれば、地方のことは、地方でやってくれるであろうと安易に構えている。

 かくして日本の行政には巨大なエアーポケット(下降気流のため、飛行中の航空機が急激に揚力を失い降下する空域。転じて、そこだけが周囲と違ってあるべきものが無い、あるいは何かが欠落している、といった状況の比喩的表現)が形成されており、この穴からいくつもの災害が沸きだそうとしている。

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