わがまま日記~外伝~

徒然なるままに日々のこと、熱く、ロマンティックに、毒をもって、心のままに書き綴ります。

「恋の骨折り損」in大阪 4月20日

2007-04-29 21:13:22 | 舞台
もう、一週間以上も前になりますが、蜷川幸雄演出、北村一輝主演「恋の骨折り損」を見て参りました。
オープニングは、ラッパと太鼓の鳴り物入りで、客席後から通路を役者陣が下りてきて、舞台に上がり、観客にご挨拶。まるで、村祭りのお楽しみメーンイベント、お芝居が今から始まりますよ~って感じで、初っぱなからウキウキモードにさせてもらえます。幕が上がると、見事な巨木が立っていて、枝垂れる若葉のカーテンをぶら下げた枝が、ホリゾントを横切っております。この若葉の青さ、美しさだけで、私、泣きそうでした。最近、舞台美術が美しいというだけで、うるうる感動しちゃうことがあるんですよね。前日記の「HONOR」もそうでした。
話戻しまして、男のままでいられた四人組、北村一輝、高橋洋、窪塚俊介、須賀貴匡と、女装組になった姜暢雄、内田滋、月川悠貴、中村友也。美しいけれど、馬鹿でかい大女のフランス王女の姜君。この馬鹿でかさもコメディの重要な要素になっておりました。超~男前なのに、さすが関西人の北村さんも、こっけいで可愛いずっこけぶり。高橋さんも弁舌鮮やかな切者かと思いきや、恋にやられてヘロヘロ…と、男性陣は、全員情けなくてお粗末で超~可愛かったですわ。それにひきかえ、女性陣のしたたかさ。時々男に戻るのもテレビで見るニューハーフみたいで、面白かったです。ただ、ここで男に戻るのは姜君と内田君だけで、やっぱ、関西出身の人間にオチをつけさせるのですね。関西人の悲しい性を蜷川の舞台に立っても背負わされるのでございますねぇ。
幾つになっても蜷川さん、偉いなぁって思うのは、新しいことをドンドン取り入れることでしょうか?いきなり台詞がラップ調、BGMもクラシックをラップのリズムにアレンジしたりと、遊び心満載なのです。蜷川さんって、自分のアイデアを舞台で実現して遊んでいるんじゃないのかな?演出家自身が楽しんでいるから、俳優陣も楽しく…は無いか…灰皿投げの蜷川さんだもんね。とにかく、観客はとっても楽しめる。まあ、かなり引く演出もあるんだけれど、絶対にこれはアカン!と毛嫌いする舞台はなかったもん。10本のうち8本は、心の底から楽しんでいます。
しかし、シェークスピアっていうのは、面白いですね。生きるべきか死ぬべきか、なんていう心の深遠を覗き込む作品から、大衆演劇のような軽い喜劇まで書いてたんですよね。喜劇と悲劇、場合によっては、表裏一体のこともありますものね。
なんでしょうか、現代劇の「HONOR」で感動させられ涙し、古典のシェークスピアで、ほのぼの笑えたという、非常にパランスの取れた春の観劇月間でした。

TEAM-NACS「HONOR」in大阪

2007-04-15 23:45:06 | 舞台
久々の外伝更新はTEAM-NACSふるさと公演と題された「HONOR」です。
札幌公演が残されておりますが、ネタバレがあります。御了承下さい。
前作「COMPOSER」は、親子間の感情の行き違い、絡み合いが、息苦しさを持って、ひしひしと身に詰まりましたが、「HONOR」はそれに比べると、もっと空気間があるというか、ふわっとした広がりを感じました。それゆえに、最初に観た時は、ちょっと希薄な印象も受けたのですが、設定が身近であるため、初めから終りまで、ずっと感情移入して観ていました。オープニング、5人全員の和太鼓演奏で始まった時は、「コンボイみたい」と正直思いました。まあ、キメキメのコンボイと違って、禿げヅラでしたけど。ただ、この和太鼓を使うというのは、非常に効果的です。禿げヅラで叩いていても格好いいし、「大泉洋さんは(安田顕さんも)、ハケンの品格を撮影しながら、舞台稽古も和太鼓の稽古もしたんだなぁ。偉いなぁ。」と、裏事情も勝手に想像して、株も大幅アップです。正に掴みはOKですね。
今回は、安田顕さんが五作という主人公。今回は全員が少年から老人までを演じておりますが、小学校時代の洋さんの半パンが、魅力的でしたね。相変らず、筋肉は無いし…色も白いですが…ちょっとカワイイ。そして、ケン・タウロスさんですか…一緒に見にいった同僚は、このタウロスさんの映像が焼き付いて、最後まで、感動的な場面でも思い出し笑いをしてしまうという後遺症に悩まされてしまいました。アドリブも全開のシーンで、かなり面白いんですけれど、同僚のようにツボにハマって抜け出られない方もおられるので、そこそこにしておいた方が良かったような気も致します。とはいえ、公演も重ねるごとにタウロスさんが暴走して行くのは楽しい…前楽の日は、佐藤重幸さんが笑って台詞が言えなくなるハプニングも…
ストーリーの展開が、時代をトントンと進めて行くので、なんていうか、1ページづつめくっていく絵本のようだと思いました。初めはそれが、最初に書いたように「希薄」と感じたのですが、1人の男が一生をかけて守り貫き通した愛が、ドラマというより、もっとピュアで素朴な「物語」といったほうがよくて、1ページづつ見開いて行くような展開が合っているかなと思いました。そこここに涙をもよおす場面があるのですが、「ここで泣かせたる!」といったあざとさは無く、例えば卒業式の場面とか、誰もが身に覚えのある体験・記憶に触れる涙が自然に流れてくるのが、心地よかったです。
ラスト近くになって、五作の為に祭を復活させようとする4人が、自分たちの祖父が着ていたはっぴを、決意を持ったように羽織るシーンが、格好良かった。そして、再び五人での和太鼓…めっちゃ感動的でした。ここで、私、号泣です。っていうか、あざとさのカケラも見えない森崎博之さんの脚本ですが、この和太鼓だけは「してやられた」の感があります。演奏する方も聞いている方も、一種のトランス状態になるいうか、「無」になって「情熱」を感じ取ることが出来る。ラストに向かって感情のスピードを上げられた感じです。
そして、1番感動したと言っていいかも知れない。ラストの舞台背景。森を影絵のようなセットで作り出し、非常に美しかった。背景が現れたと同時に、再度号泣致しました。結局、この舞台、全編通じて、よく泣きました。以前は、「情に訴えるよりも知に訴えてくるものの方が好きだ」とカッコつけておりましたが、こんな世の中、やっぱり情がなけりゃ、ダメだな。舞台を見終わった後の帰り道の、気分のいいこと。やっぱり暖かいものに触れて、暖かい涙を流す事って、唯一の癒しの方法じゃないかと思いますわ。よく笑いましたしね。どんな舞台でしたか?と聞かれたら、気持のいい舞台でしたと答えますわ。
TEAM-NACSの舞台って新鮮です。昔、親に読んでもらったような「お話」って感じの懐かしさと親しみやすさがある。そういうのって、安っぽく感じがちだけれど、舞台に限らず、ドラマや映画もすべて正味は「お話」なんだもの。1ページづつ絵本をめくって、母に読んでもらっているような、本当に「ふるさと」に帰った気持になる舞台でした。