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色んなことを投稿するブログ。現在は「東方野球の世界で幻想入り」を投稿したり、きまぐれに日々のことについて綴ったり。

第五話(5-3)「冬に染まれば」Ⅲ

2009-04-04 07:42:39 | 東方野球幻想入り物語
前回:第五話(5-2)


ここから~~


 8月10日(金)対広島戦。(紅魔館球場)

 ここは歓声が聞こえるグラウンドから遠く離れたブルペンだ。
 カープのホームとしている球場は両翼付近にそれぞれのブルペンへと続く入り口がある。
 ちなみに話は逸れるが、こうした球場の再現度は高く、ライト側にブルペンの柱にはある1枚のプレートがあった。これは志半ばで亡くなった投手の名前が刻まれており、実際にあるなんて言われながら、一野球ファンではなかなか見ることのできない代物だった。もし私が元いた世界で見るには、プロ野球選手やこうした裏方になるくらいしかないのではないだろうか。しかし、私はアップの前にこっそりとライト側のブルペンまで行き、このプレートを拝むことができた。なむなむ。
 本当は抑え投手のことをクローザーと呼ぶのだが、そのプレートに飾られた抑え投手は『炎のストッパー』などと呼ばれ、セーブ王にも輝いたことがある。
 何度か映像で観たことがあるのが、その姿に心みせられ、ストレート勝負にこだわった理由がよくわかる。

 さて、それとは反対側であるレフト側ブルペンの入り口からさらに扉を挟み、投球練習用にマウンドがいくつか作られている。ここは密封された空間ですごく蒸していたのを今でも思い出す。
 私はホームベースの上に立ち、ある選手がやってくるのを待っているのだ。
 服が汗で背中にべったりとくっつき、非常に不快であり、ただ待っているだけでは手持ち無沙汰になり、不快な気持ちに拍車をかける。
「パチュリーさん、アップはやったんですか?」
 そこで、ネットの後ろから椅子に座り、本を読んでいる少女に尋ねた。
「走ったら喘息が悪くなるし」
 パチュリーさんである。
「準備体操は?」
 すると、椅子に座りながら足首を回し始めた。
 おい、それが準備体操かよ……。
「危なくないですか?」
 これから投球練習が始まるのに、そんな所で暢気に本を読まれても困る。
「あなたの後ろにはいないし、ネットもあるし大丈夫だと思うけど」
 一度だけ本から目を離し、周りを確認している。
 確かに、パチュリーさんは私の後ろにいないし、ネットを挟み、プレートの奥にある椅子で悠々自適に本を開いているのだ。大丈夫だと思うが、少し不安だった。
 特に、パチュリーさんの隣には本がいくつかが積み上げられており、何か嫌な予感がする。

 この空間には静寂が支配し、時折、目の前からページをめくる音が聞こえるだけだった。
 それが扉の開く音によって破られる。
 私はその姿を認め、やっと来たかと思ったが、これを口には出さず、すぐ投げれる状態かどうかを聞くことにした。
「アップは終わったかい?」
 その声に反応し、顔をこちらに向けてくる。今日、先発する霊夢さんだ。
「え? 何よ、その格好?」
 完全装備した私の姿を確認しての一言。
 まるで、この世のものとは思えないようなものを見た目で私を見ていた。
 そうした視線をはねのけながら、私は答える。
「急造のブルペン捕手です」
「あんたが?」
「ええ」
「捕れるの?」
 何かの冗談だと思っているようだ。
 ただ、ここまでは私の想定の範囲内だ。いきなり、タートルズの選手に一打席勝負を挑み、軽く返り討ちにあってからは、打撃練習での投手や球拾いしかやらない裏方が軽いキャッチボール相手ではなく、急に捕手となって投手陣の球を受けようとするなんて、普通では考えにくい。だから、私は簡単になぜこうなったかを霊夢さんに「も」教えないといけないと思った。
「何言ってるの?レティさんが倒れた翌日から狩り出されているんですけれど」
 そう、これは緊急事態における緊急措置のだ。

 …………。

 8月3日(土)対巨人戦。(幻想郷スタジアム)

 霊夢さんが完封した試合の後、私は監督室に呼ばれた。
 理由はよくわからない。別に男子禁制のロッカールームに入ったわけではないし、のぞいたこともしていない。私は監督室へと向かいながら何かやましいことはないかと考えるのだが、やはり心当たりがなかった。
 そうこうしているうちに部屋の前まで着いてしまった。意を決してノックをし、入室許可を得てからドアを開けると、室内にはアリスさん以外にはいなかった。すぐにでも話が始まるかと思えば、そういう事もない。
 私はソファーに腰掛けて、待つことにした。
 すると、数分後に輝夜さんに、大妖精さん、美鈴さんというメンバーが入室してきた。私が呼び出された事とは別件というわけではなさそうだし、ある目的によって集められたメンバーであるようだ。しかし、どういった意図で集められた面子なのか、それが全くわからなかった。
 輝夜さんに、ぼそっと何か聞いているかと訊ねてみたが、呼ばれただけだと答えた。
「これで全員揃ったわね――」
 この場にいる全員の視線がアリスさんの方へと向いた。
「わかっているとは思うけれど、レティが倒れたから捕手ができる選手が貴重になってきたわ」
 これでメンバーが揃ったのかアリスさんが本題を話し始めた。 
「補助役でも捕手をやってもらう機会が多くなるから――」
 ふむふむ。お~、そうか。
 このメンバーは捕手が出来るメンバーだ。が、それでも私は何のために呼ばれたのであろうか?
「輝夜、あなたが柱だからね」
「わかっているわ」
「美鈴は試合の途中で急にキャッチャーをやってもらうかもしれないから」
「はい、大丈夫です」
「大妖精も捕手での出場もさることながら、出場しなくてもブルペン捕手にかかりきりになるかもしれないから覚悟してて」
「はい」
「忠実くんは試合前のブルペンを頼むわ」
「はい……って、えええええええええええええええええええ」
 室内には私の声しか聞こえない。事態はいつも予想の斜め上から私を襲ってくる。
「できないの?」
 アリスさんが私に訊ねる。
 ここで、まず私の捕手経験について話さないといけないと思う。前にも言ったかもしれないが、私には捕手の経験が無い。いくらポジションをたらい回しにされようとも線の細い私に捕手というポジションをやらせようとした監督はいなかった。
 ただ遊びでキャッチャーミットを持ち出し、ボールを受けたことは何度かあるが、それはあくまでも遊びの範囲内であった。
 だから、すぐにでも「無理です」と言いたかったのだが、そうなると部屋にいる他の選手たちがこの役目を担わなくてならない。ただでさえ、各自の役割があるのに、ペナントレース終盤に選手の負担が大きくなることは、裏方としても避けたかった。
 視線を他の選手たちからアリスさんへと視線を移す。
 そう言った事も考えて断りにくい環境を作り出してからこの話を切り出したのか?
 私は変に考え込んでしまったが、いくらなんでもこうした要求への回答を引き延ばしてはいけない。何かしゃべらなくては。
「ええっと、試合前ですよね? なら時間的には可能だとは思いますが……」
 そう。いつもならやっている打撃練習での投手や球拾い等を他に任せ、それの代わりとして、全体アップが終わる前までにブルペンで準備ができていればよい。こうように、準備や流れからしたらできないことではないのだ。
「なら大丈夫じゃないの?」
「なぜ私なのでしょうか?」
 私の野球技術なんてアリスさんが一番知っていると思ったし、もっと適当な人材ならチーム内にいるとは思う。だって、このメンバー以外にも捕手適性がある人がいるのだから……、というのが正直な感想だった。
 しかし、この直後の発言はすごかった。
「投手陣のことがわかってそうだからよ。古くはパチュリー、阿求と連携。最近では霊夢や魔理沙とよく話し込んでいるじゃない。しかもあなたの保護者はあの紫だしね」
「…………」
 ぐぅの音も出なかった。これで無下にすることもできなくなった。
「やってくれるわよね?」
 そう言われたときには、何も考えずに、やりますと言っていた。

 で、いきなり翌日の試合からやってみることになった。
 全体のアップ終了前にブルペンへと急ぐ。
 結局、昨日の打診を受けてから、レティさんのところへのお見舞いやデータ整理が終わった後にマシン(にとり製――以前はなぜか連射式になっており、とても使える代物ではなかったが、何度か改良を重ねて今ではちゃんと使えるようになっている)を動かし、軽くキャッチングの練習をすることにした。
 最初は120キロくらいから始めたのだが、それでもボールをこぼしてしまうこともあり、泣きたくなった。もちろん、自分のキャッチング技術のなさに、である。
 プロテクターをつけていくのだが、最初に捕手用のメットをかぶってしまったら、胸から腹にかけてのプロテクターが上から被れなくなって、一度メットを外さないといけなかった。
 何とも恥ずかしい二度手間である。
 このようにちゃんと捕手用防具をつけるのにも、四苦八苦する。でも、なんとか一人でつけ終えると魔理沙さんがやってきた。
「あれ、お前か?」
 後から聞いた話だが、魔理沙さんは新しいブルペン捕手が既にスタンバっているからと言われたらしい。誰か、は言われなかったらしいので、少しワクワクしながらブルペンに来てみると私だったと言うわけだ。
 ちなみに、ブルペン捕手を始めてから1週間、先発投手全員に必ず、似たような事を言われました。
「緊急事態で人不足だそうで」
「できるのか?」
 魔理沙からのこのセリフ、ブルペン捕手を始めてから1週間、先発投手全員に必ず(略)
「こうしたのは初めて。ただ、私のことは気にせず、全力で投げてくれ!」
 キャッチング技術に関しては、正直に話すことにした。さすがに、大見えを切って後で失望させるわけにはいかない。昨日の練習でも140キロ台になると当てるだけでも精一杯で、自分でも受けるとかキャッチしているという感じはなかった。
 たいていはこれで納得し、軽いキャッチボールに入る。
 こうして、ブルペン捕手を初体験することになった。
 しかし……。
「ま、最初だし気にしないぜ」
「すいません」
「だから、気にするなって。できないって言っても謝るほどじゃないからな」
 難しかった。
 魔理沙さんはこうフォローしてくれたが、私では速球の力にミットが負けてしまい、変化球になるとミットごと流れてしまう。お世辞にも、うまくキャッチングできているとは言えなかった。
「やっほー、調子はどう? 新任のブルペン捕手さん」
 輝夜さんがブルペンに姿を現した。
 私のことを「さん」付けするあたり、ちょっとしたからかいの意味もあるのだろう。
「調子いいよ。手が痛いし」
 私はミットから手を出し、それをブラブラさせながら答えた。
「いや、あなたのことよ、初めてでしょ?」
「難しい。以上」
 私は素直に白状した。
 試合前の投球練習。今日先発する投手の出来を把握できる場。そこに私が初めて足を踏み入れ、球を受けるのだ。
 投手としては、今日の出来を把握するためにも、全力で投げてくるし、気持ち良く試合に入ってもらうためにも、キャッチング以外にも気を遣う。
「そこらへんはそのうち慣れるわよ。じゃ、次の球から代わるわ」
「わかりました。魔理沙さん、次の球でキャッチャー代わります」
「お、わかった」
 すると、セットポジションに入り、クイックで投げてきた。
 振りかぶらないと言え、威力十分の球が投げる前に示したコースへと向かい、飛んでくる。
 ボールはきれいにミットの中へと収まり、ブルペンにバチンという音が響き渡った。
 素晴らしいコントロールに、私はおおっとうなった。
「ナイスボール」
 後ろからも輝夜さんがそう声をかけた。
「今ので30球です。じゃ、後は」
「はい、お疲れ様」
 これでお役御免。私は防具を外し、入れ替わりでブルペンから去っていくことになる。

 …………。

「――といった具合ですが」
 こうして私の説明が終わる。
 ってか、あんた投手コーチだろ、なぜ知らない。
 そう言うと、私は試合開始後のブルペンを担当するからと返事が。
 確かに、そうだった。私とは入れ違いだったのねなどと納得していると 
「ふーん。レティの穴って大きいのね」
 彼女の独り言がぼそっと聞こえた。
 ええ、それを一番感じたのは監督でもなく、チームメイトでもなく、私でしょうね。
 説明に納得してもらうと、しばらくは無言で肩を作り始めた。
 先発投手にはそれぞれ肩の作り方があるようで、私はそれを言われるがままに従っている。霊夢さんの場合、20球程立ち投げをしてから私に座るよう指示を出した。
 私は下に置いておいたマスクをつけた。
「じゃ、行くわよ」
 彼女は元気にそう宣言した。
「待って。コースは? イン? アウト?」
私がそう訊くと「外のまっすぐ」とだけ答えた。私は体を屈めた。そして、左膝を地面につけ、ミットを構える。
 手をいっぱいに開け、大きく口をあけたミットをマウンドへ向けると、それ目がけて霊夢さんは腕を振ってくる。
 最初だから軽く投げてくるかなという私の思惑は見事に外れ、全力に近いスピードで 放たれたボールは、あっという間に私のミットに吸い込まれた。
「よし、ナイスボール」
 思わず、出た言葉。手が少し痛いが、バチンという高い音がブルペンの中に響き渡る。うまくキャッチできたことの証拠である。
「もう一球」
 そう言って振りかぶる。
 私は同じように、外にミットを構えた。
 ボールが来る――それはほんの一瞬のことではある――のだが、今回のボールは少し中に入ってきたため、ミットへの反応が遅れ、パスという音がしただけであった。
「……」
 無言で私からの返球を受け取った。
(あ、やべっ。ちゃんと捕れなかった)
 自嘲気味になる。
 まっすぐと一言で言っても、選手にはそれぞれクセがあるので、それを把握しないとうまくキャッチすることができない。
 それから、しばらくは半々の割合でうまくキャッチしたり、できなかったりが続いた。
 1球ごとに声をかけたりするが、霊夢さんはただ無言で、どういう気持ちでいるのかがわからなかった。ただ、今になって考えると自分の調子を掴むためにも、投げることだけに集中してだけかもしれなかった。
 だから、変化球を投げる時も「フォーク」と、それだけを口にした。グローブの中でボールを挟むような仕草をすると、すぐに振りかぶる。
 いよいよ変化球である。『打た霊夢』などと揶揄されたときは、随所で落ちが悪かったり、コントロールが悪かったりと本当に気分屋のボールで、監督泣かせのボールだった。
 果たして、今日のフォークのキレは……。
 ストレートと同じフォームで投げられたボールは途中で消えた。本当にそんな言葉が合うほどの変化球。ここまでがあっという間の出来事で、私はしばらくその軌道に見とれ、ミットを全く動かすことができなかった。
 本当に直前になってから、ハッとして、ミットを動かそうとするのだが、本能的にこれではミットが追いつかないと判断した。なんとか両膝を落とし、私は立ち膝に前かがみのような姿勢で鋭く落ちたボールを抑えに行った。
 ミットで捕ることはできなかったが、なんとか体にボールを当て、なんとか前にボールを落とすことができた。
「……ごめん」
 変な格好でボールを受け止めることになった。それを詫びる。
「構わないわよ」
 返球したボールを受け取りながら、答える。
 相変わらず、作文用紙一行にも満たないセリフ。
 結局、この日フォークは1球も捕れなかった。魔理沙さんのスプリットだって、最後には捕球できたのに、少し悔しかった。
「次からカーブね」
 フォークと同じような仕草があった後、振りかぶる。
 リリースされた後、腰が一度浮いてしまう程高く上がったボールは途中でブレーキがかかり、斜めの軌道からゆっくりと落ちてきた。
 フォーク程、速いボールではなかったため、キャッチは楽に出来た。
 しかし、キレ、コントロールともに抜群でいきなり投げられたら、打者としても反応するのは難しいだろう。
「おおっ! ナイスボール」
 思わず出た言葉。これでなぜ打たれ続けたのかが、わからなかった。
「自分で調子がわかるか?」
 ボールを投げ返しながら、私は聞いてみる。
「なんとくね……。でも、よくはわかんないわよ」
「では、私からひとつ。カーブがいいから今日は大丈夫だよ」
「? どういうことよ」
「一試合で数球しか投げないカーブだけど、これがいきなり合わせられてしまう日は総じて良くないからな」
「そうなの?」
「そうなの。カーブが良いってことは腕がちゃんと腕が振れている証拠でもあるし」
「ふーん。次、スライダー」
 納得してくれたようだ。
 そして、問題のスライダー。投げる前に球種を教えられていたので、うまく反応できると思ったのだが、急な変化にミットをはめていた左手がボールの変化についていけなかった。
「あっ」
 といった瞬間、ミットからの追跡をあざ笑うかのように振り切ったボールは、そのまま後ろへと逸れていった。
「…………。ハハハ……。すいません」
 と言って、後ろにあったボールを拾い、返球するが――
「あ、ちょっと」
 と言って、高く浮いてしまったボールは霊夢さんのグローブを越え――。
 ネットの後ろにあった本タワーにあたる。そして、隣にいたパチュリーさんに向かって本が崩れ、ものの見事に崩れた本がパチュリーさんの頭にヒットし、崩れた本の音と「むきゅ」という声を残して、埋もれてしまった。ピチューン。
「…………」
 大惨事を私はそのまま見ていることしかできなかった。
『あんたね』
 霊夢さんとパチュリーさんの双方から怒られる。
「うぅ、申し訳ない」
 ただただ平謝りをする私。こんなに変化するボールだと思っていなかったし、捕れなかったことに対して動揺してしまったんだ……。


「ごめん。少し遅れちゃった」
 輝夜さんがやってきた。
「なんかさ~、ここへ来る前に大きな物音がしたんだけど、何かあった?」
『…………』
 なぜか一瞬だけ黙ってしまった。
 あわてて輝夜さんに説明する私。
 ……ええ。当然、怒られましたよ。
「霊夢はどう?」
 私への糾弾が一通り終わってから、彼女はそう話しながら、私の方へ向かって歩いてくる。
「ばっちりです」
 声を大にして言う。
 だが、
「本当のところは?」
 後ろでスタンバイしながら、霊夢さんには聞かれないようにぼそっと訊ねられた。本人の手前、調子が悪いですと言えないので、本音をこうやって聞くことになっている。
「……先日の完封の影響か、微妙なコントロールがいまいち」
 その気の遣いように、こちらも声を小さくしてしゃべる。
「ふーん」
 その後、私は球数を輝夜さんに伝えてから場所を代わってもらった。
 これで今日のブルペン仕事は終わりである。
「さ、試合を想定して投げるわよ。組み立てはさっきの打ち合わせ通りね」
「りょ~かい」
 輝夜さんが言うのを確認してから霊夢さんは振りかぶり、力のこもった球が輝夜さんのミットめがけて飛んでくる。
 それを輝夜さんは難なくキャッチし、
「ナイスボールよー」
 と声をかける。
「カーブ」
「おっけ~」
 そんな声を聞きながら、私はドアのノブに手をかけ、スコアラーとしてベンチに戻ることにしたのだった。

 さて、今日も試合が始まる。
 ブルペンからベンチへと戻るまでの道のり、私は移動しながら観客のいるスタンドへ目を移した。
 既に観客がたくさん詰め掛けており、まだ試合前なのに空席を探すのに苦労した。裏方としてもありがたいことである。

 今日の試合、霊夢さんと輝夜さんが組むのは久しぶりであり、長期離脱したレティさんが復帰するまでしばらくは、このバッテリーで試合をしなければならない。
 ただ、私にはこのバッテリーでも大丈夫だろうと思っていた。
 というのも、レティさんの行動から霊夢さんは、捕手のリードを信じてくれるようになったし、また、私はこの前の一件で、霊夢さんは自分から配球を勉強しているものだと思っていた。
 勘に頼っていた以前の一人よがりの投球にはならないよう、輝夜さんとも自分から今日のリードについて、色々と打ち合わせしたのだと思っていた。
 そして、資料が欲しがったのは、その打ち合わせのために必要だったのだろうと……。

 しかし、そうした予想は試合途中で違うということがわかったのだった。


ここまで~~


続きます。

魔理沙編も更新しようと思ったけれど、ダメだった。 orz

次回:(5-4)

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