とりあえず汎用性は高く

色んなことを投稿するブログ。現在は「東方野球の世界で幻想入り」を投稿したり、きまぐれに日々のことについて綴ったり。

第七話(7-1)「不真面目な優等生」

2008-11-02 21:53:54 | 東方野球幻想入り物語
今、ラミレスがサヨナラホームランを打ちました。

家族内では、にわかラミレス熱が……。

さっきまで、あんなに失望していたとか言っていたのに!!!

はぁ~


ここから~~


 ただ、記録をとりながら試合を見ていると、時たま奇妙な采配を目にすることがある。
 スタンドから見ていた時は、ベンチの中でしかわからない事情も考えての采配なんだな、と納得させることもできる。
 しかし、今は私もベンチにいる身である。スタンドにいる時にはわからない事情も知ることになったし、そうした中でのスタンドの反応というはかえって面白かったりする。
ただそれ以上に色んな事情を知っているからこそ、これはおかしいと思える采配も逆に増えたのだがね。
 こうした出来事を語るにあたり、私がスコアラーとしてタートルズのベンチに居座り始めたオープン戦にまで遡ることから始めよう。それが今回のヒロインでもあるしね。

 1、DH制の放棄とキャッチャー萃香。
 ソフトバンク戦で見せたこの采配。
 ピンチなると魔理沙さんが登場してくると、タートルズのオーダーがとんでも無いことになっていた。
 急に先発の魔理沙さんがリリーフ登板し、オーダーからDHが消えたのだ。
 まだその時は、ベンチ内にアリスさんくらいしか話す相手がいなかったから、どうなっているのかと聞きたかった。しかし、その姿が見つからない。
「あ、あれ?」などと言っている直後に魔理沙さんは大村に被弾。で、魔理沙さんの暴走だと発覚した後リベンジの打席に立つと、見逃し三振。
この試合、彼女のせいで苦戦したと言っても過言ではなかった。
 聞いた話によると、どうやらアリス監督に一杯盛って、自分の意のままに選手交代をさせたと言う。監督も珍しくキレていらっしゃった。
 当の本人は、試合後のスコアを渡しに行った際、ベンチで正座をさせられていた。
 声をかけようか迷ったが、やめておいた。
 かわいそうだが、フォローはできなかった。団体競技の野球で、チームを私物化したのだ。当然の報いかもしれない。

 2、成瀬相手に1~9番までホームランバッターを並べる。
 こちらはアリス監督が休んだ日。
 試合前のミーティングにて、魔理沙さんがこの日限りの采配を任され、発表した超攻撃型オーダー。
 これを見た瞬間、私は「ポカーン」となってしまったのを、今でも覚えている。
「どうしたんだ、スコアラー」
 魔理沙さんが私に言葉を投げかけてきた。
「……」
 迷った。意見を言うべきか、言わないでいるべきか。
「何もないのなら……」
「私たちのスコアは大量点か、ゼロのどちらかですね」
 間接的に苦言を呈する形にした。
「何言ってんだ。これで得点ゼロなんて」
「……ですよね。何言ってんだろう」
 弱々しく相手に同意することにした。
 初対面があんな感じだったので、少々遠慮してしまった。
 こうした形は結構長い期間、私の中で尾を引いていた。
 ちなみに、初対面に出した六角形だと思っていたものは八角形らしく、私が来る以前はこれを片手に異変を解決していたらしい。
 話を戻そう。
 本音としては成瀬相手に、そんなオーダーで通じるわけもないと思っていたが、結局、強く言い出せなかった。
 私は不安が漂う中、試合開始を迎えるのであった。
試合展開は案の定、ゼロ行進。しかも途中までノーヒット状態であった。
右打者が面白いようにショートゴロに打ち取られていく様子を魔理沙さんが苦笑しながら見つめていた。

 わかると思うが、この2つの事例、共通するキーパーソンは「魔理沙さん」だ。
 うん、ちょっと目に余るなと思っていたが、一方で彼女の選手起用が素晴らしかった。
 先のロッテ戦で、唯一の得点をあげた代走起用は魔理沙さんの采配によるものだったのだ。
 回が進むたびに、魔理沙さんは私のことをちらちらと、苦虫を噛み潰したような表情で見つめていたが、自らの采配でタートルズに得点が入る。結果、私の予想が外れることになったわけだが、魔理沙さんは、完封されることを予測していた私に対し「どうだ!」なんて顔もしていたっけ。
 もしかして、負けず嫌い?
 オープン戦の最終日――ええっと、私が精神的に壊れて、アリスさんにユニフォーム一式をもらった日と言えばわかるであろうか(スコアラー・涙目で逃走事件)――でも代打起用の助言で追加点をあげることに成功していたし、勝負勘は冴えていると言える。
これ以降、助言は監督公認にもなったしね。
 彼女の信条は、「野球はパワーだぜ」という発言からわかるようにパワー至上主義である。
 力勝負を挑み、調子が悪ければ打たれるが、良ければ手が着けられないという典型的な投手である。調子が悪くともなんとか試合を作ろうという気はさらさら無いらしい。
 そして、負けず嫌い。
 ということで、今回は私が魔理沙さんという難題に立ち向かった戦いの記録である。 

 5月12日(土)対阪神戦
 試合前から本人に2軍降格の警告がなされていたのを聞いていたので、私は良い機会だと捉えた。これでまた力勝負で失敗すれば、投球スタイルを変えてくるだろうと。
 ちょっとした荒療治でもある。
 最悪、点差に余裕を持った状態でも無理に力で行こうとして一発打たれるなら、それでもいいかなと思っていた。
 阪神は二回、主砲金本選手が魔理沙さんのマスタースパークをスタンドに放り込み先制。いきなり力勝負で失敗した。少しずつ点を取られてしまうパターンを予想した。
 ところが、それ以降は立ち直りを見せる。
 3・4・5回は言うことなし。6回は満塁というピンチを迎えるもののホームランを打たれた金本をセカンドゴロ。
 9回完投で3失点という、ナイスピッチングで締めくくった。
 最終回の2点は余計だが、本人が完投したいという意思を貫いた結果だから、深く追求することはやめておこう。
 翌日。私は魔理沙を呼び出した。
 本来は、本人にシートを提出してそれで終わりだが、直接言いたいこともあったため、呼び出した。
「昨日はお疲れ様。よく寝て疲れをとった?」
「バッチリだぜ」
 さわやかな笑顔で返してくれた。
「なぜ昨日は完投できたかわかる?」
 私はこう切り出すところから始めてみた。
「なぜって、私の調子がよかったからだろ」
 だからこそ、何の調子が良かったのかを聞きたかったのだが。
「じゃあ、これを見てくれ」
 そう言って、仕方なく私は2つのファイルを取り出した。
 一つは昨日の試合の配球シート。もう一つは先週、負けた試合の配球シートである。
 当初、負けたなら不必要な力勝負は避けるようにと言いたかったが、大事な試合での集中力は抜群で、途中までは1失点だけのペースだったので、いい試合の見本ができた。
 こういったものを見せて自覚させた方がいいと判断したからだ。
「いいかい?とりわけ球速が出ていたわけではないのに、昨日好投できたのはコースにボールが決まっていたからなんだ」
 私は4スミにきれいに決まっている配球表を見せた。
「一方、打たれた日の配球はこんな感じだ。」
 そのシートには4スミには球は集中せず、変わりに真ん中付近にボールが集まっているのがわかる。
 しかし、「どう?」などと聞いても「細かいコントールなんて無理」とかなんて言われてしまう始末。
「……」
「……」
 はい終了~。
「……は~」
 話が終わり、魔理沙さんが退室した後、私は頭を抱えた。
 これ以上強く言うこともできないし。ああ、どうしたものか。


~~ここまで


魔理沙編です。

これもまた不安な出だしですww

続く。

次回:(7-2)

第八話(8-1)「紅色の研究会」

2008-11-02 21:12:08 | 東方野球幻想入り物語
この話は元ネタが多いな~。

でも、元ネタがわかったら負けというのもあるけれど気にしないで。


~~ここから


「映像を使って、フォーム分析をしたいですって」
「ええ、しかも相手投手のフォームを、です」
 ここは例の如く、監督室。試合後、色々とまとめて報告するついでに今日は「ある進言」をさせてもらった。
「それで」
 監督はというと、淡々と話の続きを促している。
 既に私の扱いに慣れてしまっているようだった。
「フォームの癖によって、投げる前に球種やコースが判明したら、打者としても狙いが絞りやすいと思いませんか?そういうことをやりたいんです」
「ふ~ん、面白そうだけれど誰が撮影するのよ」
「…………」
「…………」

 数分後。
 う~ん、いい方法と思ったのにな~、とつぶやく。
 今は帰り道の最中である。
 結局、今日の進言は即採用とはいかなかった。
「そばにいてくれる人がいないと意味が無いでしょう」という指摘は、あまりに失念していたことだったので、しばらく声を失ってしまった。
 確かに撮影中、そばで撮れているかどうかを確認してくれる人がいないままでは困るのだ。これを克服しないと実施には至らないのだ。
「んっ!」
 ふと視線を移すと、
「80、81、82……」
 門の前で素振りをしている姿が見えた。
 よく見えないで近づいていると、ありゃあ、美鈴さんじゃないか?
 ちなみに、今日の試合は紅魔館のところで行われていたので、帰り道の途中に紅魔館の門の前を通ることになっているのだ。
声をかけてみる。
「こんばんは~」
「何奴!?って、忠実さんじゃないですか?」
「素振りですか?頑張りますね」
「いえいえ。いつ1軍に呼ばれてもいいようにですね、自主練だけはやっておこうと」
「でも、それで本業の門番が疎かになるのはよくないことね」
 いつの間にか会話に入ってきている方が一人……。
「さ、咲夜さん」
 門番の方は会話に入ってきた人の姿を認めて、途端に顔が真っ青になる。
 もう言わずともわかると思うが、会話に入ってきて門番を震え上がらせたのは紅魔館のメイド長、十六夜咲夜さんだった。
 思いがけない登場に会話の雰囲気は一気に殺伐してくる。
「逆に考えるんだ。素振りをやっていることで侵入者への威嚇になっているんだと」
 だから、私がたまらずフォローに入る。すると、咲夜さんは美鈴さんにナイフを投げている格好のまま首だけをこちらに向けて
「その威嚇に集中していて、こっそり忍び込む音に気付かないようじゃ本末転倒だわ」
「……」
 きれいに切り返してきた。しかも、完璧に論破しているし。さすがです。
「で、何か用だったの?」
「いえ、何もありません」
 先の発言で、攻撃対象がこちらに移ったように感じたので、ものすごい勢いで首を横に振る。
そうこう言っている間に、素振り中に本職の仕事をしていた門番も粛清されたし。
「スコアラーさんも暗いから、もう散歩をやめて帰ったらどうかしら?」
「いや、今が帰りです」
「こんな時間まで何をしていたの?」
「試合の分析と監督への進言で」
「何を進言したんですか」
 会話を遮り、ナイフが刺さったまま聞いてくる美鈴さん。
なんかその様子は既に遊園地にあるお化けの屋敷にあっても違和感はなさそうだ。

「なるほど、人の配置ね?」
「適当な人物がこの場にいるけど、どうかしら」
 そういって視線を美鈴さんに移す。
「わ、私ですか」
 確かに、ベンチ入りすらしていない美鈴さんならこういった作業を任せてもいいかもしれない。
 一応、冗談にも聞こえそうだがね。
「選手にやらせてもいいですが、貴重な戦力なので。しかも出場登録されたらその日の撮影は困りますし。逆に選手じゃない人の方が適当ですかね」
「「…………」」
 それを聞いて考え込む二人。
「…………」
 私も何らかの反応を期待して、黙ることにした。
「あ、そうだ。妖精メイドにやらせたらいいかもしれませんよ」
 美鈴さんが提案してくる。
「養成メイド?」
「それ、誤変換が考えられるわよ」
 咲夜さんが苦笑しながら訂正してくれる。
 なぜわかったのだろうか。まあ、どうでもいいが。
「咲夜さんの下で働くメイドたちですよ。咲夜さんは何ていったって、そういった妖精たちを束ねるメイド長なのですから」
 美鈴さんが話を進めるためにも、説明してくれた。
「使わせてもらってもいいんですか?」
 ぱあっと、表情を明るくしながらその権限がありそうなメイド長に聞いてみる。
「お嬢様の許可が無いことには」
 そういう権限はないらしい。
「聞いて来てもらってもいいですか?」
 独断ができそうにないので、大元の許可をお願いしてみる。
「……ちょっと、待っていてもらえるかしら」
 そう言うと、咲夜さんは館の方に向き、姿が消え……
「消えたーーーーー」
 思わず叫ぶ。
 おい、本当に消えたぞ。走っていって姿が見えなくなったってレベルの話では……
「そんなに騒いでどうしたんですか」
 この門番は門番で不思議そうな表情をするし、奥が深いぞこの世界。

 十分後。私は館の奥まで通された。
 館の主――レミリアさん――との面会である。
しかし、館の主の方は試合後で疲れたのか、明らかにだるそうに私を眺めていた。
「用件は何なのかしら?」
 私の描写を裏付けるかのように、挨拶とかを省いて要件だけを聞いてきた。
 さっさと終わらせたいようだった。
 何にせよ、ここからが交渉の開始であった。
 ドクドクと心拍数が上がる。
 私は自分を落ち着かせる。
(落ち着け。要求はアウトソーシングだ)
(レミリアさんも疲れているようだし、さくっと許可をもらうためにも簡潔に伝える必要がありそうだ)
(よし、ならば第一声を考えてみよう)
(咲夜さんの下で働いている妖精メイドを、私の仕事のために貸して下さい)
 うん、これで大丈夫だ。行くぞ!
「咲夜さんを私に下さい」
「…………」
「…………」
「……あ、あれ?」
「フラン」
「な~に、お姉様」
 ひょこっりと出てきたウチの4番。
 何をさせる気だ。
「新しい遊び道具が来たわよ」
 ああああああああああああああああああああああああああああ
 この後かろうじて聞けたのは、レミリアさんが顔を真っ赤にしながら「さ、咲夜は私のものなのよ」という言葉くらいだった。


ここまで~~


紅魔館編です。

普通は全治何か月という重症ですが、ギャグキャラ補正ですぐに復活します。

もともと気にしてないと思いますが、それでも気にせず

次回の活躍にご期待下さいww

次回:(8-2)

第五話(5-1)「冬に染まれば」

2008-11-02 20:54:35 | 東方野球幻想入り物語
どんどんしまちゃう……じゃなくて更新していきますね。

この話に関しましては、キャラ安定に自信なし。


ここから~~


 時期は交流戦も終わり、夏が本格的に近づいてきた頃――。
 私がココに来てから既に四か月以上が経っていた。
 スコアラーの仕事?
 毎日やってますよ。
 まあ、これ以前のごたごた話は……また気が向いたときに話をさせてもらおう……。いろいろあったし、思い出すのも億劫だしな。

 さて、今回の話はこんな話だ。
 ――悪いことは必ずバレ、天から罰が与えられると言う。
 いきなり、何を言い出すかわからない?
 今日はその罰が与えられた、記念すべき日なのだ。ハハハ……。
 ここは沈黙が続く店内。
 心の中でその罪を悔いることはあっても、私は正面にいる少女には決してその罪を告白しない。
 なぜ?
 吐いたらヤられるからさ……。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 ここは喫茶店。罪を犯した場所であり、罪を告白させられる場所にもなった。
 ただ、その少女の格好は喫茶店にも取調室にも似合わないのだが、その発言は飲み込んだ。とりあえず、刺激しない方がいい。
 私とテーブルを挟んで正面にいる少女は決して目線を交わさない。
「どういうこと?」
 少女の声はドスが聞いている。
 即興の取調室にもなったこの喫茶店の一角、私の目の前にはコーヒーがあったのだが、それが減る傾向は一切ない。なんでも、被疑者に飲み物を与えると、言おうとしたことまで飲み込んでしまうからだそうだ。どこから知った情報だ、それは。
 取り上げられたコーヒーは私の手の届かないところに置かれ、既に湯気が消えている。ああ、冷めてしまったな。もったいない。
 私は現実逃避に今日の出来事を振り返ってみた。


 今日は試合の無い日、私は霊夢さんに呼ばれた。
 ゆっくり休もうと思っていたが、前日にアポを入れられ、ぐうたら過ごす計画は崩壊した。
 まあ、コーチからの頼みだし、何か戦略的なお話かもしれない。
 そんな予想を立てながら、私は博麗神社の石段を登っていた。
私の姿を認め、「遅いわよ。あっちに素敵な賽銭箱があるから先に……」と適当な挨拶をしてきたので、「賽銭お断りします」と返しておいた。
「連れないわね」
 お金関してはシビアなのでね。
「で、用件と言うのは?」
「ん?相談事よ。ここだと、色々湧いて来るし、聞かれたくないから別の場所で」
「……わかりました。」
 とりあえず、相談事らしく、私たちは人里のある喫茶店に入ることにした。
「ここは初めて?」
 霊夢さんは私に訊ねた。
「ええ。なかなかこういう機会もなかったですしね」
 嘘だ。来たことがある。しかも、彼女には知られたくない理由で……。
「ふうん」
 ちょうど、店員が注文に来た。
「コーヒーでいいわよね?」
 急に私にふって来た。
「ええ」
 いきなりだったので、返答の声がびびっている。
「じゃあ、コーヒー1つで」
 店員が下がっていく。
「霊夢さんは何か頼まないんですか?」
「まだ、誰だかわからないけれど、コーヒー代の請求書が来たじゃない。あれがまだ尾を引いているのよ」
 グサッ!グサグサッ!!
 何かやな予感がする。というか、もう私は罠に嵌ったかもしれない。
 だって、お代の請求先とそれを請求した場所で相談事なんて、どう考えても……。
「ほら、コーヒーが来たわよ」
 私の思考が停止される。
 コーヒーが置かれると、店員が「ああ、先日はどうも」などと私に会釈してきた。
 ギクりとしながらも「……どうも」と返す。
「あら、この店は初めてだったんじゃないかしら」
 自分でも表情が険しくなるのがわかった。
 すると、何を思ったか「この人、店に来たことあんの?」とか店員に聞きやがった。
 聞かなくていいよ、とは言えずに黙っていると、そっと店員が私にアイコンタクトをしてきた。
(しゃべってしまってもいいですか?)
(ダメダメ!)
 私は小刻みに顔を横に振り、拒否の姿勢を見せた。
「…………」
 すると、テーブルを挟んだところにいる巫女さんが私に対して、無言の圧力をかける。そして、一言。
「別にいいわよ。聞きだす方法はいくらでもあるから」
 ニコっというよりはニヤリという表現の方が似合う表情だ。
「実はですね。あのお客様は……」
 店員、弱っ!
 終わったな。
 その後、この店の請求書が私に見せられ、店員は全てを語ってしまいました。
 覚えられていましたよ。あんなにコーヒーのおかわりを注文し、請求書は、かの「博麗神社」だものな、そりゃ誰でも覚えているわ。ハハハハ
 そして、一言。
「あんただったのね、請求書にあったコーヒーを飲んだのは」


 で、冒頭に至るわけだ。
 きつい。そして戦況は既に詰んでおり、私の投了待ちの状態だ。
 打開策……なんてあるわけない。
 すぐに観念した。
「すいません。私がやりました。それ相応の罰は受けます」
 頭を下げながら、私は自白した。
「やっぱり、私の勘は冴えまくりね」
 ニコっと笑う巫女さん。
 今日一番の笑顔であるが、おまいは誇れる程のことを何もやっていない。
「本当に疲れたわ」
 すぐにぐだっとする巫女さん。
「こうやってさ、いつもの異変解決みたいに誰かを問い詰めたり、ボコればいいってわけじゃないのが、この異変の難点よね」
 それ以前の異変に関わったことが無いので、いまいち私にはピンと来ない。
「霊夢さん、なんでも言って下さい。神社の掃除でも、営業でもやりますから」
 彼女はその言葉を待っていたようだった。
「ん、そうね。あんたのデータにはチームの皆がお世話になっているし、お茶とかコーヒーとかの趣向品を飲みたい気持ちもわかるわ。私も試合中、飲んではいるしね。でもね、勝手に人の金で飲むとなれば、お仕置きしておく必要があるわね」
 迫り来る魔の手。
 イ``ェェェェェェェェェェアアアアアア


 数分後……。
 満足顔を見せる巫女さんとゼロ距離で床にあるホコリと見つめ合っている男という図が出来上がった。
「あとついでに、私が復活するまでのバックアップもやってもらうわよ」
「……え、え?さっきボコられて終わりじゃ」
「……」
 そんなもんだけで済ますつもりですか、と言わんばかりに形相だ。
 非常に威圧的である。うわ巫女さん怖い。
「ではバックアップというのは?」
 私はあきらめて、仕事がどういったものか確認することにした。
「それはスコアラーに任せるわ。ようは私が復活できれば何でもいいのよ」
 少しいい加減だ。そういえば、試合中も何かにつけ巫女の勘とか言っていたよな。
 そういう態度が投球にも響いているのでは、と心の中では言ってみる。
 何にしても、また急な形で私に依頼が舞い込んだものだ。しかも、今回は拒否できそうにない。元々、断ったことなんて無いがね。
 因果応報。コーヒーのただ飲みがそれなりの利子を含んで返ってきたのだ。
「できないって言うの」
 返事が遅い私に耐えかねて、痺れを切らす。
「できますし、やります。というかそのお仕事、やらせて下さい。お願いします」
 毎度毎度進歩のない人間だ……。結局勢いで引き受ける嵌めに。
 私の場合、積極的に物事を起こす気にはなれないが、物事の方から目の色を変えて襲ってくるようだ。
 もうやだ、この人生。
「うんうん、そうでなくちゃ」
 霊夢さんは再び笑顔に見せた。
 その笑顔が眩しくて、私は直視できなかった。
 結局、私の仕事は打たれた日の配球データ及び原因とも思われる投球フォームの分析をすることになった。
 ああ、またコーヒーの消費量が増える日々が続くお。


ここまで~~


霊夢編です。

キャラがちょっと乱暴気味ですが、主人公の因果応報なのでw
 
許してください。

次回:(5-2)

第六話(6-1)「そして、心地の良い歓声を」

2008-11-02 20:32:54 | 東方野球幻想入り物語
遅くなりましたね。スイマセン。

一気に更新する予定なので、よろしくお願いします。


ここから~~


 彼女が凡退したときの反応というのはひどいものだ。
 この日も代打で登場したが、早くも二球目に手を出し、詰まったあたりがショート正面へと転がっていく。
 ショートは軽快にさばき、ワンステップスロー。
 彼女の全力疾走空しく、送球の方が席にファーストミットへと到着する。
 ショートゴロ。
 私はスコアにその結果を記す。
 そして、球場内からは「萃香乙!」の声が聞こえてくる。
 叱咤激励という意味も込められているとは思うがね。
 彼女――もうお分かりになったと思うが、萃香さん――はベンチに戻ると、ヘルメットを取り、バッティング手袋を外す。
 こうやって成績をつけていると、開幕してから1ヶ月近く、どうも調子が上がってこない。
 代打での起用が主なので、一日に二打席立つ方が珍しい。その点では少し可哀想な気もする。
 この回が打者一巡して来ない限り、次の回には萃香さんの打順に投手が入り、今日の役目は終了する。
 あと残された役目といったら、声を張り上げながら、チームの行方を見守るくらいだった。
 
 試合後、いつも通り映像を見ながら分析をしていると
「おーい、スコアラー」
「うぉ!」
 勝手に部屋のドアが開けられ、萃香さんの姿が出てきた。
 なんとも軽いノリで、入室と同時に漂ってくる臭いが鼻につく。
「くさっ!」
 臭いの原因である酒くささが部屋の中に充満する。
「まあね。何やってのー?」
「今日の試合の分析」
 事務的に答える。
「ふーん、私の分もやるの」
「もちろん、もう終わったけれど見る?」
「どんな感じ」
「こんな感じ」
 一枚のシートを見せる。
 9×9に分割した配球表。
 「84」に一球目ストレート 見逃し ボール
 「43」に二球目シュート  打球D ショートゴロ
 コメント:狙いとは違う球であったが、そのまま追っかけて打った模様。ファーストストライクに対する工夫が必要。
 と表記されている。
「うーん、よくわかんないね」
「例えば今日の場合、直球狙いだったら2球目の変化球は無理して追っかけないとか。いっそのこと自分には直球なんて来ないと、くくって変化球狙いにしてみるとか」
「なるほどね」
 意外と素直だ。
 チーム内には、こういったアドバイスをあまり聞いてくれない人々がいるので、こうも素直だとありがたい。これは次の打席期待できるな。

 そして、翌日。
「ピンチヒッター萃香 背番号0」
 場内アナウンスに歓声が響く。
 萃香さんはネクストサークル内で軽く素振りした後に打席に向かう。
 その数分前。
「狙い球だけ打てばいいんだよね~」
 萃香さんが、試合中にスコアをつけている私に声をかけてきた。
 昨日のことを覚えていたらしい。あんなに酒臭かったのに。
「そうそう。無理して違う球に手を出すなよ」
 私はそう言って、送り出した。すると「行ってくるね」と返事をし、彼女は嬉々としてネクストの方へ向かっていた。
 視線をバッターボックスの方へに移す。萃香さんがゆっくりと構えに入る。
 はたして、どうなることやら。

 そして、2ボール2ストライクの並行カウント。 
 投手がサインにうなづき、捕手が外に寄っている。
萃香さんがゆっくり動き出す。
 ボールはきれいな糸を伴って、アウトコースにズバッと決まる。
審判がストライク・スリーをコールした。
 見逃し三振。萃香乙。
「……」
 攻守交代の隙を狙って、私は戻ってきた本人に対してこう聞いた。
「変化球を狙っていただろ」
「なんでわかったの?」
「動き始めるのが遅かったからな、相手のキャッチャーにも気付かれていたぞ」
 バレバレだから来ねーよと言ってもいいが、いろいろと工夫してくれた結果だ。本人に対して追い討ちをかける気はない。
 唆した責任もあるしね。
「うう……難しいよ」
 彼女はとうとう頭を抱え込んでしまった。

 そして、真夜中
「よー、スコアラー」
 昨日と同じ臭いを引き連れて、彼女は再びこの部屋を訪れた。
 しかし、いつも以上にフラフラしているように見える。量が多過ぎないか。
「ちょっと聞いてよ」
「はいはい」
 私が正面を向く。
「私ね、とうとう登録抹消になってさー」
「……」
 ヤケ酒か。それもしょうがないか。
「でも交流戦ではDHがあるから、それまでに調子を取り戻しておいてだってさ」
「そうか」
「どうしようもないよねー。萃香乙とかさ、言われたくないのにさ、ちっとも打てないんだよ」
 相当お困りのご様子。
「何で打てないんだろう」
「わからないのか?」
「まあね。わかっていたらもうちょっといい成績を残せていると思うし」
 萃香さんは身体能力も非常に優れており、打力、肩力においてチームトップクラスだ。
 そう言ったものを考慮すれば、打率1割台というのは不本意だろう。
「ノート持ってきているか」
「え、……ノー…ト?」
「開幕前に何日か連続でミーティングしただろ」
 若干眉をあげながら助け舟を出してあげたが、「ええっと、こんな感じで」と持ってきたノートの様子はひどかった。
 怒ってやりたいが、まだシーズン中だし間に合うか。
「よし、わかった。抹消された期間でなんとかしてやろう」
「本当?」
 萃香さんの表情がぱっと明るくなった。
 こうして、『萃香乙減少化プロジェクト』が始動した。


ここまで~~


萃香編スタートです。

日本シリーズ始まりましたね。

いつになったらこの時期が消化試合にならないんでしょうか。

6年ほど前からこんな感じですが……は~。

次回:(6-2)