おはようございます。
みずみずしくきよめられたまっさらさらの朝が訪れました。新しい朝です。希望の朝です。
本日は2007年5月19日の記事から抜粋させていただきます。
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かに会席のデザートを食べ終えて、お茶を一口飲んで、Nが口を開いた。
「実は、昨年の9月に離婚した。いわゆる熟年離婚だな。流行の最先端だろう?」
戯けて見せたNの笑顔が寂しかった。
「仕事が忙しくて、ほとんどが単身赴任だったから、変わらないといえば生活は変わらないんだが……。孫も別れた家内が連れて遊びに来るしな」
「そう言えば、土曜日は孫とプールに行くと言っていたよな。この前電話で……」
「お子さんは?」
「娘が二人……」
独身のSが心配そうにNを覗き込む姿が、私の中のNの寂しさをあふれさせた。
「でも、Nさん。Y先生に比べれば……ね」
「ああ」
私の知らない話を二人は知っている。
「Y先生、何かあったのか?」
「澤谷さん、本当に知らないの?」
「俺も長い間、行方不明にされていたけど、澤谷も学生運動をやって以来、警察に追われ続けている、というまことしやかな噂が流れていたからな」
「ワハハハ……。しかしそれは、Y先生を中心に緊密に交流のある同窓生たち、ということの証明だよ」
Sの話は、こうだった。
Y教師の奥さんは、同じ教師をやっていたが結婚して家庭に入り、教師を辞めた。二人の娘さんがいる。奥さんは27歳のときに白血病で亡くなった。
Y教師は再婚した。
「でも、前の奥さんを先生は忘れられない、と思うのね」
「それは確かだね。27歳で亡くなるわけだから、幻影がつきまとうかも知れない」
2時間を越えての食事は終わった。
Nは、近くの置屋などがある情緒ある町並みを案内してくれた。大石内蔵助が通った一力も詳しく説明してくれた。そこかしこにある黒塗りの格子は趣きがある。祇園としての観光のためもあるのだろう。
Nは、インドの珈琲を飲みに行こう、と二人を誘った。
土曜日の午後で多くの人で街はにぎやかだった。その中をNは、脇目もふらずに早足で歩く。Nの離婚の原因が分かったような気がした。
“奥さんは、歩幅を合わせて、楽しみながら、景色を分かち合って、歩みたかったに違いない”
ほとんど確信的に納得した。
Nは、黒胡麻珈琲を頼み、Sと私は炭焼き珈琲を頼んだ。
「地元では毎年のように、というか、年に何回か集まっている。Y先生が大学を卒業して教師になって初めて持ったクラスだからな」
「それはそうだけど他のクラスも持ったし、学校も変わったんだろう」
「俺たちのクラスだけらしいな。集まるのは……」
「地元以外では、東京で同窓会を一度やったわ」
「じゃあ、京都にみんなを呼んで、同窓会をやろうよ」
「いいわね」
「三人でそれぞれ企画してみて、近々企画を持ち寄って検討しないか?」
「企画会議だな」
私は、同窓生の顔がなつかしく思い浮かんできた。Y先生をはじめクラスメートがいとおしく感じられ、いますぐにでも会いたくなった。
「黒胡麻珈琲は体にいいんだよ」
Nは、自らを説き伏せるように言った。
「そういえば、クラスの仲間は4人亡くなった……」
「誰が亡くなったんだ」
「事故でX。それから二番目が女性のZさん。癌だった。それからVとW。内臓疾患と脳梗塞だった」
「男3人、女1人か……」
「クラスは49人だったかしら。先生入れて50人だったから」
「とにかく、京都で同窓会を出来るだけ早くやろうよ」
自宅に帰ってきたのは、午後4時半を過ぎていた。
出かけて帰るまで約6時間という短い時間だが、沢山の美しい絆にあたたかく結ばれているようなしあわせを感じた。
30分くらい前に会っていたSとNに携帯を入れた。二人の声を聞き、京都で同窓会をやりたい、と心の底から込み上げてきた。と同時に、Sは12年ぶり、Nは39年ぶりに会った感慨を覚え、おしつぶされるほどの切なさといとおしさが内からあふれだし、涙がこぼれそうになった。(完)
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本日オフィシャルブログでは、
ナイナイアンサーでご活躍の心屋仁之助さんの
「成長というもの」
を掲載させて頂いてます。
どうぞご覧下さい。
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澤谷 鑛 ヒューマンライフセミナー in 東京開催決定!!
6/2中央区立産業会館10:00~16:00
ヒューマンライフセミナー in 東京は5月、7月の開催がありません。
今回席が少ないので、この機会を逃さずに、今すぐお申し込みください。
http://www.kou-sawatani.com/sem-hls.html#sem01
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みずみずしくきよめられたまっさらさらの朝が訪れました。新しい朝です。希望の朝です。
本日は2007年5月19日の記事から抜粋させていただきます。
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かに会席のデザートを食べ終えて、お茶を一口飲んで、Nが口を開いた。
「実は、昨年の9月に離婚した。いわゆる熟年離婚だな。流行の最先端だろう?」
戯けて見せたNの笑顔が寂しかった。
「仕事が忙しくて、ほとんどが単身赴任だったから、変わらないといえば生活は変わらないんだが……。孫も別れた家内が連れて遊びに来るしな」
「そう言えば、土曜日は孫とプールに行くと言っていたよな。この前電話で……」
「お子さんは?」
「娘が二人……」
独身のSが心配そうにNを覗き込む姿が、私の中のNの寂しさをあふれさせた。
「でも、Nさん。Y先生に比べれば……ね」
「ああ」
私の知らない話を二人は知っている。
「Y先生、何かあったのか?」
「澤谷さん、本当に知らないの?」
「俺も長い間、行方不明にされていたけど、澤谷も学生運動をやって以来、警察に追われ続けている、というまことしやかな噂が流れていたからな」
「ワハハハ……。しかしそれは、Y先生を中心に緊密に交流のある同窓生たち、ということの証明だよ」
Sの話は、こうだった。
Y教師の奥さんは、同じ教師をやっていたが結婚して家庭に入り、教師を辞めた。二人の娘さんがいる。奥さんは27歳のときに白血病で亡くなった。
Y教師は再婚した。
「でも、前の奥さんを先生は忘れられない、と思うのね」
「それは確かだね。27歳で亡くなるわけだから、幻影がつきまとうかも知れない」
2時間を越えての食事は終わった。
Nは、近くの置屋などがある情緒ある町並みを案内してくれた。大石内蔵助が通った一力も詳しく説明してくれた。そこかしこにある黒塗りの格子は趣きがある。祇園としての観光のためもあるのだろう。
Nは、インドの珈琲を飲みに行こう、と二人を誘った。
土曜日の午後で多くの人で街はにぎやかだった。その中をNは、脇目もふらずに早足で歩く。Nの離婚の原因が分かったような気がした。
“奥さんは、歩幅を合わせて、楽しみながら、景色を分かち合って、歩みたかったに違いない”
ほとんど確信的に納得した。
Nは、黒胡麻珈琲を頼み、Sと私は炭焼き珈琲を頼んだ。
「地元では毎年のように、というか、年に何回か集まっている。Y先生が大学を卒業して教師になって初めて持ったクラスだからな」
「それはそうだけど他のクラスも持ったし、学校も変わったんだろう」
「俺たちのクラスだけらしいな。集まるのは……」
「地元以外では、東京で同窓会を一度やったわ」
「じゃあ、京都にみんなを呼んで、同窓会をやろうよ」
「いいわね」
「三人でそれぞれ企画してみて、近々企画を持ち寄って検討しないか?」
「企画会議だな」
私は、同窓生の顔がなつかしく思い浮かんできた。Y先生をはじめクラスメートがいとおしく感じられ、いますぐにでも会いたくなった。
「黒胡麻珈琲は体にいいんだよ」
Nは、自らを説き伏せるように言った。
「そういえば、クラスの仲間は4人亡くなった……」
「誰が亡くなったんだ」
「事故でX。それから二番目が女性のZさん。癌だった。それからVとW。内臓疾患と脳梗塞だった」
「男3人、女1人か……」
「クラスは49人だったかしら。先生入れて50人だったから」
「とにかく、京都で同窓会を出来るだけ早くやろうよ」
自宅に帰ってきたのは、午後4時半を過ぎていた。
出かけて帰るまで約6時間という短い時間だが、沢山の美しい絆にあたたかく結ばれているようなしあわせを感じた。
30分くらい前に会っていたSとNに携帯を入れた。二人の声を聞き、京都で同窓会をやりたい、と心の底から込み上げてきた。と同時に、Sは12年ぶり、Nは39年ぶりに会った感慨を覚え、おしつぶされるほどの切なさといとおしさが内からあふれだし、涙がこぼれそうになった。(完)
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どうぞご覧下さい。
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澤谷 鑛 ヒューマンライフセミナー in 東京開催決定!!
6/2中央区立産業会館10:00~16:00
ヒューマンライフセミナー in 東京は5月、7月の開催がありません。
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