金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

お米の雑学~本当に日本のお米は高いの?

2010年12月01日 | うんちく・小ネタ

今日(12月1日)の読売新聞「農業開国」は江戸時代の米の話からスタートしていた。それによると1石とは大人1人が1年間に食べる米の量だ。1石は2.5俵。1俵は60kgだから年間大人1人150kgの米を食べていたことになる。1日では約411gである。米1合が150gであるから、約2.7合だ。

「起きて半畳寝て一畳食ったところが2合半」という言葉があるから、この数字は妥当だろう。米1合は炊くと茶碗2杯分、カロリーでいうと570キロカロリーだ。つまり1日2.7合の米を食べていると、1,539キロカロリーのエネルギーを取っていたことになる。今の日本人の平均摂取カロリーは1900キロカロリーだから、江戸時代の人が米だけで大部分のエネルギーを補えたことが分かる。もっともそれだけでは栄養が偏るし、健康管理上問題だ。だから小金を持っていた江戸の職人さんなどは、「小腹が空いた」などといって鮨などを食い、健康管理に努めていた訳だ。

ところで江戸時代の日本の総石高は約3000万石、人口は3千万人だったから計算上は年間1人1石は確保できていた訳だ。米を満足に食べることができない人がいたということは、経済・政治・流通体制の問題だったのかもしれない。

昨日政府が発表した来年度の米の生産目標は795万トン。石に直すと5,300万石である。読売新聞の記事によると、江戸時代1石=150kgの米を作るのに、1反(=10アール)のたんぼが必要だった。現在は1反(=10アール)で約520kgの米が取れるので、単位辺り収穫量は3倍以上に向上している。

読売新聞は「ただ、単位面積当たりの収穫量に関する統計では、日本は14位と高い水準ではない」と報じている。これだけを読むと「やはり日本の米は生産性が低いのか?」と思う人がいるかもしれない。確かに現在の米単収はヘリコプターで種まきをしているカリフォルニアの粗放農業よりも3割低い。だがこれは日本の米作りが単収向上のための品種改良などの研究を止めていたからだ。単収が増えると米の生産に必要な水田面積は縮小するので、さらに減反面積を拡大せざるを得なくなる。このため単収を向上させる研究は、国や都道府県の試験場でタブーとなっているのだ。マスコミはそのあたりまで突っ込んだ報道をするべきだろう。

私は日本はやる気になるともっと単位当りの収穫量をもっと増やすことができると考えている。

ところで本題の「日本の米は本当に高いのか?」ということについて。

農水省が公表しているデータによると、米60kg(1俵)を生産するコストは、全国平均で14,178円、1kgに換算すると236円である。農水省はTPPが実施されると、1kg57円という安い輸入米が入ってきて、コシヒカリ等の銘柄米以外は全滅する、その金額は2兆円という試算を出している。

この試算には2つの大きなマヤカシがある。第1のマヤカシは全国平均の中には、自分で食べる程度の米しか作っていない兼業農家を含んでいることだ。米作農家(1経営体)の平均作付面積は133アール。だが米作農家130万の2割は作付面積30アール以下の零細農家(零細というと貧しいというイメージを持たれるが、彼等は兼業農家である)だ。10アールの田んぼからとれる米は520kg約3石。江戸時代の基準でいうと、大人3人が年間に食べる量だ。

作付面積が15haという規模の大きい専業農家について生産価格を見ると、1kg148円である。

次のマヤカシは1kg57円の輸入米がどこにあるのか?という点だ。農水省は政府が輸入するミニマムアクセス米の価格を公表しているhttp://www.maff.go.jp/j/soushoku/keikaku/soukatu/pdf/ma_hokoku.pdf

がそれによると主食用の中国産うるち米は1kg157円で、米国産うるち米は139円なのである。57円で手に入る米は「主に加工用」とちゃんと断りがついている。

つまり品質の高い日本の米と加工用の輸入米を比べて日本の米は高いと農水省は主張しているのである。

以上のことをまとめると「作付面積が15ha以上の日本の米作農家の米は輸入米に較べて高くない。また単収向上の品種改良等を行うとさらに競争力が増す」というのが私の結論である。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする