エコノミスト誌に「米国で不況下、自治体の経費を削減するため死刑廃止に向かう州がある」という記事が出ていた。米国50州の内死刑を廃止している州は14州だけだが、不況の影響でコロラド、カンサス州などで経費削減から死刑廃止に向けて議論が起きているそうだ。
実は「財政難に苦しむ州が死刑を再考している」という副題を見た時、一瞬「経費削減のため終身刑を減らして死刑を増やすのか?」と勘違いしたが、死刑の方が終身刑より費用がかかるということだ。
死刑判決を下すためには、集中的陪審員の選択、審理、上告という手続きに10年に及ぶ時間がかかる。冤罪を防ぐために死刑判決にはより慎重な審理を尽くす必要がある訳だ。また死刑囚は厳重な監視の下独房に収監されるというのもコストアップ要因だ。
アーバン・インスティチュートというシンクタンクの研究によると、メリーランド州で調査したところ死刑判決には1件3百万ドルかかったということだ。これは死刑を求めないケースに比べて2百万ドルも高いとエコノミスト誌は報じている。
3百万ドルというと約3億円だ。不思議な符合だが日本のホワイトカラー族の生涯賃金にほぼ等しい金額である。この辺りの金額が命の重さということだろうか?
死刑が廃止され終身刑が一番重い刑となると、犯罪抑止力が減少するのではないか?と懸念されるかたもいるかもしれない。しかしエコノミスト誌は「最も熱心に死刑執行を行っているテキサスやオクラホマのような州の方が、死刑を廃止している州より犯罪率は高い」と死刑廃止論者に有利なデータを紹介している。
最近日本で「こんな残虐な犯罪は死刑に値するのではないか?」と思う事件の判決が懲役刑だたケースがあった。まさか国の財政難を配慮して裁判所が死刑判決を減らしているとは思わないが・・・・。