小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

韓国・北朝鮮の南北会談の陰で、蚊帳の外に置かれた安倍総理の安保・抑止政策の意味を問う。

2018-01-11 07:33:14 | Weblog
 またも安倍総理は蚊帳の外だったようだ(「ようだ」と書いたのはメディアの報道がこの見方でほぼ一致しているからだ)。もちろん朝鮮半島における南北会談のことだ。
 すでに会談の結果はテレビのニュースや新聞でご承知だと思うので繰り返さないが、会談は北朝鮮のペースで進んだという。韓国側は何とか北朝鮮の核開発にストップをかけようと何度も試みたが、北朝鮮の頑なな姿勢を変えるには至らなかった。それでも米トランプ大統領は韓国の文大統領と深夜の電話会談で、「北朝鮮と対話する用意がある」と伝え、改めて平昌オリンピックが終了するまで米韓合同軍事演習を行わないことを確認した。
 南北会談が行われる前も、会談中も、会談が終わってからも、安倍総理周辺からはいかなるメッセージも発せられることはなかった。そりゃ、そうだ。「会話の時期は終わった。圧力と制裁で北朝鮮に核・ミサイル開発を断念させるまで、日本は100%米国とともにある」と言い張ってきた手前、トランプ大統領が話し合い解決に一歩踏み出すことは想定外のことだったのだろう。トランプ大統領が、安倍総理には何の事前相談もせずに(つまりトランプ大統領に恋焦がれている安倍総理を蚊帳の外に締め出して)、勝手に文大統領と電話会談を行い、北朝鮮との対話の可能性に踏み込んだからだ。
 韓国側は会談に際し、「朝鮮半島の非核化」について北朝鮮と何らかの前向きな合意を取り付けたかったようだが(韓国メディアはそうした希望的観測を振りまいていた)、実際には会談で非核化の話は一切出なかったという。そのうえ北朝鮮代表団の首席代表・李祖国平和統一委員長が報道陣にこう断言した。
「我々が保有する水爆や大陸間弾道ミサイルは、徹頭徹尾アメリカを狙ったもので、同族(韓国)や中露に向けたものではない」と。
 この発言には、日本の名前がない。日本なんかとるに足らずとみているのか、それともアメリカと戦争になった時には、これまでも北朝鮮首脳が公言してきたように「真っ先に日本を火の海にする」つもりだからなのか。
 私はこれまでも何度もブログで書いてきたように、安倍総理の安全保障政策は、かえって日本のリスクを高めているのではないかという疑問を呈してきた。
「集団的自衛権行使容認」を決めた安保法制にしろ、日米同盟の深化にしろ、安倍総理にとっては抑止力の強化と安全保障を高めるための政策だったはずだ。が、その結果、日本はトランプ大統領から「防衛装備品」を押し付けられ、北朝鮮からは敵視され、さらに「非核三原則の見直し」発言まで公然と飛び出している。日本の安全保障や抑止力の面から考えると、かえってリスクが増大しただけではないのか。
 日本が抑止力を高めるために自衛隊の軍事力を強化すれば、それは直ちに日本の隣国や周辺国への脅威になる。北朝鮮の核が、日本にとって脅威だというなら、北朝鮮がアメリカの核を脅威に感じて核・ミサイル開発に狂奔するのは、安倍総理の「抑止力の論理」とまったく同じである。安倍総理が自衛隊の軍事力強化の理由をいくら「北の脅威に対抗するため」と声を張り上げても、日本のかつての過ちを忘れていないアジア諸国の人たちにとっては、やはり「脅威」に映るだろう。
 そもそも世界の強国による軍拡競争は、常に【仮想敵の軍事的脅威に対する抑止力】として行われてきた。あれだけ悲惨な戦争を繰り返してきた日本は、「抑止力幻想」からいち早く脱皮することが大切なのではないか。
 実際世界は二度の世界大戦の経験から、戦争による国際紛争の解決という手段を根絶するために国連憲章を作り、国連憲章に基づいた国際連合を作った。国連憲章は日本の憲法の原型をなすもので、だから「平和憲法」として国民に広く定着してきた。
 国際紛争を解決する手段としての戦争(軍事力の行使)は、先の大戦以降ほぼなくなった。例外はイ・イ戦争と湾岸戦争の二つだけだが、ともにその遠因はヨーロッパ列強による中東の分割支配がもたらした後遺症といえなくもない。
 基本的に戦争の目的の大半は、経済的権益の拡大もしくは維持にある。過去の二つの大戦も、そうだった。が、日本を含め、そうした目的をあからさまに公にするわけにはいかず、それなりに「大義名分」のオブラートで戦争の真の目的を包み隠してはきたが(日本の場合、「大東亜共栄圏」とか「八紘一宇」といった「理想」を掲げた)、真の目的は経済的権益の拡大や維持にあった。
 だから戦後の世界は国連の下で国際紛争の平和的解決の道しるべを構築すると同時に、GATTをはじめ自由貿易の旗を掲げることで経済的権益の衝突を防ぐ努力を重ねてきた。その推進役を担ってきたのが、戦後のアメリカでもあったが、その結果アメリカは財政赤字と貿易赤字という双子の赤字を抱えるようになった。トランプ大統領の保護主義政策が米国民の心をとらえたのも、そうした一面が大きい。
 確かに外交力が軍事力に依存する要素は大きいが、日本は戦後、軍事力に頼らずに外交力を高める努力を重ねてきた。そうした歴代政権が重ねてきた努力を灰燼に帰す様な事態に、いま日本は突入しつつある。憲法論議が始まろうとしている今、私たち日本人には何が問われているのかを、今一度原点に立ち返って考えてみようではないか。メディアの果たす役割が問われている。

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