小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

『時事放談』で丹羽宇一郎氏は中谷元防衛相を追い詰めたが、なぜかメディアの責任は問わなかった。

2017-09-10 09:11:49 | Weblog
 今朝(10日)の『時事放談』(TBS)で、中谷元防衛相と元中国大使であり、民間人としては伊藤忠商事の社長・会長を歴任した論客・丹羽宇一郎氏が激論を交わした。激論のテーマは北朝鮮の核・ミサイル問題にどう立ち向かうかだ。
 『時事放談』は二人の政治家(元を含む)の対談で時事問題を複眼視点で掘り下げるのがウリの番組だが、二人の主張が真っ向から激突することはほとんどない。が、今日の対談は価値観の相違から中谷氏と丹羽氏が真っ向から激突して、司会の御厨氏も落としどころを作れることなく終わった。
 中谷氏の主張は相変わらず安倍政権の「3本の矢」である。つまり①脅威論、②圧力・制裁の強化、③抑止力の強化(核持ち込みを含む)、だった。私のブログの読者も、散々聞き飽きただろうし、新味は全くなかった。
 これに対して丹羽氏の主張は、私のブログ記事をパクったのではないかと思ったほど私の主張に似ていた。私が6日に投稿したブログ記事のタイトルはこうだった。

北朝鮮とアメリカはどこまで「挑発ごっこ」を続けるのか。「窮鼠猫を噛む」までやるつもりなのか。

 私のブログの読者で、『時事放談』を視た人は、「あっ、小林と同じことを言ってるな」と思われたに違いない。実際、私もびっくりしたのは、丹羽氏が日本の対米開戦に踏み切った「ハル・ノート」を引き合いに出して、あまり北朝鮮を追い詰めすぎると「窮鼠猫を噛む」行為に出かねない、と日本政府の対北朝鮮政策に警鐘を鳴らしたことだった。まさに、私がブログで書いたことと同じだったからだ。
 丹羽氏の主張で、私の主張になかった要素は一つもなかったが、私の主張の30%くらいは抜けていた。この量的には30%程度だが、質的には99%と言ってもいいほど、実は重要な要素に丹羽氏は触れなかった。
 それはメディアの役割についてだった。いまNHKを始め朝日、毎日など安倍政権に批判的なメディアまでこぞって「脅威論」に加担していることだ。これがどういう事態を招くか。そのことへの危機感が、丹羽氏には欠けていた。
 私は先のブログで、日本の「(結果的に)宣戦布告なき真珠湾攻撃」で「成功」したことで、メディアがあたかも日本が対米戦争で勝てるかのような妄想を国民にふりまいた「犯罪」に対する反省が、まったく生かされていないことを明らかにした。
 さらに、私がブログ投稿した時点ではまだ兆候段階だったので書かなかったが、7~8日にかけてはっきりしたことがある。それは急激に進んだ円高である。この2日間で円は一気に2円前後高騰した。このことは何を意味するか。
 安倍政権が北朝鮮の核・ミサイルを「脅威だ、脅威だ」といくら騒いでも、国際社会は、日本は安全地帯にいると思っているということが明らかになったのだ。
 国際社会が懸念したのは、北朝鮮の暴発より、アメリカ・トランプ大統領の暴発のほうだった。だから投機筋はドルを売り、米朝対立が激化しても安全地帯にあるとみなした日本の通貨である円を買ったのだ。今日午前8時過ぎでも為替相場は107円台という高値水準を推移している。
 しかし、日本のメディアがこのまま「北朝鮮の脅威」を政府と一体化して報道し続けると、中国筋が懸念しているように、次の北朝鮮のミサイルは東京上空を通過する計画を実行に移しかねない。
 再度言っておくが、北朝鮮に対して「石油禁輸」といった最終的制裁手段をとると(この最後の一戦は中露が絶対阻止すると思うが)、「窮鼠」と化した北朝鮮が本当に暴発して「猫を噛む」行為に出かねない。安倍外交は、そういうきわどい綱渡りをいま行っている。そうした綱渡りに、いまメディアが加担していることが、日本にとって最大の危機である。とりわけ今日のNHK午前7時のニュースで、「北朝鮮への圧力・制裁」一辺倒の報道をしたのはどういうことか。日本の公共放送が、北朝鮮を刺激するような放送を繰り返せば繰り返すほど、本当に北朝鮮の核・ミサイルが日本にとって脅威になりかねない。
 丹羽氏は今日の対談でしばしば中谷氏を窮地に追い込んだが、メディアが今安倍政権のためにはたしている役割の危険性に言及できなかったのは残念だった。
 さらに加えれば、日本が北朝鮮の核・ミサイルに対する「脅威」を口実に抑止力、とりわけ「核の持ち込み容認」議論など始めれば、たちまち周辺国は「日本の抑止力」を脅威に感じて、日本に対する抑止力強化のための行動に出かねない。北朝鮮が、アメリカの敵視政策を脅威に感じて抑止力として核・ミサイル開発に狂奔したことを忘れてはならない。歴史は繰り返すらしい。