徐仙日乗

日記、随筆

徐仙日乗 読書 JR上野駅公園口 柳美里

2021-01-06 10:11:00 | 日記

徐仙日乗 読書 JR上野駅公園口  柳美里 河出文庫

読了 読書メーターと重複


柳美里さんは初読み。若い頃東京キッドブラザースを皮切りに演劇活動、その後小説家に転身、色々なスキャンダルも伝えられた人。読了後Wikiをサッと撫でる。読んでみようって気になったのは、なんといっても題名で、これは小生の氏素性に深く関わっている。今はそれ程では無いのかもしれないが、東北生まれの上京者にとって「上野」は常に括弧付きの存在で、東京の自分と田舎の自分が入れ替わる場所だった。そして年末の急行には「出稼ぎ」の人達が乗っていたものだ。少し上の世代は集団就職って恐ろしい流れがあって、どちらも柳の言う「居場所のない人達」を大量に生み出していったことだろう。他の地方も似たような物だったのかも知れないが、上京と上野って物語は結構深く沈殿していたのではないか。ここら辺を書き出せばキリがないが、本作に垂れ込めたモノトーンと閉塞感と諦観、それらは繰り返される騒音に象徴されていて、堪らない気持ちになった。時折り描かれる花と季節の描写に色彩が現れる。硬い塊を無理矢理咀嚼した。これも作品の力か。


徐仙日乗 読書 喫茶店の時代 林哲夫

2020-09-27 09:45:00 | 日記

喫茶店の時代  林哲夫 ちくま文庫

読了 読書メーターと重複


この著者は初読み。喫茶、珈琲の受容史から始まり、サロンとしての喫茶店の隆盛、変貌を概括している。取り止めがないとも言えるが、小生が知りたかったカフェとかミルクホールについての証言が興味深い。珈琲の受容とか文芸、芸術活動の溜まり場、「喫茶店の歴史」は創造活動の歴史でもあったのだ。名を成した人、成せなかった幾多の人々の「無為な時間」を喫茶店は提供してきたのであろう。この本の凄い所は纏まった資料などあろう筈のない分野にも関わらず引用元を律儀に上げてある点で注の量が半端じゃない。その一覧で著者に好意を持った位である。最後の章で小生の知る喫茶店文化が出てくる。ノーパン喫茶も有り、小生は一度だけ行った事がある。ジャズ喫茶、名曲喫茶の敷居の高さを思い出した。良書です。


徐仙日乗 読書 帰ってきたヒトラー ティムール ヴェルメシュ

2020-06-29 19:04:00 | 日記

徐仙日乗 読書 帰ってきたヒトラー 下      

 河出文庫 ティムール・ヴェルメシュ

読了 読書メーターと重複


楽しい!大変面白く、興味深い内容。ドイツに滞在した事がある人ならば、もっと楽しめる筈。「某が実は生きていた!」って話は別に目新しいアイデアでは無いのだが「ヒトラーが現代のドイツに現れてしまった」となると流石に禁忌が多すぎることは十分予測出来るし、結末を心配したりもして、結果ワクワクして読み進めることになる。ヒトラーとかナチスに関しては常識程度なのだが、作者はヒトラーを想像や解釈や評価をせずに、膨大な資料からの引用だけで作り上げていると思う。結果として総統は紳士的で信念を持ち、大衆の扱いに長けた「魅力的」な男として活躍することになる。総統の見た現代ドイツは現代日本とも共通する事が当然あって、便利さと基弱さを改めて思い知らされる。困った、総統が立派な人になってしまうではないか。後書きと注釈で中和される。読後には考える材料が沢山。この手法は現代を相対化する上でとても有効なのではないか、だとするとやはり良書。毒素も含めて。圧巻は矢張り演説シーンで比べちゃいけないけど、我が国の人と比べてしまう。静まり返った聴衆と第一声、コレが凡人には出来ない。


徐仙日乗 読書 黒蜥蜴 江戸川乱歩

2020-06-02 17:45:00 | 日記

徐仙日乗 読書 黒蜥蜴 江戸川乱歩・三島由紀夫


思い出の演劇作品シリーズ。幼い頃・ボチボチ乱歩を読み出していた頃、母親がテレビを指差して「ヨッちゃん、この人本当は男なんだよ」と教えてくれた。乱歩繋がりで声を掛けたのだろう。NHKの劇場中継、暗い画面に女装した丸山明宏と虐められている男の恐ろしい会話が繰り広げられていた。その周りを徘徊する二人の侏儒!演劇の原体験としては余りにも強烈、怖かった。その後芝居を志し入った劇団の主宰者は奇しくもテレビで観た芝居の演出者であった。更に幸運な事に程なくして三島版「黒蜥蜴」の製作現場に立ち会う機会を得た。確か初めてギャラを貰った仕事だったと思う。そのお金でストップウォッチを買った。但し黒蜥蜴は小川真由美さん。その後美輪明宏版を客で観劇。大ファンにして製作にも関われた。幸運な出会いだったと思っている。小説を読むと三島流の劇化テクニック、演劇観を知ることが出来る。


徐仙日乗 読書 月別まとめ

2020-06-02 17:42:00 | 日記
2020年6月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:892ページ
ナイス数:381ナイス

https://bookmeter.com/users/111107/summary/monthly
■帰ってきたヒトラー 下 (河出文庫)
楽しい!大変面白く、興味深い内容。ドイツに滞在した事がある人ならば、もっと楽しめる筈。「某が実は生きていた!」って話は別に目新しいアイデアでは無いのだが「ヒトラーが現代のドイツに現れてしまった」となると流石に禁忌が多すぎることは十分予測出来るし、結末を心配したりもして、結果ワクワクして読み進めることになる。ヒトラーとかナチスに関しては常識程度なのだが、作者はヒトラーを想像や解釈や評価をせずに、膨大な資料からの引用だけで作り上げていると思う。続く
読了日:06月29日 著者:ティムール・ヴェルメシュ